インドネシアのジャワ島やマドゥラ島などに分布する「スンダイボイノシシ」は、ブタの近縁野生種であるSus属に属するイノシシで、英語では「Javan warty pig(直訳:ジャワイボブタ)」と呼ばれています。そのスンダイボイノシシの固有種であるバウェアンスンダイボイノシシの生態を初めて記録した研究が公開され、世界で最も珍しいブタ(イノシシ)として話題になっています。

PLOS ONE: First Ecological Study of the Bawean Warty Pig (Sus blouchi), One of the Rarest Pigs on Earth

http://journals.plos.org/plosone/article?id=info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0151732

Bawean warty pig may be world's rarest pig, with only 230 around | New Scientist

https://www.newscientist.com/article/2083311-bawean-warty-pig-may-be-worlds-rarest-pig-with-only-230-around/

バウェアンスンダイボイノシシは、インドネシアのバウェアン島にのみ生息するスンダイボイノシシの固有亜種です。そのバウェアンスンダイボイノシシの研究を行ったオランダの「VHL University of Applied Sciences」のMark Rademaker博士によると、これまでバウェアンスンダイボイノシシは地元住民の話や捕獲された生体をもとにしたわずかな研究からしか情報がなく、詳しい生態や保護方法などがわからなかたとのこと。そこでRademaker博士は謎に包まれたバウェアンスンダイボイノシシの生態を明かすべく、現地に行ってカメラを使った生態調査を実施しました。



調査は、192キロ平方メートルという広大なバウェアン島の森林保護区の100カ所にも及ぶ場所にカメラを設置して行われました。調査期間は2014年11月4日から2015年1月8日までで、録画時間は691.31日(約1万6567時間45分)におよび、バウェアンスンダイボイノシシが実際に活動している様子を撮影することに成功。以下の地図はバウェアン島の全体図で、「▲」がカメラの設置場所を示しています。



バウェアンスンダイボイノシシの生息数は172〜377頭だと推測され、オスとメスはイボの形状と頭部にある黄色の体毛が異なることが判明。また、オスとメスの生息数はおよそ1:2であることがわかり、これは偶然にもバウェアン島の住民の男性と女性の数の比率と同じだったそうです。

また、バウェアンスンダイボイノシシは地元住民によって管理されている保護区に主に生息し、植物の根を食べていることがわかりました。Rademaker博士は「森林保護区はバウェアンスンダイボイノシシにとってとても重要な生活場所です。島の大きさから考えて、生息数が現在以上に増えたことはないはず。ただし、インドネシアではバウェアンスンダイボイノシシを保護するための法律がなく、バウェアンスンダイボイノシシ国際自然保護連合によって絶滅の危機に瀕している動物として登録されている」と話しています。



絶滅の恐れがあるバウェアンスンダイボイノシシを保護するべく、Rademaker博士はバウェアンスンダイボイノシシの保護プロジェクトを進めている最中。今回の調査は生態の謎を解き明かす一歩に過ぎず、保護プロジェクトを含めた新たなる調査に期待が持たれます。