マグニチュード7.3、最大震度7を観測した熊本地震。現在もなお余震が続き、その合計は900回以上にのぼる。発生当初、連日のように甚大な被害状況が伝えられていた。地震発生から2週間が過ぎ、このところ増えているのが被災地犯罪の報道。“火事場泥棒”という言葉があるように、災害の混乱は犯行グループにとって格好の餌食だ。

そんななか、自身も2011年の東日本大震災で被災した経験から防災を学び、女性目線で防災アドバイザーをしている岡部梨恵子(おかべ・りえこ)さんのブログが話題となっている。アクセスが集中しているのは、「だから 女を捨てろって!」と題された、被災地での性被害に関する記事だ。“女を捨てろ”の真意とは? 女性なら絶対に知っておきたい防災術を聞いた。

レイプを見過ごしてしまう非日常感

岡部梨恵子さん

──実際に被災地ではどのような性犯罪が起きているのでしょうか?

岡部梨恵子さん(以下、岡部):たとえば、1995年の阪神淡路大震災時の話です。小学校の校舎で避難所生活を送っていた人が、階段下で性行為をしている男女を見かけました。普段の生活なら、もうそれだけでおかしなことですが、被災中はみんな自分のことで精一杯、他人のことには構っていられないものです。「性欲は誰でもあるし、仕方がない」と通り過ぎたそうです。

ところが、その人が目撃したのは、実はレイプ現場だったのです。被害者の女性は恐ろしさのあまり声を上げられなかったそうです。

このように、災害発生から時間が経過すると、日常ではあり得ないことが“普通”になってしまうのが、避難所という特殊な空間なのです。

警察の不在から無法地帯に

──なぜそんな大胆に犯行が横行するのでしょうか?

岡部:普段なら警察という存在が“歯止め”となりますが、震災後48時間は警察、自衛隊、消防が人命救助に注力します。そのほかの取り締まりが手薄だとわかると、まずは空き巣や事務所荒らしなどの犯罪が始まります。そこで味をしめてエスカレートしていき、最終的に人前で平気で性犯罪が行われるような雰囲気になるのでしょう。

“ピンクの防災服”は絶対に着てはいけない

──被災地で性犯罪に遭わないために、どうすればいいのでしょう?

岡部:まずは、防災服の“色”に気をつけましょう。私も被災後に慌てて防災服を買ったことがあります。「防災士考案! 女性用」と書いてあったので何も考えずに手に取ったのがピンク色でした。ですが、ピンクの防災服は「私は女です」とまわりに宣言しているようなもの。

もちろん、普段は自分が好きな色を自由に選べばいいと思います。しかし、理性が吹っ飛んだ人間がいる被災地では絶対にピンクを選んではいけません。

女の子には地味な色のニット帽を

岡部:このことを以前にもSNSで発信したことがありました。すると、「被災したときこそ明るい気持ちでいたいから、キレイなピンク色の方がいいのでは?」「暗い色の服を着たら、気持ちも下がってしまいそう」といった声が届きました。でもそれは、安全な“日常”が保障されていてこその話。被災地に“日常”はないこと、“普段の感覚”は通用しないことを、覚えておきましょう。

成人女性だけでなく、子どもにも気を使いましょう。長い髪が隠れるよう女の子にはニット帽をかぶせ、グレーなど地味な色のジャージを着せること。とにかく見た目で「女の子」とわかりにくいよう工夫することが大切です。

【第二回】 避難所から家に戻ったら、暴漢が待ち伏せ 被災地女性を襲う“非日常”の犯罪

(有山千春)