数年前は健康的な印象だったが...(2009年J-CASTニュース撮影)

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アメリカのゴシップ誌によると、ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーが激やせしているという。確かに、最新の写真をみると、目はくぼみ、手足も心配になるほど細い。身長172センチあるといわれるが、体重は30キロ台になっていると推定しているメディアも多い。

健康志向も行き過ぎると「毒」になる

もともと彼女は、10代の頃から、精神的に不安定で自傷行為などを繰り返してこともあり、拒食症に陥りやすいタイプであることは確かなよう。だが、もうひとつ大きな理由は、彼女の「行き過ぎた健康志向」が健康状態に影響している、と指摘する専門家も多い。健康になろうとして、不健康になるとは、なんだか矛盾しているようにも感じるが、実は、今世界的にもこの行き過ぎた健康志向が問題になっているのだ。

この行き過ぎた健康志向で、世界的に話題になっているのが『オルトレキシア』だ。正確には、Orthorexia Nervosa(オルトレキシア ネルボーザ)。「正しい健康志向神経症」という意味になる。食に関する強迫症の一種で、「これを食べると健康になるから」とそればかりを食べたり、逆に「不健康になるからと食べない」食品を増やしていくのもオルトレキシアの症状のひとつだ。

こう書いても実感がない人が多いかもしれないが、実は、あなた自身、オルトレキシアになっている可能性も高い。例えば、「小麦粉は太るしカラダに悪いから絶対に食べない」、「トランス脂肪酸が怖いから少しでも入っているものは買わない」、「とにかく野菜。毎朝必ずスムージーだけは飲む。体調が悪いときはスムージーで栄養補給」、「カラダにいいから毎食スーパーフードを食べている」......。とあげたらキリがないが、メディアに溢れる健康情報を基本に、食生活を組んでいるという人は、このオルトレキシア傾向が強いと言われている。食品に対して、「絶対に食べる」、「絶対に食べない」と決まったルールを設けている人は、行き過ぎ傾向になっている可能性が高いのだ。

実際にアンジェリーナ・ジョリーも、一時期、菜食主義者になり、菜食以外認めない食事をし、オルトレキシアで命の危機を感じたことがあるとカミングアウトしている。

「○○しなくてはならない」思い込みに注意

健康にいいことをしているのに、なぜ不健康になってしまうのか? 大きく理由は2つあげられる。ひとつは、巷に溢れる健康情報の信憑性だ。健康ブームに伴って、テレビや雑誌、ウェブでは、さまざまな健康情報が蔓延している。中には、信憑性が高い情報もあるが、客観的にみると、栄養の専門家や医療関係者などからは疑問視するメソッドもとても多い。しかも、最近の傾向として、「〇〇は食べてはいけない」と食品制限や食べ方制限をあおるような表現が目立つ。きちんとした知識なく行うと、健康を害する方法も少なくないのだ。

もうひとつは、制限食は栄養が偏りがちになる。スムージーにしても、それだけでは、たんぱく質や脂質が不足がちで、逆に糖質が非常に高くなる。いくら健康にいい食べ物であったとしても、そればかり、それしかという食事は、栄養を偏らせて、逆に不健康になってしまうというわけだ。

さらに、オルトレキシアに陥る人は、健康でいなくていけない、健康的な毎日を送らないといけない、と脅迫意識を持ちやすい。それは食事以外にも、ハードに働いた後でも「運動しなくてはいけない」、寝不足なのに「健康的だから朝活しなくちゃいけない」と、無理な健康志向を呼んでしまう。

アンジェリーナ・ジョリーは、2013年と2015年に、遺伝子検査による診断から乳房切除と卵巣切除手術に踏み切っている。子どもたちのことを考えて、という彼女らしい考え方でもある。が、この手術に関しても、ロシア国立研究大学高等経済学院のエフゲニア・ゴールマン氏は、行きすぎた「病気恐怖」と表現。このニュースを欧米メディアは、 「アンジェリーナ・ジョリー症候群」と命名し、「病気恐怖」の怖さの問題点を伝えている。

卵巣切除から2年。子どもたちのために健康になるはずだった彼女は、その意思とは逆の痩せ細った体になってしまっている。健康情報が溢れる今だからこそ、本当の健康とは何か? 体にいいこととは何か? を考えてみるべきなのかもしれない。(美容・医療系ライター 伊藤学)

(Aging Style)