被害妄想がもたらす弊害とは?

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ありのままの自分を受け容れてもらえない…そんな親子関係から生まれることもある“子どもの被害妄想”。子どもの被害妄想は、将来どんな弊害をもたらすのか? 「こころの相談室 Mental Care Forest」代表を務める心理カウンセラーの森久美子氏に聞いた。

●被害妄想は様々な弊害を引き起こす可能性が…

「子どもの被害妄想は、思春期を境にありとあらゆる弊害を及ぼす可能性を秘めています。思春期は自我の確立に向かう時期でもあり、これには想像以上のエネルギーを要する。健康な心の状態にある子どもにとっても大変な時期なのです。被害妄想の子どもの内面は、不信感や被害者意識が強く、自尊感情も低い。他者との関わりにおいて迎合的であるがために、すでに思春期になる以前に神経を消耗しています。よって、エネルギー不足で思春期を上手く乗り越えることができず、様々な弊害を及ぼす可能性が出てくるというわけです」(森氏 以下同)

不登校や引きこもり、拒食症や過食症、対人恐怖、思春期うつ、心身症、神経性不安症、統合失調症などと診断されるものから、家庭内暴力や非行という形で弊害が表れることも…。それでは、もしも過度な被害妄想が見られたら…親はどう対処するべきなのか?

「被害妄想に過剰反応しないように気をつけてください。そしてまずは、子どもの言い分にしっかりと耳を傾けてあげること。それによって子どもは、安心できます。また、思春期の子どもには、“退行”といって、小さな子どものように甘えることで心の緊張を緩めようとする傾向がよく見られます。例えば、部屋を散らかしたまま掃除をしようとしない、お風呂も入らずに一日中パジャマでいたりする、親にむやみに反抗する…などありますが、これらは一時的な退行によって、心の緊張を緩めていると考えられます。できれば親は、怯えたり口やかましく言い過ぎず、なるべく見守る気持ちで接しましょう」

このような兆候が表れたとき、親がやってはいけないことがあると森氏は語る。

【親がしてはならない5箇条】

・子どもの言うことが例え被害妄想だと思っても、それをおかしいとか間違っていると否定しない

(子どもは自分の感じていること、思っていることを親に聞いてもらうことで安心したいのです)

・子どもがだらしなくしていても、口やかましく言わない

(子どもはそうすることで心の緊張を緩めます)

・子どもに正論を言ったり、励ましたりすることで、今の状態から普通の状態へと戻るように操作しない

(子どもの被害妄想は操作できません。例え被害妄想であっても、そんな自分を丸ごと親に受け容れてもらうことが大切なのです)

・親のストレスを子どもに与えない

(「テストの準備はしたの?」などと余計なプレッシャーを与えるのはご法度。そっと見守りましょう)

・子どもの言いなりにならない

(子どもに必要以上に気を遣ったり、子どもの言いなりになると、かえって子どもは不信感を抱きます。親として、毅然とした態度も大切にしてください)

もしも専門家に相談した場合、どんなメリットが得られるのか?

「子どもの不信感が強いと、専門家のところへ連れていくこと自体が難しくなります。まずはサポートする親御さんのストレスをカウンセリングで軽減されることをおすすめしています。その作業が進むと、子どもとの関わりにおいて何が望ましくなかったかに気づき、今後子どもにどう対応していけばいいのかが見えてくる。親御さんが心の余裕を取り戻せば、子どももそれを感じとって安心し、どんな状態の自分であっても、親が受け容れてくれると感じるようになります」

子どもが「カウンセリングを受けてみたい」という気持ちになったら、その時点ですでに、心の強さを取り戻し始めているそう。まずは、子どもが安らげる家庭環境を整えることが大切。被害妄想に限らず、子どもの様々な症状は、家庭環境が整うことで改善されることが多いようだ。

(取材・文/吉富慶子)