フォーブス記者が見た「裸のドナルド・トランプ」

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いよいよ佳境を迎える2016年、米大統領予備選挙。この展開を予測できた人が、果たしてどれだけいただろうか。暴言や挑発を繰り返しながらも、首位を快走する”不動産王”。選挙活動中のトランプへの独占取材でわかった、彼の真価とは?

いっさい電話をつなぐなーー。地球上で最も引っ張りだこの男が、もう2時間近くも取材に応じている。彼が心底気にするあのテーマについて、物件ごとに子細に検証しているのだ。すなわち、「本誌が伝える彼の資産額がいくらになるのか」である。

アメリカの長者番付「フォーブス400」は1982年に始まった。以来、総計1,538人がリストに名を連ねている。そして、ドナルド・トランプほど純資産の評価額にこだわりを見せた者はいない。特に、現在の評価額は彼にとって重要な意味を持つ。米大統領候補の指名争いに参戦しているからだ。

トランプ自身は少なくとも100億ドルの資産があると主張する。だが、80人以上の情報源に取材をした結果、本誌はその半額以下の45億ドル程度が妥当な数字だと考えている。

「私は大統領選に立っているんだぞ」と、トランプは言う。「君らの評価額は実際の資産額よりずっと下だ。これでは私が立派に見えない。100億ドルの資産があるという方が、40億ドルよりも見栄えする」。「フォーブス400」の入選者にとってはそうかもしれない。しかしトランプ自身も認めるように、有権者にとっては40億ドルと100億ドルの違いなど、ほとんど意味をなさない。

要するに、「”金持ち仲間”からどう見えるか、そして彼自身がそれをどう感じるか」が問題なのだ。純資産額に対する彼の執着の歴史をひもとけば、ビジネスマンとしての、大統領候補者としての、そして人としてのトランプの一端が見えてくる。

初めて「フォーブス400」が発表されると、名前が挙がった富豪たちは国民的論議の的になった。それまで網にかからないようにしていた大金持ちたちは、対抗策を採ろうとした。フロリダの大地主ウィリアム・グレアムは、桁を減らすよう本誌に頼み込んでいる。ある富豪の弁護士は、依頼人をリストから外してくれれば、代わりに別の大金持ちの名前を教えようと持ちかけてきた。

それに対し、当時36歳だったニューヨークの不動産開発業者ドナルド・トランプは、2億ドルを父親のフレッドと折半しているという評価に対し、自分の資産額は5億ドルだと主張した。

彼は成人して以来、借金して手に入れた資産を並べたてることで自分の価値を高めてきた。87年に出版した自伝の中に、彼は大学卒業時の純資産額を「おそらく20万ドルほど」と記している。その後の成功を測る基準として提示したその金額は、トランプが生涯にただ一度だけ自分の資産額を過少申告したものだったはずだ。

その後、彼はその金額に4つ近いゼロを加えるようになる。そして、自分の純資産額を多めに喧伝する技を磨いていった。本誌の編集部には、よく目立つ金色の専用レターヘッドが入った財務文書が、彼からしばしば送られてきたものだ。

「私たちは申告された純資産額をまずは3で割り、そこから精査するようになった」と、初回から15回目までの「フォーブス400」の選定作業を担当したハロルド・セネカーは振り返る。実際、その「まずは3で割る」方式は、80年代を通して有効だった。たとえば本誌が初めて10億ドルの評価額をつけた88年にも、彼はビリオネアの仲間入りに満足せず、実際は37億4,000万ドルだと反発している。

トランプが資産額を過大申告したがるのは、部分的には経営面の事情によるものだ。事実、彼は「資金調達に都合がよかったから」と認めている。他の不動産開発業者からも、同じ主旨の話を聞いてきた。高い評価額の書かれた「フォーブス400」のリストを銀行家のデスクに叩きつけると、より多額のローンを、より低利で借り入れられるという。経済的な成功が「トランプ」というブランドの価値を決めたのだ。