革新的再生医療の種が、また一つまかれた

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iPS細胞の略称で知られる「人工多能性幹細胞」は、体細胞に遺伝子を導入することによって多様な細胞に分化できる「分化万能性」と,分裂増殖してもそれを維持できる「自己複製能」をもった細胞をいう。iPS細胞の命名者である京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥教授が、2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞したことで広く知られるようになった。

失われた身体機能を取り戻すため、自分の細胞を再生させて移植する――いわゆる「再生医療」に企業が本格的に取り組み始めている。15年5月に誕生したバイオベンチャー、株式会社再生医療 iPS Gateway Center(代表取締役・西野高秀)もその一つだ。同社は16 年 4月27日、慶應義塾大学医学部整形外科中村雅也教授グループ(医学部長・岡野栄之)と共同で間葉系幹細胞(MSC)やiPS細胞それぞれを用いた、靭帯(じんたい)再生のための研究を開始すると発表した。

交通事故やスポーツで障害を負った体を「再生」

再生医療 iPS Gateway Centerと慶大医学部の中村雅也教授グループは共に、MSC やiPS細胞それぞれを用いて靭帯組織の再生を図り、早期に臨床応用を目指す。

同社の共同研究責任者は、取締役で慶大医学部整形外科共同研究員の白川真理子だ。彼女は獣医でもある。共同研究に至った経緯について、同社広報担当者は次のように説明する。

「靭帯・腱の再生事業を考えた際に、臨床応用の早期実現を目指して弊社ではその分野を研究している大学や研究機関の研究者へアプローチをしてまいりました。そうした中で慶大整形外科の中村教授という知己を得、中村教授の研究室内でも腱・靭帯研究チームを発足させるタイミングであったのが、この共同研究開始に至った経緯です」

靭帯の損傷は、交通事故やアスリートが運動器を酷使した場合に生じる。適切な治療がなされなかった場合には変形性関節症を発症し、関節の機能障害を引き起こす可能性もある。

靭帯が完全断裂した場合、ポリエステル、ポリテトラフロロエチレン、ナイロン等を用いた人工靭帯、あるいは膝蓋靭帯、半腱様筋・薄筋腱等の自家靭帯・腱といった再建材料を利用した手術が行われている。しかし、これら従来の治療法には様々な問題点がある。

このたびの共同研究では、靭帯疾患領域における革新的再生医療の早期実現に向けて貢献していくことを目指す。MSC やiPS 細胞それぞれから誘導した靭帯組織と既存の人工靭帯を利用した新規コンポジット靭帯の開発を行なうという。