「思いついたらちょっと筋トレ」を一日数回繰り返せばパワーアップができる!?
◆旧ソ連特殊部隊トレーニング教官が教える鍛錬法

 普通の人は仕事の合間はコーヒー休憩、となるだろう。しかし、旧ソ連では「仕事の合間にトレーニング」というトレーニング法があったという。

 その名も「GTG法」。ロシアの伝統的トレーニング器具「ケトルベル」の日本人初のインストラクター、松下タイケイ氏はこう語る。

「『Grease the Groove』とは直訳で『溝を埋める』という意味になりますが、1日通してトレーニングすることを言います。提唱者はケトルベルをアメリカへ広めたパベル・ツァツーリンで、かつてソ連の特殊部隊の教官だった人物です。彼が『The Naked Warrior』という名著で紹介しています」

 特殊部隊の元教官と聞くと、なにやらハードな鍛錬法のようだが、松下氏曰く「簡単に説明すると日常生活に無理なくトレーニングメニューを組むことです」なんだとか。

「代表的なトレーニング種目は懸垂ですが、次の例がその全容を表しています。

 自宅の地下室へ行く途中に懸垂台があり、その前を通過する都度1セット最大5回懸垂を必ず行います。1セットは5回と少ないですが、1日を通して何度も懸垂台の前を通過するので、1日あたりの合計は25回〜100回になります。これを継続したところ、それまでを上回る連続回数記録を更新したそうです。

 仕事のちょっとした合間に1セット、休憩時に1セット。実はこの考えは旧ソ連で一般的なトレーニング方法だったと言われています。西欧でこれが知れた時「我々が仕事の合間にコーヒー飲んている時に敵は休憩にトレーニングやっている」と言われたそうです」

◆GTG法に向いているトレーニング

 このGTG法、向いている種目とそうでない種目がある。

「反動を使わないトレーニング種目であればGTGを使うことができ、効果もあります。通常の筋力トレーニングを2か月間、週3回〜5回行った後に、GTGを2か月取り入れると効果的です。基本ルールは次の通りです」

●1日通して1セット1回〜5回行う。
●体が完全に休まるまで次のセットを行わない。目安としては10分以上の間隔を置く。
●メイン種目を2つに絞る。

「重要なのは疲労に追い込まないことと、できるだけ頻繁に行うことです。通常頻繁に行うと疲労が発生しますが、休憩間隔を大幅に置くことでこれら相反する要素を両立させましょう」

 どうだろう? ケトルベルが手元になくても、自重のスクワットや懸垂、腕立てでもいいかもしれない。空いてる時間に1〜5回、疲れない程度に収めて、次のトレーニングも疲労回復してから。これならジムにまとまって通う時間がない人でもできそうではないか?

「私はケトルベルのミリタリープレスにGTGトレーニングを適用した経験があります。トレーニング器具が揃った場所に一日居たためできたことですが、参考までにその時の記録をお見せしましょう。重量と回数、そして所々片手にケトルベル2つ持って挙げています。回数と重量に無理がないよう、疲労度に応じて調整しています」

◆「筋肉増量」ではなく「力=スキル」の向上がカギ

「このトレーニング手法は筋肉増量に向いていません。そして、回数繰り返すのがポイントでもありません。ただ、1回の動きを洗練して『練習』していく、つまり動きのスキルを磨いていくのです。どこで力を使いどのタイミングで脱力するかなどを体で習得します。繰り返しますが、疲労に追い込むとこの手法は必ず失敗します。回数を1回〜5回に抑えてください」

 松下氏の経験上、GTGが最も効果的だったのがプルアップ、つまり順手懸垂だったという。

「当時の課題が24キロケトルベルをつま先に引っ掛けて1回プルアップを行う、しかしそれまで私は自重プルアップが1回しかできなかったのです。これを半年かけて達成しました。当時のGTGトレーニング記録の例は次のような感じになります。疲労度に応じてつま先にケトルベルを引っ掛けたプルアップと通常のプルアップを行いました。この例は24キロプルアップ試験1ヶ月前のトレーニングですが、開始当初はゴムバンドや踏み台を利用した補助プルアップをしていました」

◆なぜGTG?誰にGTG?

 1日通して行うのがGTGだが、懸垂できる器具や設備がない、仕事場で懸垂できないといった不便な点がある人もいるだろう。

「であれば在宅中に朝10分置きに数セット、夕方〜夜に10分置きに数セットやりましょう。自宅の懸垂台前を通過したら1セット、タブレットのアラームを幾つか不定期に設定して鳴ったら1セット、犬が吠えたら1セット等遊び要素を入れても良いと思います。ケトルベルや懸垂台がなくても、片手腕立て伏せなど、自重でできる種目は多々あります。環境や条件に合わせて選んでください」

 さまざまな場所でケトルベルを教え、格闘技ジムのインストラクターもしている松下氏だが、フィットネスジムのメンバーになったことがないという。

「だからこそ、トレーニングを自宅での日常生活に取り入れることができたのです。懸垂台とケトルベル、そして1畳分の床があれば無限の可能性が開けます。『ジムに通えない』『忙しいからトレーニングできない』ではなく、できること、できる時間帯をまず探してください」

◆【おまけ】プルアップの手法

 最後に、おまけとして松下氏がGTG法で行った懸垂の方法をレクチャーしてもらおう。

「腕を完全脱力するところから開始です。バーをつかんだまま肘を前方へ旋回することで腕と広背筋が接合され、本来ある力が発揮されます。これが重要です。

 アゴをバーへつけるのではなく、喉仏〜胸がバーに着くまで体を引き上げます。

 手のひらを自分のほうへ向けたチンアップ(チンニング)はあらかじめ両肘が前方向いているため広背筋の動員が発揮されより楽にできます」

⇒【画像】はコチラ http://hbol.jp/?attachment_id=92981

「もしプルアップやチンアップが一度もできない場合、足を椅子、踏み台や梯子に乗せて行うジャックナイフプルが良いでしょう」

⇒【画像】はコチラ http://hbol.jp/?attachment_id=93010

「ジャックナイフプルを1セットあたり最大20回ずつ行います。継続するとプルアップの感触を体が覚えるだけでなく必要な筋肉や腱が強化されます」

<構成/HBO取材班>
松下タイケイ●近年、とみに話題になっているトレーニング器具、ケトルベルの日本人初の認定インストラクター。著書に『身体を芯から鍛える! ケトルベル マニュアル』(日貿出版社)