発生から約2週間が過ぎ、テレビなどで報道されるニュースも徐々に少なくなってきた熊本地震。しかし、被災地では今も4万人近い人が避難所や車中で生活を送っている。“日常”がことごとく覆されていく被災地での生活では、これまで当たり前にできていたことが不自由になり、ストレスが蓄積されつつある。

たとえば、女性の下着。毎日、当たり前につけていた下着が、被災地ではストレスの原因になることも少なくないという。防災アドバイザーの岡部梨恵子(おかべ・りえこ)に避難所生活における女性の下着について聞いた。

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避難所では、締め付けのないトランクスタイプを履こう

 
──避難所生活での女性ならではの悩みには、どんなものがありますか?

岡部梨恵子さん(以下、岡部):避難所生活を経験した女性からよく聞かれるのは、「ブラやショーツを干すところがない」という悩み。プライバシーが確保できない環境で無造作にレースのついたブラやショーツを干していたら「ここに女がいます」とまわりに知らせるようなものです。

前回でお話ししたように、避難所は人目をはばからずレイプが行われるような“非日常”。極力「女であること」は隠した方が身のためです。

他にも「ブラやショーツの締め付けが気になって眠れない」という悩みも聞かれます。そこでオススメしたいのは、上はユニセックスのTシャツに、下はトランクスタイプの下着というコーディネート。女性らしくないのでどこでも気にせず干せますし、トランクスタイプなら締め付けが気になりません。
 
防犯のためにも、安眠のためにも、避難所にいる間はトランクスタイプのショーツがお勧めです。

 

“備えすぎ”で逃げ遅れないで

──では、Tシャツやトランクスタイプの下着も、今から防災バッグに入れておいた方がいいですね。
 
岡部:それもいいんですが、最近は「これもいい、あれもいい」という情報が多すぎて、どこのご家庭でも防災バッグがやたらと重くなっているようです。そこで私は、いっそのこと、「何も持たずに外に出てください」と呼びかけるようにしています。“持たない避難”もあるべきです。

持ち物は、“命”ひとつ。とりあえず無事に避難所に辿り着ければいいわけですから。余裕があれば、喉を潤すためにペットボトルの水を1本だけ携帯しておきましょう。余震が収まり、いったん家に帰れるようになった時点で、改めて持ち出したいものを移動すればいいと思います。下着類は、急を要するものではありませんから、自宅の玄関など、取り出しやすい場所に一揃い置いておけばいいでしょう。
 

一番危険な場所は“被災後の自宅”

 
岡部:ちなみに避難所は、大規模かつ甚大な震災の場合は、入所規制がかかり、行けばみんな入れるわけではないのです。優先されるのは家が倒壊や焼失した人です。避難所の入口で「どこから来ましたか?」と聞かれ、たとえば自宅が耐震構造の施されたマンションである場合、帰宅を促される可能性は高いです。
 
──自宅に戻れると、ホッとしますよね。

岡部:でも、そこに落とし穴があるんです。被災地でもっとも危険な場所のひとつが、“被災後の家”。空き巣を狙って忍び込んだ泥棒や、女性を待ち受けるレイプ犯がいる可能性があります。被災後に帰宅するときは、明るい時間帯に男性と一緒に行動するようにしましょう。

 

子どものいる部屋は交代で見張りを

──待ち伏せされている可能性があるのですね……怖いです。他に注意すべき点はありますか?

岡部:見落としがちなのが避難所の子どものいる部屋です。避難所では、ひっきりなしに運び込まれる物資の運搬・分類などで大人たちは忙しくしているため、子どもたちだけで遊ばせていることが多いのです。そのスキに狙われて性犯罪に巻き込まれた子どもも少なくありません。昼間でも、大人の見張りを交代でつけるのは必須ですね。

(有山千春)