騒動を報じる動画(ANNnewsCH/Youtube)より

写真拡大

 スノーボードの大麻問題は、組織ぐるみの隠ぺいが疑われている。未成年男子2選手が、昨年のアメリカ遠征中に大麻を吸引、全日本スキー連盟から競技者登録の無期限停止などの処分を受けたが、連盟が事態を把握したのは今年1月のこと。日本アンチ・ドーピング機構などへの報告はなく、これには遠藤利明・五輪担当相が「隠しておこうという意図があったなら、猛省を促したい」と厳しく言い放った。

 連盟は1月に情報を受けて、選手、コーチらに事情聴取。1人が「遠征中のパーティーで、外国人から勧められて吸引した」と認め、もう1人は事情聴取を2度拒否したことから毛髪検査を行って使用と判断。しかし、公にしなかったのは「未成年だったから」と連盟の関係者が明かす。

「これは公式見解ではないものとして聞いてほしいんですが、吸った場所が、娯楽用大麻の吸引が合法となっているコロラド州でのことで、警察に相談したところ海外での使用は刑事処分に問えないとの回答もありました。2年後の平昌五輪で活躍する可能性のある選手だけに、慎重になった部分はあります」

 しかし、そのコロラド州で認められているのは「21歳以上の使用」であり、そもそも大麻は世界アンチ・ドーピング機関が定める禁止薬物で、その吸引は連盟も厳格に禁じている規則違反。刑事処分になるかどうかは、関係先に報告しなかった理由にはならない。

 このあたり、「厳格にやりだしたら他にも摘発しなくちゃいけない選手が出てくるからじゃないのか」という人もいる。

 あるスノーボード選手は「海外遠征で大麻をやっている人はたくさんいて、処分を受けた2人のうちひとりも『なんで俺だけ』と不満を漏らしている」と打ち明ける。

「日本のスノーボーダーで大麻をやったことがある人はいっぱいいますよ。海外に頻繁に行く選手だと、日本ではダメでも海外でやればいいって感じになっていますし、日本では大きな大会前でもなければドーピング検査もないから、時期を見て吸っている人はたくさんいる。そういうのが全部明るみに出ることを、連盟は恐れているんでしょう?」(同選手)

 実際に大麻をやっている選手がいるかどうかはともかく、スノーボードと大麻は文化的に密接だ。スノーボーダーにはレゲエ好きが多く、たとえばソチ五輪の銀メダリスト・平野歩夢もそのひとり。彼が好きなアーティストだとする俳優・窪塚洋介のバンド「卍LINE」やリョー・ザ・スカイウォーカーは大麻賛美発言をしており、レゲエで崇拝される大麻に興味を流れがある。

 1998年の長野五輪でスノーボード初の金メダリストとなったロス・レバグリアティ(カナダ)が競技後の大麻検出でメダルをはく奪(後に処分撤回)されたこともある。競技の発祥の地とされるアメリカ・ロッキー山脈がある西海岸の周辺では、大麻カルチャーが盛んで、高校生の4割が経験者というデータがあるほどで、スノボ文化にはレゲエやアメリカ西海岸との親和性から大麻に入りやすい環境があるわけだ。

 前出の選手は「今、抜き打ちですべてのスノーボード選手に薬物検査をしたら、びっくりするぐらい引っかかる人がいると思う」という。そのあたりを関係者に聞いてみると「実は情報だけなら数名、届いているものがある」と衝撃の話を打ち明けた。

「具体的な証拠に欠ける話なので怪情報みたいに扱っていますが、名前の挙がった選手には内心、やってるんじゃないかって疑いの目で見てしまうのは事実です。それを聞いたコーチも、さりげなく『薬物とかやるなよ』って意識的に声をかけたりしています。今回の件で、大麻を遠ざける選手が増えることを願うばかり」(同関係者)

 もちろんスノーボードは健全に競技に打ち込んでいる者が大半で、レゲエ好き=大麻使用者と決めつけるのは誤りだ。処分された選手のひとりは、レゲエではなく女性アイドルグループの大ファンだという。

「怖いのは選手が五輪に興味を示さなくなることです。今回のようなケースで処分に該当するのは、連盟の管理下で大会出場を目指す選手に限られます。損得でいえば『Winter X Games』などの海外ビッグイベントで活躍した方が、賞金やスポンサー料で稼げる世界なので、『五輪を無視してプロ活動に専念すれば、大麻もやれる』なんて誤解して、はなから海外に行く選手が出てきてもおかしくない」(関係者)

 連盟は「チッ、うっせーな」発言で批判に晒された國母和宏の騒動以降、イメージ回復に努めてきたというが、今回の隠ぺい疑惑では問題の対処には後ろ向きであることが露呈した。スノーボードはソチ五輪ではメダル総数8個中3個を獲得した有望種目である一方、ファッションやカウンターカルチャー的な側面と一体になっており、そうした根源的なところからくる問題が、2選手の処分のみで解決につながるのかは疑問だ。
(文=片岡亮/NEWSIDER Tokyo)