父親のDNAが異なる双子が!?(shutterstock.com)

写真拡大

 自然妊娠の神秘さも性愛の深さも考えさせる珍事があった――。

 妊娠のうち2人以上の胎児を子宮に同時に懐胎する妊娠を「多胎妊娠」と呼ぶ。多胎妊娠は、一卵性双胎(一卵性双生児の妊娠)と二卵性双胎(二卵性双生児の妊娠)に分かれる。

 一卵性双生児は、1つの卵子に1つの精子が受精し、1個の受精卵が2つに分かれてできる。つまり、性別も血液型もDNA型もすべて同じなので、容貌や身体的な特徴のそっくり度はかなり高い。芸能人なら、蛯原友里さん・英里さん、三倉茉奈さん・佳奈さん、ザ・たっち、ドラマ『フルハウス』のオルセン姉妹などが一卵性双生児だ。

 一方、二卵性双生児は、1つの卵子に1つの精子が受精した受精卵が2個着床してできる。つまり、2個の受精卵なので、性別も血液型もDNA型もすべて異なる。男女の双生児はすべて二卵性双生児になり、そっくり度は兄弟姉妹と同程度だ。

ベトナムで父親が違う双生児が!?

 さて、3月8日の国営ベトナム通信(VNA)の報道によると、ベトナムで生まれた2歳になる双生児と両親のDNA鑑定を行ったところ、母親のDNAは一致したが、父親のDNAは片方の双生児だけが一致、双生児の父親は別々の男性だった事実が明らかになった。

 父親が違う双生児が生まれる確率は極めて低い。世界でも10数例しかなく、ベトナムでは初のケースという。双生児のうち、1人は髪が多くウェーブが強いが、もう1人は髪が薄くストレートだ。双生児の父親は「双生児なのに容姿が似ていない」と親族から勘ぐられたため、病院での取り違えかと疑ったが、取り違えの事実はなかった。

 父親は、ハノイ市の遺伝子解析技術センターに駆け込み、DNA鑑定を依頼する。意外な結果だった。双生児2人の母親は同じだが、父親はまったく別人だった! 父親は驚き、最善の対応策を考えているという。ベトナム遺伝学会のルオン会長によれば、両親への守秘義務があるため、詳細の言及を避けている。その後の報道もない。

同時期に2個以上を排卵し、かつ複数の男性と肉体関係を持った

 親子のDNA鑑定はどのように行ったのか?

 一般的には、口腔内の頬の内側を綿棒で擦って採取した細胞のDNAを分析する。男性にしか存在しないY染色体のDNA塩基の縦列反復配列数(Y-STR)を調べ、9〜22カ所のDNA型を比較すれば、血縁関係の有無が判明する。

 DNA鑑定は、精確かつ高精度のため、高い識別能力がある。母親が参加しなくても父親と子どもだけでも鑑定できる。肯定確率(親子である確率)は99.999%以上、親子でない時は肯定確率が0%(100%完全否定)になる。

 父親は2人! なぜこのような珍事が起きたのか? それは卵子と精子の寿命に関係する。

 女性の卵子の寿命は12〜48時間、男性の精子の寿命は7〜10日間。通常の排卵は1カ月に1個だが、排卵が1カ月に2個以上あり、しかも排卵の前後1週間以内に女性が複数の男性と性交渉を持てば、父親の違う双生児が生まれる可能性がある。つまり母親は、2回の排卵期に少なくとも2回のセックスを行い妊娠した。したがって、双生児の母親は共通だが、双生児はそれぞれ別人の男性の精子の受精によって生まれたのだ。
昨年、米国でも同様の珍事が!

 昨年、珍事は米国でも起きている――。

 ニュージャージー州パサイク郡の男性が双生児の養育費を請求された民事訴訟だ。2013年1月に出産した双生児のDNA鑑定を行ったところ、男性のDNAが片方の双生児のDNAと一致したため、パサイク郡高等裁判所は男性に1人分の養育費を支払うよう命じた。養育費を請求した原告の女性は「1週間以内に異なる男性と肉体関係を持った」と法廷で証言している。

 ベトナムの1件も米国の1件も衝撃的で稀な出来事だ。妊娠という生命の営みの神秘すら感じさせる。だが、女性が同じ排卵期に2個以上を排卵し、かつ複数の男性と関係を持って起きた事実は揺るがない。

 とくに不倫に走った母親の道義的・倫理的な責任は免れるのだろうか? わが子の真相を知らされた父親の困惑や苦悩は決して小さくない。夫婦の確執は深まらざるを得ないだろう。


佐藤博(さとう・ひろし)
大阪生まれ・育ちのジャーナリスト、プランナー、コピーライター、ルポライター、コラムニスト、翻訳者。同志社大学法学部法律学科卒業後、広告エージェンシー、広告企画プロダクションに勤務。1983年にダジュール・コーポレーションを設立。マーケティング・広告・出版・編集・広報に軸足をおき、起業家、経営者、各界の著名人、市井の市民をインタビューしながら、全国で取材活動中。医療従事者、セラピストなどの取材、エビデンスに基づいたデータ・学術論文の調査・研究・翻訳にも積極的に携わっている。