昨季の賞金女王イ・ボミ(27歳/韓国)は、今季もはや2戦目のヨコハマタイヤ PRGRレディスで優勝。その人気と注目度の高さは相変わらずだ。

 そんな中、「第2の美人刺客」と言われる韓国人プレーヤーの人気も徐々に高まってきている。4戦目のアクサレディスで優勝し、日本ツアー通算2勝目を飾ったキム・ハヌル(27歳/韓国)である。

 日本ツアー参戦2年目となる今季、開幕戦からずっと優勝争いに名を連ね、3試合連続のトップ10入り。4戦目にはついに栄冠を手にした。その後、5戦目のヤマハレディース葛城でも13位タイと、好調を維持している。4月25現在、賞金ランキングは4位。シーズンはまだ始まったばかりだが、賞金女王の有力候補に浮上したことは間違いない。

 2011年、2012年と韓国ツアーの賞金女王となったキム・ハヌル。その肩書きは、やはりダテではなかった。それでも今季、昨季とはゴルフの内容が明らかに違う。何かしら、つかむものがあったのだろうか。彼女を直撃すると、笑顔を見せてこう答えた。

「実はこのオフ、中国の広州で男子プロの崔京周(チェ・キョンジュ。45歳/韓国※)選手と、40日間の合宿をこなしてきたんです。そこで、崔選手からいろいろなことを学びました。特に重点的にやってきたのは、アプローチとバンカーショットです。私のバンカーショットを見た崔選手が、『そんなショットで、よく今までツアーで勝ってこられたな』と言われてしまいましたから(笑)。また、クラブで砂を毎日500回くらい叩いてパワーをつけて、崔選手からショットのテクニックも教えてもらいました。その結果、アプローチを含めたショットの精度がすごく上がりました」
※アメリカPGAツアーで活躍する韓国人プロゴルファーの第一人者。米ツアー通算8勝。2004年マスターズでは3位となって、アジア中を沸かせた。

 序盤戦の活躍の裏には、技術の向上があった。そのうえで、「ツアー2年目ということもあって、日本の生活環境やコースにも慣れてきたことが大きい」と、キム・ハヌルは語る。

「やっぱり昨年、一度コースを回った経験が今年に入ってすごく生きています。どこでどういうショットを打てばいいのかなど、今季はイメージできるので、(昨年よりも)楽な気持ちでプレーできるようになりましたね」

 好調な要因のもうひとつは、「日本の水に慣れたこと」だった。とはいえ、決して簡単に結果を出せたわけではない。2戦目のヨコハマタイヤ PRGRレディス、3戦目のTポイントレディスと、2週連続で最終日を首位で迎えながら勝ち切れなかった。「あのときは、さすがにつらかったです」と漏らす。

「優勝を逃したあの2試合は、かなり緊張していました。でも自分では、『緊張していない』と装ってプレーしていたんですね。それが間違いでした。嘘なんですから。それで、アクサレディスのときは、緊張してミスをしても、それを受け入れてやっていこうと思ってプレーしていました。おかげで結果を出せましたけど、もし優勝できなかったら、メンタル的にどうなっていたのかなぁと思うと、ちょっと怖いですね(笑)」

 そう話している最中も、キム・ハヌルからは笑顔が絶えなかった。ラウンド中も、ミスショットをしたあと「ペロッ」と舌を出して、おどけて笑う姿をよく見かける。「スマイルクイーン」という愛称は、そうした振る舞いからつけられた。

 いつも笑顔でいるのは、なぜか。キム・ハヌルが言う。

「私にとっては、笑顔でいることが"ポーカーフェイス"なんです。試合中にミスをすると嫌な気分になることもたくさんあるんですが、笑うことで気持ちに余裕を持たせられるんです。笑顔でいるときも、実は傷ついたり、焦ったりしているんです。笑顔でありながら、内面ではいろんな感情が渦巻いているんです(笑)」

 上位争いを演じ続けることで、注目度も一段と増した。その持ち前の笑顔と、ミニスカートが似合うスタイルのよさもあって、各メディアでは女王イ・ボミと比較されて登場する機会も増えた。

「そうやって注目されることは、いいことだと受け止めています。日本のファンの方も増えましたし、温かい声援を送ってくれることにはとても感謝しています」

 5月には、日本のファンクラブが立ち上がる予定だ。これから、ますますファンの数は増えていくだろう。そんなファンのサポートに応えるためにも、今は必死で日本語の勉強に励んでいるという。

「韓国にいるときから、専属の日本語の先生がいて(日本語を)勉強していたんです。日本に来てからは先生がいないので、マネジャーが教えてくれたり、プロアマ戦のときに一緒にプレーする日本人の方から学んだりしています」

 キム・ハヌルは今季から、日本人のキャディーにバッグを担いでもらっている。そのキャディーとの意思疎通を図るためにも、日本語の上達は不可欠なのだ。

「昨季は、韓国人にキャディーをやってもらっていたのですが、今年は日本人の方にキャディーをお願いしています。というのも、韓国人キャディーだと、私とは会話できますが、周囲の日本のゴルフ関係者の方々とコミュニケーションをうまく図れないからです。そうすると、コースの情報なども限定的になってしまいます。

 その点、日本人キャディーであれば、コースのことをよく知っていますし、アドバイスを受けるうえでも、大きな力になってくれます。そのためには、私自身、もっと日本語を理解できるようにならないといけない。それができないと、成績も上がらないと思っています。ですから、なるべく早く日本語を話せるようになりたい」

 そうして、最近では日本語を聞き取ることは、おおよそ問題なくできるという。あとはどれだけ話せるようになるか。彼女は、「できれば、次に優勝したときには、日本語でスピーチしないといけないと思っています」と言って笑った。

 昨季終了後、キム・ハヌルが立てた今季の目標は、「ツアー2勝目と、賞金ランキング10位以内」だった。そのひとつは、すでにクリアした。

「2勝目を達成した今、新たな目標は3勝目です。それが実現できれば、また新たな目標を立ててやっていきます」

 そう言って、視線の先を遠くに向けたキム・ハヌル。賞金ランキング10位以内という目標も、現在の調子からして難なく達成できるに違いない。新たな目標とする3勝目を果たすことも、おそらく時間の問題だろう。そのとき、もし流暢な日本語でインタビューに答えていたら、賞金女王の座も見えてくるかもしれない。

text by Kim Myung-Wook