バーミンガムでの第4戦(ホンダ・インディ・グランプリ・オブ・アラバマ)を終え、インディカー・シリーズは16戦のうちの4分の1を終えた。4戦の内訳はストリートが2戦、ショートオーバルが1戦、常設ロードコースが1戦。超高速スーパースピードウェイでのレースは5月末のビッグイベント=インディ500まで待たねばならないが、今シーズンの勢力図はほぼ見えてきている。チームでは今年が創設50周年の名門チーム・ペンスキー、マシンではシボレーが優位にある。

 予選でのペンスキー軍団の速さは圧倒的だ。開幕戦セントピータースバーグのストリートでトップ4グリッドを独占! 4戦すべてでポールポジションを獲得している。レースでも強く、4戦のうちの3戦で優勝。3レースで2人以上が表彰台に上がり、4人全員がランキングでトップ7入りしている。

 今の4台体制は2年目。インディ500で3勝しているエリオ・カストロネベス(ブラジル)、2014年チャンピオンのウィル・パワー(オーストラリア)、F1でも活躍した元インディカー・チャンピオンで、インディ500は2勝のファン・パブロ・モントーヤ(コロンビア)という強力なラインナップに、去年からシモン・パジェノー(フランス)が加わった。4人全員がチャンピオン候補に数えられている。

 開幕前の予想では、昨年と同様にパワーとモントーヤがタイトル争いの中心になると見られていたが、パワーは開幕戦の予選でポールを獲ったのに体調不良で決勝を走れず。ポイント争いで大きく出遅れた。鬼のいぬ間に......レースでモントーヤが優勝した。

 その開幕戦で2位となったパジェノーは、フェニックスの1マイルオーバルでも2位となり、勝利なしでポイントリーダーに躍り出る。そして第3戦ロングビーチで勝ち、今回の第4戦バーミンガムで連勝を記録した。シーズン開幕からの4レースで2勝、2位2回という驚異的成績を挙げた彼は、ポイント2番手につけるフェニックス優勝者のスコット・ディクソン(ニュージーランド、チップ・ガナッシ・レーシング)に48点の大差をつけている。

 モントーヤはパジェノーと52点差のランキング3位。カストロネベスは同70点差の4位。パワーが1戦を休んでも7位に入ってくるあたりはさすがだが、パジェノーとの間には94点もの開きがある。パジェノーは初タイトルに向けて邁進中というわけだ。

 チーム・ペンスキーにとっての最大のライバルは、チップ・ガナッシ・レーシング。昨シーズン、最終戦の大逆転でモントーヤを破り、4回目のタイトルを獲得したディクソンは、ペンスキーの取りこぼしたフェニックスでキッチリと勝ち、ベテランのチームメイト、トニー・カナーンもしぶとい戦いぶりを続けてランキング5位にいる。

 ただ、ペンスキーの4人全員がチャンピオン候補なのに対して、ガナッシはハッキリ言えばディクソンだけ。しかし、逆にそうであることが、チーム内に不要なフリクションが生まれる心配をなくしている。去年、ペンスキーがタイトルを逃したのは、戦力が分散して、チームメイトがお互いのポイントを奪い合う状況に陥ってしまったからだった。

 ペンスキーとガナッシという2本柱が実力を発揮することで、シボレーはホンダに対して大きな優位に立っている。

 そもそもこの2強の存在で優位にあったシボレーは、昨シーズンに導入されたエアロキットでもリードを手に入れた。彼らは性能の高いエアロキットに磨きをかけ、さらに差を広げて2016年シーズンを迎えたといえる。そして今、シボレーはエンジンでもアドバンテージを築き上げようとしているようだ。

 決勝レースを有利に戦うには、予選で上位につけるのが一番の近道。彼らはそれを実現するために、エンジンをコントロールするプログラムを改善、予選でホンダV6ターボを凌ぐパワーを引き出しているようなのだ。フェニックスのオーバルで予選10番手までを独占したことが示すように、シボレーが空力で優位にあるのは間違いないが、エンジン、それも主に予選モードでの性能でもホンダに差をつけている可能性が高い。今年の予選結果を見渡すと、シボレーはセントピータースバーグのストリートと常設ロードコースのバーミンガムで予選トップ5を独占し、ロングビーチのストリートでも予選トップ6を手にしていた。

 スタート位置が後ろになるホンダ勢は、シボレー勢の分厚い壁を突き抜けないと表彰台に到達できない。それを実現できたのは、4戦で2人だけだ。昨年導入したエアロキットが戦闘力不足で、その遅れを取り戻すべく奮闘を続けているホンダは、インディカーの救済ルールによって2016年用エアロキットの性能を向上させた。あとは各ユーザーがそれをいかに効率良く使い、持てる性能を引き出すかなのだが、ホンダが全力で技術的サポートを行なってはいるものの、シーズン序盤ではまだライバル陣営に追いつくことができていない。

 しかし、差は確実に縮まっている。中でも健闘しているのが、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングと、彼らのドライバーであるグレアム・レイホールだ。強豪チームが4台体制で豊富なデータを武器として戦う中、レイホールはルーキーが時折スポット参戦するだけの、ほぼ1台体制。それでも、27歳の若さながらチームでリーダーシップを発揮するグレアムは、闘志剥き出しの走りでフェニックスとバーミンガムで上位フィニッシュ。その孤軍奮闘ぶり、アグレッシブな走りで急速にファンを増やしている。

 彼らのエンジニアリング・スタッフは、昨シーズンからホンダのエアロキットの特性を一番深く理解し、性能を引き出していた。だからこそ、空力の重要度が高いフェニックスで5位という好成績を残し、バーミンガムではパジェノーとの優勝争いを繰り広げ、一時的にトップに立つ活躍を見せることとなった。結果は2位だったが、4戦を終えてランキングは6位につける。昨シーズン2勝を挙げた彼らは今シーズン、さらなるチーム力アップ、成績アップを目指している。

 エアロキットやエンジンの開発を担当するホンダ陣営のエース、アンドレッティ・オートスポートは開幕戦でこそ2012年チャンピオンのライアン・ハンター-レイが3位で表彰台に上ったが、その後は4台揃って苦戦をしている。チームはシーズン序盤の4戦を終えた後、「エアロキットへの理解度だけでなく、サスペンション・セッティングにも改善の余地がある。休みないハード・ワークで巻き返す」と、苦境からの脱出、そして優勝争いへの復帰を誓っていた。

 インディカー7年目、AJ・フォイト・レーシング4年目、ジャック・ホークスワースをチームメイトに迎えて2年目の佐藤琢磨は、セントピータースバーグで6位、ロングビーチで5位と、得意のストリートで好成績を挙げ、ランキング9位につけている。

 今年の琢磨の戦いぶりを見ていると、チームが総合力を上げていることが感じられる。エンジニアリング部門が強化され、2人のドライバーたちは異なるセッティングを試して情報交換し、マシンのレベルを短時間で向上させている。2台体制のメリットを昨年よりはるかに大きく享受できているのだ。クルーたちも、レース中のピット作業のスピードと安定感を昨年までより一段レベルアップしてきた。このような環境が整うことで、ドライバーたちはレースを戦うことにより集中ができる。

 琢磨が表彰台に上り、キャリア2勝目を挙げる可能性は、昨シーズンより確実に高まっている。

天野雅彦●文 text by Masahiko Jack Amano