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米国空軍は4月27日(現地時間)、全地球測位システム「GPS」を構成する次世代の衛星「GPS III-2」の打ち上げを、米企業スペースXに発注すると発表した。米国の軍事衛星の打ち上げは、長らくボーイングとロッキード・マーティンが独占していたが、スペースXによってそれが崩れ、今後競争が始まることになる。

打ち上げにはスペースXの「ファルコン9」ロケットが使用され、2018年5月ごろの打ち上げが予定されている。契約総額は8270万ドル(約89億円)で、この中にはロケットの生産から打ち上げまでのすべての活動が含まれる。

GPS衛星をはじめとする米国の軍事衛星の打ち上げは、2006年にボーイングとロッキード・マーティンが共同で設立したユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)によって、10年もの間独占状態にあった。ULAはボーイングが開発した「デルタIV」ロケットと、ロッキード・マーティンが開発した「アトラスV」ロケットを運用しているが、そもそも両機は米国空軍の要求に従って開発されたロケットでもあり、空軍も両ロケットを数十機まとめて一括購入するなど優遇していた。

しかし、スペースXはこれに反発し、ULAによる独占は不当であるとして提訴。さらに並行して、ファルコン9が軍事衛星の打ち上げに使えるよう、米国空軍から認証を得るための各種試験も続けていた。その後、訴訟は和解で決着し、スペースXの参入が事実上認められると共に、2015年5月26日には、ファルコン9による軍事衛星の打ち上げ認証を米国空軍から取得した。

今回のGPS III-2の打ち上げ契約の入札は、ファルコン9が認証を得て以来、初の入札でもあった。しかし、競合相手になる予定だったULAは「我が社のロケットは空軍が求める必要条件を満たしていない」として辞退したことで、スペースXの契約獲得はほぼ確実となっていた。

GPS IIIは、全地球測位システム「GPS」を構成する衛星で、現在運用中の「GPS II」シリーズの後継機となる。GPS IIシリーズと比べ、測位や時刻の精度が向上しており、ジャミングに対する抗堪性も強化されている。開発・製造はロッキード・マーティンが担当している。

GPS IIIの打ち上げ契約は、2016会計年度中に9機分が結ばれる予定で、今回の契約はその一番目であった。なお、GPS IIIの1号機「GPS III-1」の打ち上げは、すでにULAが契約を獲得しており、2017年以降にデルタIVによる打ち上げが予定されている。

○ULAの独占はなぜ崩れたのか

ULAによる10年にもわたる軍事衛星打ち上げの独占が崩れた理由には、スペースXの参入と同時に、ULAが運用するアトラスVにも原因がある。

アトラスVの第1段にはロシアから輸入した「RD-180」というロケット・エンジンが使われているが、ウクライナ問題をめぐる米露関係の悪化により、米国議会は2014年に、RD-180を使って米国の軍事衛星を打ち上げることを禁止する決定を下した。そしてGPS III-2の打ち上げ契約の入札の期限である2015年11月16日までに、この禁止令が解除されなかったため、ULAは入札を辞退することになった。

その後、同年12月に禁止令はいったん解かれており、今後の入札にはULAも参加するものと考えられる。

しかし、ファルコン9に比べ、ULAのアトラスVやデルタIVは高価であり、競争に勝てるかどうかは不透明である。今回の発表でも、米国空軍はファルコン9の打ち上げコストの安さをとくに強調。ULAがファルコン9よりも優れているロケットの信頼性や打ち上げの確実性、過去の実績といった点よりも、価格を重視する姿勢を示している。

ULAでは、デルタIVとアトラスVの後継機となる「ヴァルカン」ロケットの開発を進めている。ヴァルカンは米国製のロケット・エンジンを使用し、またコストも安くなることが見込まれている。しかし、完成は早くとも2019年以降になる予定で、さらに軍事衛星の打ち上げに必要な認証を改めて取得する必要があることから、今後当面の間、ファルコン9が軍事衛星の打ち上げを独占するという、これまでとは逆転した状態が続く可能性もある。

【参考】
・Air Force Awards GPS III Launch Services Contract
 
・Falcon 9 rocket wins landmark U.S. Air Force launch contract - Spaceflight Now
 
・SpaceX wins $82 million contract for 2018 Falcon 9 launch of GPS 3 satellite - SpaceNews.com
 

(鳥嶋真也)