サッカーの攻撃には大きく分けてふたつのスタイルがある。ひとつはボールを保持しながらパスによって相手の守備陣形を崩しながらゴールを狙う「ポゼッションサッカー」。もうひとつが守備を固めて相手を自陣へと攻めこませておいてから、ボールを奪って一気にゴールを目指す「カウンターサッカー」である。

 この連載で今後の日本代表が目指すべきスタイルにについて考えるにあたり、2回に分けて、あらためてこの基本的なふたつのスタイルの特徴を考察したい。
 
 今回はポゼッションサッカーについて。ご存知のようにポゼッションサッカーは、ボールを保持しながら相手陣へと押し込み、相手陣形を崩してゴールを奪うスタイルだ。

 こうしたスタイルで戦う代表的なチームがバルセロナであり、バルセロナのメンバーを主力に据えるスペイン代表だろう。彼らのようなポゼッションサッカーを実現するには、まずは以下の要素が必要になる。

(1) 狭いスペースで速く正確なパスが出せる技術
(2) パスをもらえる位置に動く戦術眼と判断力
(3) 技術がありスピードもあるセンターバック

 まず(1)についてだが、ボールを受けてパスを出すことはプロサッカー選手にとっては朝飯前のこと。しかし、「バルサのように」となるとプロ選手にとってもハードルは一気に高くなる。

 速いパススピードで、素早くパスをつなぐことをバルセロナの選手は事もなげにやっているため、ともすれば見落としがちであるが、実際はかなり高い技術がなければできないプレーだ。

 相手からプレッシャーを受けている状態で、受け手の足元へと寸分狂わずにパスを出し、ボールを正確に止めてワンタッチ、ツータッチで再び味方へとパスを出す。しかも、受け手が止まっているとは限らない。動いているケースでも、その足元にきっちりとパスを通す高い技術力が必要になる。

 ただし、高い技術力だけでは、ボールを速く動かしてパスを回すことはできない。味方がどこにいて、どう動くのかを把握して、素早くパスを出す「判断力」も求められる。そのために必要なのが(2)の能力である。

 日本では「パスを出したらすぐに動け」と指導するケースが多いが、パスを出した後にいくら動いても、味方のボールホルダーから見て相手選手と重なってパスコースがなかったら動いた意味がない。目的は、味方から再びボールを受けられるようにパスコースを作ること。そのため、「動かない」という選択肢もあることも理解しておいてほしい。

 こうしたパスコースを作る動きは、選手がやみくもに動くものではなく、チームで連動しながらポジションを取っていくのだが、こうした判断がバルセロナの選手は卓越している。ボールを持たない時に、どこにどう動けばパスがもらえるのかを理解しているからこそ、ボールを持っている時に味方がどこにいるかを把握することにつながっている。

 余談にはなるが、世界トップレベルの選手がバルセロナに加入しても、チームにフィットしないケースがあるのは、こうした連動についての習熟に加え、パスコースに入るタイミングやスピードで、味方と合う、合わないという相性もあるからだろう。

 ポゼッションサッカーでは、攻撃時は、フィールドプレイヤーのほとんどが敵陣に入る。そして、押し込んだ状態の狭い局面で速く正確なパスを回しながら、相手DFをボールに食いつかせて守備陣形を崩し、その隙を突いてゴールを狙う。

 反面、こうした攻撃をすると、守備には大きなリスクがある。つまり、自陣の広大なスペースを、GKとセンターライン付近にポジションを取るふたりのセンターバックでケアしなければならない。相手にボールを奪われたら、一気に速攻を受ける危険性があるのだ。

 こうしたリスクをマネジメントするために、(3)で挙げたスピードのあるセンターバックが必要になる。バルセロナではセンターバックに身長174cmのマスケラーノが入ることが多いが、これは相手に押し込まれて守備をすることが少ないため、センターバックには高さよりもスピードを求めているからといえる。

 こうした特徴を持つポゼッションサッカーを、「攻撃的なスタイル」と認識されている方も多いかもしれない。しかし、サッカーは攻撃と守備が表裏一体のスポーツであることを思えば、一概に「攻撃的」と言えない部分もある。

 バルセロナにしても、スペイン代表にしても、北欧やドイツなどヨーロッパのほかの地域に比べ体格的に恵まれていない。そんな彼らが、真っ向からぶつかるフィジカル勝負のサッカーをした場合、勝ち目は薄い。そこで生まれたのが、「ポゼッションを高めることで自分たちが守備をする時間を減らす」という考え方だ。

「敵を自陣ゴールから遠ざけることで、失点を減らす」という発想であり、攻撃は最大の防御ともいえる。捉え方によっては「攻撃をしかけずにボールをキープし続ける」ことで守備をしているともいえる。そのため、「ポゼッションサッカーは守備的」という見方もできる。

 日本代表では、ザッケローニ元監督時代にポゼッションサッカーを標榜した。2014年のW杯ブラジル大会でグループリーグ敗退となり、結果こそ出せなかったが、テクニックに磨きをかけるのが好きな日本人には合っているスタイルかもしれない。

 ただし、強豪国と戦うにはまだまだ技術力が足りないし、スピードのある技術力の高いセンターバックをどう育てるかという問題もある。さらに、ポゼッションサッカーには連動性が不可欠なのだが、これはチーム全員が一緒に練習して多くの試合をこなす長い時間が必要であり、日本代表の海外組が増えている状況下では、連動性を高めるための練習時間を確保できないという制約もある。

 そうした制約を考慮したのか、現在の日本代表を率いるハリルホジッチ監督はザッケローニ元監督時代の方針とは異なる、「縦に速いサッカー」も志向している。次回はその縦に速いサッカーの攻撃のベースになるカウンター、およびショートカウンターについて考察していきたい。

福田正博●解説 analysis by Fukuda Masahiro