乾貴士インタビュー part.3

 リーガ・エスパニョーラのエイバルに移籍してきた今シーズン、35節を終えた現在、乾は26試合で出場を果たした。そのうち、スタメン出場は18回、アタッカーとして3ゴール3アシストの成績を残している。

 本人にこの結果をどう捉えているのか聞くと「自分としては全然満足していないです。もっと点をとりたいですし、もっとアシストもしたい。もっと試合に出たいです」とストレートかつ貪欲な答えが返ってきた。

 現在エイバルを率いているホセ・ルイス・メンディリバル監督に対して、「今まで見てきたなかでも、本当に一、二位を争う監督」と、乾は全幅の信頼を寄せており、「選手のことをしっかり見てくれる。ひいきも絶対しない。いい監督です」と手放しで称賛する。

 数試合続けて出場できなかった時はさすがに監督と話をしたものの、1試合ベンチを温めたからといって腐ることもなければ、わざわざ話し合うこともない。「監督もコーチもみんなすごくきちんと見てくれていますから」という信頼があるからだ。「練習からきっちり、毎日やっていくしかない」と考え、自分の課題も見えている。

「得点に関わるシーンがまだ少ない。最後のアイデアもまだ(足りない)。自分自身の持っているアイデアをもっと出していければ、チームの助けになると思いますし、そこを監督も評価してくれると思います。まずは自分の得意なプレーを出すことを常に考えています。それを出せない試合はやっぱりだめなんです」

 そう話す乾は、取材中に通りかかるチームメイトに向かって'Vamos!'と陽気に声をかけ、くったくのない笑顔を見せる。そんな笑顔の直後、「必死なんです。毎日が」とその声が真剣さを帯びた。

 乾には、ワールドカップという目標がある。しかし、日本代表の指揮官がハリルホジッチ監督に代わってから、まだ招集の声はかかっていない。乾はその現況を「自分の居場所が、今は代表にはない」と冷静に捉えている。現在の日本代表の前線に「宇佐見(貴史)とか武藤(嘉紀)とか(原口)元気とか、サイドにいい選手がたくさんいる」からだ。

 だからといって、あきらめているわけではない。「代表には行きたいです。そこは常に目指しています」という思いに変わりはない。

 2015年に行なわれたAFCアジアカップ(日本代表はUAEにPK戦で負け準々決勝敗退)で、乾は招集リストに入っていた。その時、共にピッチに立っていた香川真司や岡崎慎司とはプライベートでも仲良くしており、一緒に代表でプレーできれば、気心が知れていることもあって「コミュニケーションはスムーズにとれると思います」と語る。

 しかし、今年3月末に行なわれたワールドカップ・アジア2次予選(3月24日のアフガニスタン戦、3月29日のシリア戦)で、乾は招集メンバーに入らなかった。もちろん、日本代表の行方は気になるが「やっぱり、見ていると悔しさが出てきます。この間の2試合をテレビで見ていても、すごい悔しさがあった」と心中を吐露した。

 特に、岡崎が日本サッカー史上5人目となる代表通算100試合出場を果たしたシリア戦については、「岡ちゃんの100試合目に、自分もピッチにいたかった。そこにいられなかったことが、自分自身、すごく悔しかった」と振り返る。

 その悔しさを胸に、乾はスペインリーグに集中すると決意している。「とにかく、ここで結果を出すしかないと思っています。結果を出していけば、(日本代表に)呼ばれるはず」

 今年3月17日、ハリルホジッチ監督は記者会見で、「点を取れるFWを見つけないといけない。もっと点を取れる選手が望ましい」と日本代表FWに求める条件を説明している。

 乾が目指す方向は、ハリルホジッチ監督の望みと一致している。「アシストもそうですが、得点はもっと目に見える結果。取り続ければいい評価につながると思いますし、いろんな意味でいい方向に変わるんじゃないかと思います」

 現在の代表に「自分の居場所はない」と言いながら、「自分がポジションを奪い取っていけるように、やっていくだけです」と語る乾の口調は力強かった。

 スペインリーグ移籍の夢を叶えた今シーズン、乾はエイバルでさらなる成長を続けている。次は「経験としていろんなチームでやってみたい」とステップアップも視野に入れつつ、日本代表としてワールドカップに出場するという夢に向かって歩みを進める。

 東京から1万400キロも離れたエイバルの風に吹かれ、今日もまた、ひとりの日本人選手がチャンスの訪れる瞬間に備え、汗を流し続けている。

「悔しさがなくなったら、そこで終わりですから」

 そう言い切って、乾は前を向いた。

山本美智子●取材・文 text by Michiko Yamamoto