『岸辺露伴は動かない』がついに映像化!


BD/DVD全巻購入特典に、OVA『岸辺露伴は動かない』が決定! 第三部でも承太郎のフィギュアに歓声が上がったが、今回はジョジョ本編からのスピンオフ作品で、映像化のチャンスが巡ってきたことが奇跡だ。グレートですよ!
岸辺露伴は第四部に出てくる天才マンガ家だ。漫画を描くスピードは常人離れし、面白い作品を創るためなら手段を選ばない。要するにスタンドが使える荒木飛呂彦先生ご本人(の代理キャラ)である。
『岸辺露伴は動かない』は、第四部が終了した後に、飛び飛びで発表された話をまとめた短編集だ。露伴先生がイタリアの懺悔室でとんでもない秘密を盗み聞きしたり、シェフの頼みでアワビを密漁しに行って死にかけたり。言ってみれば漫画家が美味しいネタに舌鼓を打つ怪奇版『孤独のグルメ』だ(違うかもしれない)。
コミックスに収録されてる分が5話、未収録分が2話。今のところ、どの話がアニメ化されるか発表されていない。他社も絡んでくるので『岸辺露伴 グッチへ行く』は難しそうだが、特典だけで終わりと言わず、全話OVAで発売していただきたい!「だが断る」と返されそうですが。


第四話は、こんな話


弓と矢で射抜かれて瀕死の重症を負った康一を救うため、危険を承知で虹村邸の奥深くへと踏み込んでいく仗助。闇の中から、仗助に降り注ぐ無数の光! 間一髪で避けた仗助だったが、背後にいた億泰の顔面は穴だらけにされる。兄・形兆のスタンドの正体を教えれば傷を治してやると持ちかけた仗助に対して、億泰は頑として喋ろうとしない。その時、クレイジーダイヤモンドの手が億泰に……!

「何も死ぬこたあねー」から始まった友情


これまでの3話も原作のエッセンスをこってりと詰め込んできたアニメ版だが、今回は最も濃密かもしれない。東方家のご近所にある住宅ながら、屋内は闇に塗り込められ、一歩踏みしめるごとに命がけ。ジョジョシリーズのバトルは「敵スタンドの能力を暴くまで」が前哨戦となるのがお約束だが、原作を何度も読んで展開が分かっていても手に汗握る!
重苦しい空気がのしかかっているのに、前回は殺し合いをしていた仗助と億泰が心通わせる友情ドラマが爽やか。なんのメリットもないのに、手に傷を負ってまで億泰を救けてやり、情報が聞き出せないと分かれば「しょうがねえなーッ!」と治してやる仗助。なんで助けたんだ?と億泰に食い下がられると「何も死ぬこたあねー。さっきはそー思っただけよ」と返す。この主人公、心のイケメン度が高すぎ。
億泰も男気に衝撃を受け、純粋な優しさに触れて心が揺れ動く。頭の悪いヤンキーから悩めるヤンキーへの進化は、世界一のチンピラ声優(前回に続き、大事なことなので二度言いました)高木渉さんあればこそ。
その兄・虹村形兆の演技もいい。原作での頭のいい中ボス貫禄そのままに、ヤンキーらしさを150%増量。うん、億泰と血がつながってるんだからガラが悪くて当然だ。
惜しまれながら数回で退場してしまうキャラだが、『スマイルプリキュア!』でもプリキュアより人気が高い?幹部のウルフルンを好演した志村和幸さんはハマり役だ。康一から矢を引き抜くときの「おまえは一枚のCDを聞き終わったら キチっとケースにしまってから次のCDを聞くだろう?」の名言は、YouTubeやストリーミング配信に慣れた今どきの子供には通じないかも。
そして仗助=小野友樹さんも、ますます一体化してきた。形兆相手にドスを効かせ、命の灯火が消えかかる康一には焦りを滲ませ、億泰には素っ気なくしながら優しさを隠せず、熱いソウルを持ちながら計算高い……なじむ!、実に小野友樹ボイスと仗助はなじむぞ!フハハハハハ!

ソエジマヤスフミ氏の演出力に恐怖のサイン!


フツーの人は「誰がアニメを作っているか」に興味が薄いとは思うが、あえて言わせてほしい。今回はソエジマヤスフミ氏が演出を手がけた回であると。
ソエジマ氏は、第一期からシリーズを通じて「ビジュアルディレクター」を務めているお方だ。その聞き慣れない役職は、コマから構成される漫画を連続性あるアニメにする上で、行間を埋めつつ原作の持ち味を深めるお仕事だ。
ジョジョシリーズは作品の規模が大きいため、監督とは別に全体を見渡して、カットやシーン毎にアイディアを出す役職が設けられたという。第一部だとデイオが石仮面を被る前と人間を辞めた後でガラリと色味さえ変わるスラム街、二部だと柱の男達のシーンがアールデコ風だったり、「原作とは違うが原作通り」という不思議なシーンにソエジマ氏の働きが垣間見える。
たまに自ら各話を演出することもあり、第三部でのポルナレフVS呪いのデーボ戦(第8話)もその一つ。顔を切り取られるホテルマン目線で見た「殺られる」シーンは怖すぎ、ベッドの上でのカメラをぐるぐる回した激しいバトル……アニメで化けた!と評判の回だ。

さて今回の『虹村兄弟 その2』は、閉鎖空間である屋敷の中で、形兆のスタンド「バッド・カンパニー」と仗助のクレイジーダイヤモンドが攻防を繰り広げる。バッド・カンパニーは「スタンドは一人一体」という思い込みの裏をかいた、多くのチビスタンドから成る群体型スタンドだ。歩兵60体、戦車7台、戦闘ヘリ4機で構成され、奴らとのバトルは「家の中での大戦争」というわけだ。
黒塗り無しで「穴だらけになる億泰の顔」がバーンと描かれるのが「今回は本気でやる」という宣戦布告のよう。最初は力が弱そうなチビ(歩兵)だと舐めていた仗助の前に、集団で歩兵スタンドが現れてビビる下りは完全にホラーだ。それでいて、銃弾やミサイルが飛びかう「戦争」が成り立っているスゴみ。漫画では一部の背景が省略されていたが、アニメ版はキチっと周囲も描いている。スケール感が違う仗助とチビ兵士を同じフレーム内に捉えながら、距離にもウソが無いと思わせる行き届きっぷり。
そんな大胆さと繊細さが同居する演出もさることながら、形兆と睨み合って康一の命が消えかかっているとき、仗助が下唇を噛んでるカットがある。これって第四部の終盤に出てくる(どの話かは一応伏せます)仗助の「恐怖のサイン」だ!! 数十話は先の伏線まで織り込んでいるのだから、アニメ版のスタッフはとことん信用できる。
(多根清史)