枕が変わると眠れない理由がわかった

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「枕が変わると眠れない」という経験をする人は多い。それは、脳の半分が睡眠中も活動をしているからという研究を、米ブラウン大学の佐々木由香准教授らのチームがまとめ、米科学誌「カレント・バイオロジー」(電子版)の2016年4月23日に発表した。

慣れない場所で寝ると周囲の状況を警戒し、脳が無意識のうちに物音などに反応するため、ぐっすり眠れなくなるという。

渡り鳥は飛びながら片目をつむり眠っている!

研究チームは、若い健康な男女35人に研究所の宿泊施設に2度にわたり泊まってもらった。全員、施設に泊まるのは初めてだった。そして、睡眠中の脳波や脳活動で生じる微小な磁場の変化などを測定した。

すると、初めての宿泊では、ノンレム状態と呼ばれる深い眠りの時に、左脳の複数の部位が活発に活動した。この部位は、仕事に集中している最中にふと物音に気づく時などに働き、無意識のうちの周囲の状況の変化に反応する機能を持つ箇所だ。また、睡眠中に左右の耳の近くで異音を聞かせると、左脳に音の情報が直接伝わる右耳から聞かせた時に目覚める回数が多かった。

1週間後、再び施設に宿泊してもらうと、初回と違って睡眠中の左右の脳の活動に大きな差はみられなかった。施設の環境に慣れたからとみられる。

動物の睡眠はさまざまだ。ナマケモノやコアラは1日に約20時間たっぷり眠るが、野生のシマウマやシカ、キリンなどはウトウトと3時間程度しか眠らない。熟睡すると肉食動物に襲われる危険があるし、草を消化するために長時間口の中で反芻しなければならないからだ。

睡眠中も脳の半分が活動する現象は、イルカやクジラ、渡り鳥にみられる。イルカやクジラは水面に顔を出し呼吸する必要があるため、睡眠中も片目を開け、脳の半分を活動させている。その間、片方の目を閉じ、脳の半分を休ませる。それを交互に繰り返すのだ。渡り鳥も長距離を飛びながら、片目を閉じ、脳の半分を休ませる。こうした眠り方を「半球睡眠」という。完全に寝ると、イルカは溺れ、渡り鳥は墜落するため、半分眠り、半分起きているわけだ。

今回の研究で、人間も新しい環境では脳の半分が「起きている」ことがわかった。佐々木准教授は論文の中で「人間も慣れない環境では脳の半分が覚せい状態になり、警戒態勢を敷いていることがわかりました。脳は適応性が高いので、寝つきの悪い人に左脳の働きを抑え、慣れない場所でもよく眠ることができる方法を開発したい」とコメントしている。