「ピリピリ」「ゼエゼエ」の表現は効果アリ(shutterstock.com)

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 今度の医師とは妙に相性がいい。歴代の先生より親身の度合いが濃く思える。自ら病院を変えたり、訳あって担当医が交替した際、そう想われた経験はないだろうか。

 所詮、患者(こちら)側の主観に過ぎないとしても、苦手意識よりは好感度を抱けるほうがいいのは、医療現場でも同じだろう。

では、医師に親近感や信頼感を覚える理由はどこにあるのだろうか。

 もしかしたら、医師との診療中に「オノマトペ(擬音語・擬態語)」が介在しているかもしれない。

 初診で症状を訴えた際に、あなたもしくは医師が「ピリピリ」「ゼエゼエ」などの表現が用いられ、思わず「そう、そう」とイメージを共有し、一気に距離感が縮まったことはなかっただろう?

オノマトペで病の正体を追いつめる

 オノマトペ(仏:onomatopee)とは自然界の音や声、ものごとの動きや状態などを音(おん)で象徴的に表わした語のこと。

 漫画王国の日本人にはおなじみの表現であるが、NHKのドラマ発の流行語「じぇじぇじぇ」や「きゃりーぱみゅぱみゅ」の芸名、あるいは「モフモフ」などもその範疇に含まれる。

 このオノマトペがいま、患者の症状を表わすのに適し、医療現場でも活用が拡がっているという調査が報告されている。

 昨年、日本ヘルスコミュニケーション学会誌に載った『診療コミュニケーションにおける擬音語・擬態語の使用傾向と効果的運用について』が、その話題の論文だ。
関西人同士の診療は本音炸裂!?

 著者は、青森公立大学経営経済学部の植田栄子准教授(社会学)。植田准教授は、東京・大阪・名古屋の一般内科外来通院患者と医師との診療談話111例(男性患者48名、女性患者63名、平均年齢60.2才)を録音や文字化して次の分析を試みた。

 ゝ鴫燦譟Φ実峺譴了藩僂料澗療傾向と、性差・年齢差・地域差からの影響を分析する。
 擬音語・擬態語の疾患別(咳・喘息、耳鳴、疼痛)の使用の特徴を分析する。
 A蠍濆坩拇談話分析から見た擬音語・擬態語の使用の特徴と、効果的運用を分析する。

 結果、,料澗療傾向として、診療会話中にオノマトペが観察されたのは、東京が44例中16例(3割強)、大阪が43例中21例(半数近く)、名古屋が24例中5例(2割程度)。

この出現率の優位からも、しゃべくり漫才的な大阪の傾向が読み取れて面白い。

 計111例中のオノマトペ出現率は42例(37.8%)だった。しかし、医師先導型の観察事例が多い点から、医師側の発話が多いと患者側の発話も増加傾向にあるのが認められた。

 医師が「脈打つ、耳鳴りやったっけ? それとも、ザー!?」と訊けば、患者側も「ザーってなる!」と、当意即妙で応じるようなやりとりだ。

 そんなやりとりの際、医師側は医学専門用語である「漢語」や「カタカナ外来語」を併用するのも一般的だ。

 「発作になったの? ゼーゼーヒーヒー、なって?」(漢語+擬音語・擬態語)とか、「シュッシュって、ステロイドしたって」(擬音語・擬態語+カタカナ外来語)などだ。

 後者を例に、植田準教授は論文のなかで、こうまとめている。

「医師は主観的・感覚的・曖昧である擬音語・擬態語と、客観的・論理的・具体的である医学専門用語のカタカナ外来語とを併用して、より正確で患者にとって理解しやすいコミュニケーションを成功させている」

 科学的正しさに加え、NBM(物語りと対話に基づく医療:Narrative Based Medicine)を求める患者が増えている。また、植田準教授はこうも書いている。

 「患者は日常言語で端的に症状説明を行った結果、自分自身のことばによる主訴説明を達成して満足度が上がり、診療時間の短縮だけでなく、患者の理解度が上がることから結果的に治療効果の向上も期待できると考えられる」

 患者のあなた側からも「キリキリ」「ヒリヒリ」「キュルキュル」などの擬音語・擬態語で、積極的かつ具体的に症状を訴えることは、双方にとってメリットのあることなのだ。今度の診療時からさっそくどうぞ。
(文=編集部)