この無名の天才がビットコイン発明者「サトシ・ナカモト」である証拠(2)

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「Bitcoin」(ビットコイン)を発明したとされる謎の人物は、最新の報道によれば実際にはオーストラリア人起業家だった、ということだ。昨年12月、その名前とその証拠を挙げていた『WIRED』US版の記事を翻訳・掲載する。

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クレイグ・ライトに結びつく最初の手がかりが見つかったのは、昨年の11月中旬だった[原文記事の公開は2015年12月8日(現地時間)]。独立系のセキュリティ研究者であり、ダークウェブのアナリストとしても活動しているグウェン・ブランウェン(仮名)に、ライトと近しい匿名の情報提供者が資料をリークし始めたのだ。ブランウェンはこの資料を『WIRED』に提供してくれたが、そのうちのいくつかは、サトシ・ナカモトとライトの直接的なつながりを示すものだった。

1.まず、ライトによる2008年8月のブログ記事がある。ビットコインのいわゆる白書(サトシ白書)が暗号研究のメーリングリストに投稿された2008年11月よりも以前のものだ。そこで彼は「暗号通貨に関する論文」を発表する計画を述べ、「三式会計処理」を参照している。これはビットコインに近いアイデアを提示した会計用暗号研究者、イアン・グリッグによる2005年の論文のタイトルだ。

2.また、同じブログの2008年11月の記事を見てみよう。ここで彼はブログの読者に向けて、連絡をとる場合はPGP公開鍵を使用してメッセージを暗号化するようにと要請しているが、ここにサトシ・ナカモトに関係すると思われるポイントがある。

PGP鍵とは、ソフトウェアを通じて暗号化されたメッセージを受け取れるようにするための特定の文字列のことだ。保管先のMITサーヴァーのデータベースをチェックしてみると、この公開鍵は〈satoshin@vistomail.com〉というメールアドレスに紐づけられているのがわかる。これはビットコインを紹介する白書を暗号研究メーリングリストに投稿する際にナカモトが使用したアドレス、〈satoshi@vistomail.com〉によく似ている。

3.さらに、すでに削除されている2009年1月10日の記事のアーカイヴには、こんな記述も見られる。「ビットコインのベータ版が明日公開される。分散型だ…うまくいくまで頑張るつもりだ」(投稿日は2009年の1月10日となっており、ビットコインが正式にローンチされた同年1月9日の翌日にあたる。だがライトがオーストラリア東部に住んでいて、この記事が現地時間で9日夜の0時を過ぎた頃に投稿されたのだとすれば、北米の東部標準時で9日午後3時だったローンチよりも前に書かれた可能性がある)。この投稿はのちに、より謎めいた文面に置き換えられた。「いつも驚かされるのだけど、隠れるのにいちばんいいのは、多くの場合広場のど真ん中だってことだ」。同じ年の10月以降いずれかの時点で、これらの投稿はすべて削除された。

クレイグ・ライトのブログのスクリーンショットのひとつは、彼がビットコインのローンチを計画していたことを示している。この投稿はすでに削除されている。

これら3つのブログ記事に加え、わたしたちはリークされたメールのキャッシュ、トランスクリプト、会計書類も入手した。いずれもクレイグとナカモト2人のつながりをさらに補強するものだ。

弁護士に宛てた2008年6月のメッセージで、ライトは「P2Pで配信される元帳」の構想について書いている。これはブロックチェーンとして知られるビットコイン取引の公開記録を指していると思われるが、公にリリースされるよりもずっと前に言及されている。続いてこのメールでは、ライトが2009年の公開を予定していた「信用された第三者機関を必要としない電子通貨」と呼ばれる論文にも触れられている。

もうひとつのメールは、彼の腹心の友だったコンピューター法医学のアナリスト、デイヴィッド・クレイマンに宛てられたものだ。2009年のビットコインのローンチの直前、共同で携わっていた論文に関する議論が交わされている。そこでライトは勤め先を早期退職し、退職金を「(自分の)アイデアを実現に近づけるため」数百のコンピュータープロセッサにつぎ込むつもりだと書いている。

クレイマンは2013年4月に死亡しているが、メールのなかには彼が生前作成したPDFファイルも含まれていた。そこでは「Tulip Trust」というコードネームのついた110万ビットコインを含む信託資金を、クレイマンが運用することが明記されている。PDFにはPGPによる署名があり、この暗号化技術によるサインをあとで改変するのは不可能だ。

この100万ビットコインの富たるTulip Trustは、ビットコインのブロックチェーン上で長い間観測され、ほとんどがサトシ・ナカモトのものと考えられてきた所有者不明の財産と規模を同じくする。

ナカモトのほかにこれほど多額のビットコインを貯蓄できる者は知られていなかったし、比較的低いマシンパワーでもいわゆる「採掘」ができていた黎明期に、ビットコインをこの規模で産出できたのもナカモトだけだったはずだ。この規模のビットコインの塊は1つしか存在しておらず、厳重に監視されており、ビットコインの全歴史を通じて一度も移動されたことはない。

ライトのビットコイン資産に関するもので、これ以外の証拠はWIREDにはリークされなかった。しかし、企業清算会社McGrathNicolのウェブサイト上にはいまも残っている。ライトが立ち上げたいくつかの企業のうちの1つで、ビットコイン専門の銀行となるはずだったHotwireという会社の破たん処理に関するレポートだ。

同社の設立は2013年の6月で、ビットコインとしてライトが保有していた230万ドルが資金になっている。現在なら600万ドル以上に相当する額だ。法人化の際には、この1社に対するライトの投資額だけで当時存在したビットコインの1.5パーセント以上を占めていた。ビットコイン世界の無名のプレイヤーにしては、不自然なほどに巨額の貯蓄である。

わたしたちが入手した手がかりはまだある。オーストラリア政府との間にもち上がった税制上の問題に関して、2014年の1月に関係者に送られたメールだ。ここでライトは、ニューサウスウェールズの上院議員アーサー・シノディノスの口添えを得るためにナカモトの名を使おうとしていたようだ。

ライトはメールにおいて、「わたしたちの日本の友人に、隠遁先から出てきてもらうべきでしょうか?」と訊ねている。「サトシ・ナカモト」とサインされたシノディノス議員宛てのメールも見つかっている。2014年2月にライト、代理人、税務官の間で行われた会合のトランスクリプトもリークされており、彼が激昂してこう口走ったのが記録されていた。

「わたしは2009年からビットコインを運営していた事実を隠すのに最善を尽くしてきた。だが最終的には世界中に知れ渡ることになるだろうな」

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INFORMATION

『WIRED』VOL.16「お金の未来(と、かわりゆく世界)」

ペイメントを変えうる“未来のカード”・Stratosなどへの取材から見えてきた、お金と支払いと経済の未来とは? 一部では「もはや終わった」とさえいわれる暗号通貨ビットコインを軸に、新たなテクノロジーがマネーそのもの、あるいは世界の経済に対してもたらす可能性を追求する。そのほか、ロンドンのスタートアップ/フィンテックシーンを訪ねた「英国式イノヴェイションの起こし方」特集も必見の内容。