三菱自動車の相川哲郎社長(右)

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 三菱自動車の不正問題に絡み、三菱グループの「天皇」から暴言が飛び出した。この教訓から大人はなにを学び取ればいいのか。大人力コラムニスト・石原壮一郎氏が解説する。

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 三菱自動車が、またやらかしてしまいました。20日、一部の軽自動車の燃費のデータを長年にわたって不正に操作していたことを発表。その後、発表した以外の車種でもやっていたんじゃないかなど、どんどん話が広がっています。この先、三菱自動車が苦境に立たされるのは間違いありません。まさに火の車。

 そんな中、“三菱グループの天皇”と呼ばれた人物から、火に油を注ぐような大胆な発言が飛び出しました。その人は、三菱重工相談役の相川賢太郎氏。てんやわんやの状態にある三菱自動車の社長・相川哲郎氏の父親です。

 我が子のピンチに黙っていられなくなったのか、「週刊新潮」のインタビューで(おそらく三菱自動車を擁護するつもりで)こんなことを言ってしまいました。

「あれはコマーシャルだから。効くのか効かないのか分からないけれど、多少効けばいいというような気持ちが薬屋にあるのと同じ」

「買う方もね、あんなもの(公表燃費)を頼りに買ってるんじゃないわけ」

「実際に乗っとる人はそんなに騒いでないと思うんだけどね」

 本人の思いとは裏腹に、三菱自動車のイメージをますます悪くする効果しかありません。たしかに、クルマを買って実際に走行したときに、カタログに記載されているとおりの燃費性能が出ないことは“常識”ではあります。だからと言って、最初からウソのデータでいいという話にはなりません。何より三菱グループのお偉いさんであり三菱自動車社長の父親としては、典型的な「それは言っちゃいけないこと」だと言えるでしょう。

 しかし、なんせ相手は88歳のおじいさんです。大人としては目くじら立てて非難するより、反面教師として教訓を読み取りたいところ。彼のトホホな暴言は、私たちにこんなことを教えてくれます。

1.「ウソをついた側が開き直ると、ますます相手を怒らせてしまう」

2.「業界内の“本音”は、外に漏らしたり押し付けたりしてはいけない」

3.「自分が偉いと思っている年寄りにしゃべらせるとロクなことはない」

 たとえば出版界でも遠い遠い昔は、雑誌の創刊号に読者のお便りが掲載されている(いつ読んでいつ出したのか?)など、不思議な現象がしばしば見られました。人生相談に寄せられるおあつらえ向けの相談の多くもかつては……おっと、誰か来たようだ。ともあれ、大きな声じゃ言えないことがちょこちょこあります。じゃなくて、ありました。

 もちろん作り手側としては、仮にそこをつつかれても「それは暗黙の了解だろ」と開き直るわけにはいかないし、「たとえつくりだろうが、面白ければそれでいいじゃん」とは口が裂けても言えません。しかし、現場が必死で建前を主張していても、空気を読めない業界の長老が、若い女性記者あたりにおだてられて「そんなものはねえ、チミー」てな調子で、武勇伝を気取って内情を暴露してしまう可能性は大いにあります。

 あえて火中の栗を拾う意味で出版界を例に出しましたが、どの業界にも似たような「秘密」はあるのではないでしょうか。何かの拍子にそれがバレてしまった場合や、つつかれた場合は、くれぐれも今回の相川賢太郎氏の轍を踏まないように気をつけましょう。開き直りたい気持ちをグッと抑えて、本音はあくまで隠します。そして、スキあらば自分の存在価値を示したくて仕方ない年寄りには、けっしてしゃべらせてはいけません。

 妻や彼女に浮気がバレた場合もしかり。「1回だけ」と言っていたのにそうじゃなかったという「データの不正」が明らかになったからといって、「1回だけなんてもったいないこと、するわけなだろ」と開き直ったり、「それが男のサガってもんだ」と本音を漏らしたりしたら、それこそ火にガソリンを注いでしまいます。また、誘惑に負けてどこかで武勇伝を披露してしまうと、めぐりめぐって妻や彼女の耳に入りかねません。

 そんなこんなも含めて、三菱自動車は今後もいろんなニュースを提供してくれるでしょう。いったん注目が集まると、ちょっとしたことで世間を激しく騒がせてしまいます。そういう意味では、現在はどこよりも燃費がいい会社と言えますが、そう評価したところでとくに慰めにはなっていませんね。失礼いたしました。