「エッセンシャルズ」5製品を手にする商品開発部主任の大屋さん

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店で手に取ったフルーツジュース。飲んでみたらおいしく、そのうえビタミンやミネラルなどの栄養素が多ければ、なおうれしい――。キリン・トロピカーナ(東京・新宿区)が販売する「エッセンシャルズ」には、購入者からこんな感想が寄せられている。

もともと海外で人気があった商品を、日本市場向けにアレンジして発売した。国内市場で、果汁入り飲料の「新境地」を切り開けるか。

働き盛り世代が空腹なとき「少しでも栄養ある飲み物を」

「エッセンシャルズ」は2015年1月、「鉄分」「食物繊維」「カルシウム」の3種類が発売された。同年4月の「ミネラル(カリウム)」、2016年1月の「マルチビタミン」を加えて、現在は5種類のラインアップになっている。

2004年、フランスで最初に発売された商品だ。当時から海外では健康課題の解決が社会的に注目されており、果汁飲料を飲んで手軽に栄養がとれる点が消費者に受け入れられた。

日本の消費者はこれまで、果汁飲料に対して「体に良さそう」とのイメージを持ってきた。今日ではさまざまな種類の飲料が出回るなかで、果汁飲料にさらなる「ヘルシーさ」を求めるようになっている。キリン・トロピカーナの商品開発部主任、大屋茉莉子さんによると、近年では「小腹」がすいたときに果汁飲料を、「スナック菓子を食べるよりも健康的だから」との理由で購入する人が増えているそうだ。

現在、日本国内で販売されている「エッセンシャルズ」の各商品は、いずれも果汁100%ではないが、飲めば1日に摂取すべき各種栄養素の不足分を補える。海外では、主にファミリー層向けだが、日本で発売する際は「毎日が忙しくて、つい必要な栄養が不足しがちな人」を想定した。

最初にターゲットに定めたのは、仕事や家事、育児に追われる30〜40代の女性だ。家族向けの大きなパックではなく、個人が自分用に買うために330ミリリットル入りの小型サイズ。また購入してすぐ飲めるように、紙パックにストローなしの飲み口にした。パックの絵柄も、持っているだけでスタイリッシュだと思ってもらえるデザインを追求した。

スーパーやコンビニエンスストアで販売するが、購買層は想定していた「忙しい女性」にとどまらず、「実は、およそ4割が男性だったのです」(大屋さん)。主に働き盛りの男性が仕事中に空腹感を覚えたとき「健康に気を配らないといけないから、少しでも栄養のある飲み物を」と探すうちに、「エッセンシャルズ」が目に入るようだ。

2015年の販売数は、年間で300万箱以上と飛躍的に上昇した。

栄養成分の独特な味が出過ぎないように果物を選定

キリン・トロピカーナが最も重視するのが、味だ。「体に良いと言われても、おいしくない」では、味覚の肥えた消費者から敬遠されてしまう。飲料メーカーとして、長年培ってきたノウハウをベースに果実のおいしさをいかに引き出すかにこだわった。

例えば鉄分入りの飲料は、マンゴーを主体にオレンジ、リンゴ、アサイーをブレンドしている。鉄は味が比較的顕著に分かるため、強すぎると「飲み心地」を損ねてしまう。開発段階で、鉄の味が出過ぎないようにする果物を選んだ結果、マンゴーに決まった。「あくまでもジュースとしてのおいしさは妥協したくありません」と大屋さんは強調する。

日常のふとした場面で、息抜きに手に取るジュース。昨今の健康志向の高まりから「少しでも体にいいものを」を選ぶケースは少なくないだろう。今日では、「隠れ栄養失調」と呼ばれ、必要な栄養素が足りていない人もいる。大屋さんは「自分のための商品と思って飲んでもらえれば」と話した。