荷物を空から受け取る時代がくるか(写真:アフロ)

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 無人飛行機、ドローンが今、産業界の中で大きな注目を集めている。楽天やアマゾン・ドット・コムもドローンを宅配に活用することに意欲を燃やしているという。

 ドローンはこれまで海外では偵察兵器など軍事利用などで注目され、日本では火炎瓶を搭載したドローンが首相官邸に侵入したり、長野の善光寺では落下事故、盗撮騒ぎなどで物議をかもしてきた。

 さすがの政府も重い腰を上げ昨年9月に航空法を改正、ドローンの飛行空域や高さなどを制限、活用する場合には国土交通省の許可・承認が必要となった。しかしこうした規制は一方で産業用のドローンとっては使用するための指針を与えたことになる。

「結果的には昨年末にドローンの活用について法整備が行われました。まさに日本にとって、今年は産業用ドローンの元年と呼んでもいいのではないでしょうか」

 産業用ドローンの振興に力を入れる一般社団法人「日本UAS産業振興協議会」(JUIDA)の熊田和之事務局長はこう語る。

 民間調査会社によれば、国内の無人飛行機・ヘリコプターの市場規模は2015年には16億円程度だが、2019年には100億円を超え、2020年には186億円になると予測されている。

 セコムでは民間防犯用の「セコムドローン」を開発、昨年12月からサービスを開始、電動バイクで国内トップシェアを持つテラモーターズはドローンを工事現場での測量などに活用している。このほか農家では農薬散布用にヘリよりも安価なドローンを使うところもでてきている。

 楽天は5月9日から千葉県のゴルフ場でドローンを使った物資輸送サービス「そら樂」を開始することを発表した。これは一般消費者向け宅配サービスの第一弾で、「ゴルフ場でプレーヤーが専用アプリを使ってゴルフ用品や軽食、飲み物を注文することができるようになる」(同社広報担当者)と話している。

 われわれ消費者に身近なサービスといえば、すでにアメリカではグーグル社が宅配などを始めているが、楽天も将来的にはこうした配送サービスへの進出に大きな期待を寄せている。

 しかし日本でドローンを使った宅配サービスを展開するのは難しいのではないかといわれている。米国の実情に詳しい事情通は言う。

「米国は国土が広く、郵便物などは庭にある箱などに入れることから、ドローンのような配達方法が有効に活用できる。ところが日本はそうした箱はほとんどなく、直接本人に渡すか、宅配ボックスなどに入れるのが一般的。ドローンを飛ばしても受け取ることができないから、これを普及させるのは非常に難しいのではないでしょうか」

 楽天関係者は、「政府は千葉市を国家戦略特区に指定し、ドローンによる宅配の可能性を検討していることに大きな期待を寄せている」という。

 4月11日には国・千葉市・企業が参加し、イオンモール幕張新都心の屋上から隣接する豊砂公園までワインをかごに入れて運んだ後会場を移動し、地上からベイタウンのマンション屋上へ薬を運ぶ実験をしたという。

 しかしこうした宅配がどこでもできるとは考えにくい。ドローン特区構想を推進する幕張新都心課は、「現在のところは、各家庭にこうした方法でお届けできるというやり方がわかっているわけではなく、検討課題となっています」(同課担当課長)

 ただ、家に荷物を届ける一歩手前までの機能は果たせる可能性はある。すでにコンビニなどではドローンを使った商品の店舗配送などが検討されているという。

「このほか倉庫の在庫管理、畑や田んぼの生育状況を監視する精密農業、災害時の救急物資の搬送、警察、消防、保険会社などによる被災地の調査、これまでヘリなどを使わなければならなかった撮影なども安価に行うことができる。可能性はたくさんあります」(前出・熊田氏)

 熊本地震では災害時の現地調査などに活用されたほか、NTTは切れた電線などをつなぐ災害復旧活動でも活用を検討しているという。

 さて、ドローンはどこまで進化するのか──。その過程ではドローンの空域の整備、事故対策、操作の難しさの解消などの問題点やハードルもクリアしなければならないだろう。熊田氏はいう。

「ドローンにはまだまだ限界があります。代表的なドローンとしてはマルチコプターのようなものがありますが、この飛距離は数キロ程度で飛行時間も10分から15分ほど。しかも、風速10メートル以上の風が出てしまうと飛べなくなってしまう。

 こうした問題を解決するためにはドローンの大型化や安全性の強化も必要となってくる。その一方で、年内にはドローンを操作するために電波が一部開放されることになっています。可能性はどんどん広がっているのです」

●文/松崎隆司(ジャーナリスト)