行き詰まってしまったら、大胆に悩む環境を変えることで思いもよらぬアイデアが出る場合があるという
◆空間心理カウンセラー・伊藤勇司の「成功するビジネス×片づけ術」第2回

 こんにちは。空間心理カウンセラーの伊藤です。

 前回、デスクの上を無にして、集中力が上がった投資家のケースをご紹介していきました。今回はなぜ、そのようなことが起こるのかを少し掘り下げて解説していきます。

 少しおさらいをすると、デスク上に積み上げられていたものを、単純にデスク下に移動させただけで集中力が上がり、そこから派生して成果も生まれたのが前回の内容でした。このように直接的に自分にアプローチをするのではなく、環境に働きかけることによって間接的に自分をコントロールする手法を、心理学では環境改善と呼んでいます。

 人間は環境動物とも言われていて、自分が置かれた環境に左右されやすい性質があります。以前、狼に育てられた女の子が発見されたことが話題となりましたが、人間社会に戻って生活するように保護すると、環境に馴染むことができずに、ほどなくして死を迎えてしまったという実話があります。狼に育てられて自然の中で成長した女の子は、見た目は人間でも、中身は狼になっていたために人間社会の環境に馴染めなかったのです。

 このように『環境が人を創る』と言っても過言ではなく、日常生活の中で気づかないうちに、人は環境の影響を大きく受けています。 だからこそですが、自分を変えることを考えるよりも、自分の身の回りの環境を変えることに意識を向けた方が、結果的に自分が変わるという現象が起こっていくのです。

◆悩む場所を変えただけで、問題が解決した経営者の事例

 今日は前回の例も踏まえながら、さらに単純に環境を変えただけで、悩みが解決されていった経営者の方の例をご紹介していきます。

 以前、ある経営者の方とカフェで雑談をしていたときのこと。その方は新規事業について行き詰まっているとおっしゃっていました。社内会議を何度か繰り返しても、なかなかパッとする提案が生まれない。そこで彼は、私がメルマガやブログを毎日書いていることを知っていたので、どうやったらネタが途切れずにアイデアが出続けるのかを質問してきました。

 ちなみに私は約7年半メルマガやブログを書き続けていますが、ネタに一度も困ったことがありません。むしろ現在は、書きたいことは沢山あるけど追いついていないほどです。次々にアイデアが湧き上がってくる理由の一つは、環境を意識しているからです。

 例えば、同じ【ビジネスの成功と片づけ術】というテーマで文章を執筆するとしても、新幹線で書く文章と、飛行機の上空で書く文章と、ホテルのラウンジで書く文章と、大自然の中で書く文章とでは、場所によって視点が大きく変わるので、浮かび上がってくる発想がまるで変わってきます。同じことでも、単純に場所を変えて考えるだけで、無限の広がりを見せるのです。

 そこで私は「単純に、会議する場所を変えてみてはいかがですか?」と、ご提案しました。会議室の中であれこれ悩んで答えが出ないなら、会議室から離れてあれこれ考えてみる。私自身、創造的で斬新なアイデアが欲しいなと思ったら、創造的な場所に出かけるようにしています。例えば、遊園地や、レジャー施設など。

 すると、近所にボーリング場があるので、ストレス発散もかねて役員みんなでボーリング大会をして、その後に打ち上げの居酒屋でざっくばらんに会議という名の飲み会をしてみようということになりました。その話をしているだけで、その方は笑顔で楽しそうな表情になっていたのですが、実際にその企画を行ってみたことで、何度悩んでも答えが出なかった新規事業のアイデアが、驚くほど簡単に出てきて、方向性が定まったとご報告いただきました。

 単純に「悩む場所を変えた」だけ。たったそれだけで迷走するのか、発展的になるのかの違いが生まれていくのです。もし行き詰まることがあれば、あなたも「悩む場所」を変えてみてはいかがでしょうか。

<文/伊藤勇司(空間心理カウンセラー)>

【伊藤勇司】
日本メンタルヘルス協会公認心理カウンセラー。引越業に従事していた頃、「部屋と心の相関性」に着目し、1000件以上の現場経験をもとに独自の「空間心理」理論を確立。片づけの悩みを心理的な側面から解決する「空間心理カウンセラー」として2008年に独立。セミナー、講演、セッションをこれまで約7000名に実施。クライアントは主婦から企業経営者、作家などまで幅広い。著書に5万部を突破中の『部屋は自分の心を映す鏡でした。』(日本文芸社)、『あなたはなぜ、片づけられないのか?』(PHP研究所)。