「第2のスティーブ・ジョブズ」といわれた若き医療スタートアップ創業者、エリザベス・ホームズ。あまりにも注目されあまりにも投資を集めた彼女について報じられる醜聞は、果たしてどこまでが事実なのか。

「セラノスの醜聞(1)──世界最年少の女性ビリオネアについて知っておくべきこと」の写真・リンク付きの記事はこちら

Theranos(セラノス)の設立当初、その社名はReal-Time Cures(リアルタイム・キュア)という名だった。陳腐だろうか? たしかに。だがここまでたどり着いたエリザベス・ホームズは若干19歳のスタンフォード大中退者で、個人用医薬品業界をひっくり返そうという熱意にあふれていた。

以来、社名の変更だけでなく、セラノスは長い道のりを経てきた。何百万ドルもの売り上げを達成し、数多くの巨大なコンシューマーヘルス企業と契約を結び、州の認定を受け、世界で最も高く評価されるいくつかの研究業績によってその知名度を伸ばしてきた。

セラノスはまた激しい攻撃の対象ともなってきた。『ウォール・ストリート・ジャーナル』は独自の調査からこの企業の信頼性、事業計画、そして技術レヴェルの低さを非難している。セラノスは入り組んだ秘密の多い企業で、スキャンダルに巻き込まれるのも、業界の不文律を破ったり科学的活動の本質的な指針に違反しているように見えるからだ。そのサーガは人を惹きつけ、また当惑させる。まずはその始まりから語ろう。

その黎明期

とある“伝説”によれば、ホームズがセラノスを創業したのは「注射針が怖かったから」だという。

これは事実を極端に単純化している。スタンフォードでの新入生時代、ホームズは化学工学を専門とする教授、チャニング・ロバートソンのラボでポスドクたちと一緒に働いていた。

夏の間、彼女はインターンとして、血液や粘液中のわずかな痕跡からSARSウイルスを検出する方法を探すシンガポールのラボにいた。すっかり触発されて帰ってきたホームズは、パッチによって体内に薬を送り込む方法について特許を取るため、研究に日々を費やした。やがて取得した特許をロバートソンに見せ、大学を中退して会社を興すつもりだと伝え、理事会のメンバーになってくれないかと頼んだ。教授は引き受けた。

スタンフォードを去ったあと、事態は目まぐるしく進行した。家族の友人、そしてヴェンチャーキャピタリストで大富豪のティム・ドレイパーが最初の100万ドルを融資し、彼女はそれでラボを借りて職員を雇った。以降順調に資本を増やしてゆく。2004年には690万ドル。2005年、1,600万ドル。2006年、2,850万ドル。2014年までに彼女は4億ドルを稼いだ。投資家たちは報告書のなかでこの会社の価値を90億ドルと見積もった。

RELATED

その過程で、ホームズは会社のメインプロジェクトを医薬品パッチから指先採血による検査技術の研究へと移した。もともとこの技術は製薬会社に売りこむ予定だった。開発中の薬の服用量と効果を測定するため、患者の血液を化学的に検査する安くて手早い方法をセラノスは供給するはずだったのだ。

しかし、マスコミのメインストリームで話題になり始めるころには、セラノスはコンシューマーヘルスに関するビジネスを始めていた。

第2のスティーブ・ジョブズ

とはいえ、それも当然だろう。ホームズが目指すのは、「ヘルスケア革命」だ。腕からの採血は痛い。針が刺さる。不快だ。高価だ。

そこへセラノスが対抗策を約束した。たった1滴の血液から70ものマーカーを判別できる、痛くない採血。結果は数時間で携帯に届く。さらに1回ごとの検査にかかる費用もメディケアの弁済上限の半分以下ですみ、価格表はウェブサイトで簡単にチェックできる。

2014年、セラノスはフォーチュン誌の表紙を飾り、一躍メインストリームへと踊り出した。その記事はシリコンヴァレーの来るべきレジェンドとしてホームズを盛り立てていた。「わたしが見ていた彼女の目は、スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツと同じ目だったのかもしれないと、そう思ったのです」。記事には、スタンフォード時代の指導教官ロバートソンのそんな発言が引用されている。

それから数カ月、さらに季節がめぐる間に、ホームズとセラノスはアメリカのメディアをめぐる大々的なツアーを行った。『ヴァニティ・フェア』に『ブルームバーグ』、『フォーブス』、『inc.』、さらに『ファスト・カンパニー』、『CNBC』、『CNN』、『エコノミスト』、『ニューヨーカー』、『タイム』、『グラムール』、そして『WIRED』と続く。

[「セラノスの醜聞(2)──世界最年少の女性ビリオネアについて知っておくべきこと」に続く]