サイバーなHMDや船舶衝突回避システムも登場。MS主催の学生向けITコンテストImagine Cup 2016日本予選大会に学生のパッションを見た!

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日本マイクロソフトは4月23日、「Microsoft Innovation Day」を開催。プログラムとして、企業向けのアイディアコンテスト「Innovation Award 2016」とあわせて、例年は単独で開催されている学生向けのITコンテスト「Imagine Cup 2016」の日本予選大会最終選考会と表彰が行われた。

本記事では、Imagine Cup 2016をレポートする。Imagine Cupは、ビル・ゲイツの発案の元スタートした学生向けのITコンテスト。2003年に始まり、今年で14回目となっている。イベントに先立ち開会の挨拶として、日本マイクロソフトの平野拓也社長が登壇。「以前ビル・ゲイツに怖いものを聞いたところ、大企業は怖くない。いちばん怖いのは学生。1日何十時間もパッションをもって取り組んでいる学生が怖い」と語っていたエピソードを披露。実際ビル・ゲイツも学生時代に寝食を惜しんで取り組んだBASICの移植をきっかけに起業し成功しており、彼らしい考えであるとともに、なぜImagine Cupを始めたかがよくわかるエピソードだ。

今年度のImagineCupは「ゲーム部門」、「イノベーション部門」、「ワールドシチズンシップ部門」の3つの部門でコンテストが行われた。作品の応募受付は3月28日に終了しており、応募作品のなかから日本予選大会へ出場する各部門3チームずつはすでに選出済み。4月23日の日本最終予選大会では、この計9チームがプレゼンテーションを行い、各部門の優勝チームを決定した。
●ゲーム部門
最初にプレゼンを行ったのがゲーム部門。ゲーム部門は「インタラクティブな遊びの体験を与えるゲームコンテンツが対象。従来のゲームの概念を覆すような作品」がテーマとなっている。

1チーム目はバンタンゲームアカデミーのCuboFactory。作品は、PCのカメラ機能を使って、ペーパークラフトのマーカーを読み込み、実際の映像とCGを組み合わせたARゲームを開発した。

ゲームはまず「はやさ」、「ちから」、「まもり」の3つのステータスを調整したキャラクターを製作し、そのキャラクターを家庭用のプリンターで印刷するところからスタート。印刷したキャラクターはハサミとノリを使って、立方体に組み立て可能。このキャラクターの頭部がマーカーになっており、ここをPCのカメラで読み込むことで、ゲーム内で設定したステータスが反映される。

読み込んだキャラクターは、連写で弾を撃ち合うなどミニゲームで対決可能。PCでの対戦や、工作を通じて親子でコミュニケーションを取りながら遊べるのがポイントとなっている。

ゲーム部門の2チーム目はトライデントコンピュータの「SenRaku」。

「SenRaku」は2×2の対戦ゲームで、升目状のフィールドをキャラクターが歩くと、そのキャラクターの色で升が塗りつぶされる。この塗りつぶされた升の線で相手キャラクターを囲むと、そこが穴となって相手キャラクターを落とすことができる。つまり「線」と「落」で「SenRaku」というわけだ。

チーム同士は同じカラーなので、お互いに協力して線を引けるのがポイント。単純なコントローラーさばきだけでなく、チーム同士のコンビネーションや相手との駆け引きなどもゲームに勝つための重要な要素となる。

トライデントコンピュータチームは、このゲームを開発したきっかけとして「オリンピックにe-sportsを加えたい」と説明。オリンピックの競技には「75か国、4大陸」での普及が条件となっているが、現状e-sportsはその条件を満たしていない。そこで、このImagineCupという舞台でe-sportsの認知度を高めると共に、初心者や子ども向けにe-sportsを普及させる足がかりのゲームとして、この対戦型の「SenRaku」を開発したとのこと。

ゲーム部門の3チーム目はECCコンピュータ専門学校の「Project Stinger」。コンボ攻撃の爽快感をテーマに開発した3Dタイプのアクションゲームだ。

実際にプレー動画やデモを見ると、たしかに3Dゲームながら遅延などなく、実に爽快にゲームを進めていくことができる。またキャラクターデザインなども市販のゲームのクオリティーで、そのままパッケージゲームとして売り出しても問題ないレベル。

実は3Dゲームは、3Dゲームエンジンの「Unity」が普及し、ゲームコンテストなどではよく見かけるようになっており、見た目の派手さほどのインパクトはなくなっている。プレゼンでも当初はそういったUnityゲームのひとつと思われ盛り上がりに欠けたていた。

ところが、「Project Stinger」はゲームエンジンから自作していると発表してから会場の反応がガラリと変化。一般的なゲームエンジンを使わなかった理由は、目標とする爽快感を得られるような処理速度が得られないため。開発したゲームエンジンを使うと、マイクロソフトのDirectXよりもレンダリングなどの処理が高速になるとのこと。

しかもキャラクターなどのライブラリー自体は以前から製作をしていたが、ゲーム自体の開発期間は、ゲームエンジンも含めて半年ほど。ゲームエンジンの公開も視野に入れているといい、ゲーム内容だけでなくシステムも含めて高レベルの作品だった。
●イノベーション部門
イノベーション部門は「既成概念や常識を打ち砕くサービス、テクノロジーの新しい使い方を提案するアプリ、最先端のテクノロジーを駆使したアプリ」をテーマとした部門。

1チーム目は東京大学の「CASPER」。Kinectを使ってリハビリテーションなどが遠隔で行えるシステムだ。

Kinectを使うことで、奥行きなどの情報もキッチリと検出できるため、リハビリのトレーナーをキッチリとモニター上で合成でき、トレーナーがあたかもその場所にいるかのように、リハビリが受けられるようになる。

また、トレーナーからの合図などに自作の「空気砲」を活用。たとえば足を上げるタイミングなどを教える際に、空気砲からエアが放出される。耳が遠い高齢者でも合図が分かりやすいようになっている。

この空気砲は内部にスピーカーが装備されており、この振動でエアを放出。放出方向も左右に遠隔操作で調整できるようになっている。

2チーム目は同じく東京大学の「JackIn Space」。やはりKinectを使った作品だが、こちらはスポーツなどのレッスンなどに活用できるソリューションだ。

システムとしては、4台のKinectに加えて、3台のモーションキャプチャーカメラ、さらに目線に取り付けたカメラを使用。これらデバイスから取り入れたデータを元に、別の場所で3面スクリーンに3つのプロジェクターで投影することで、あらゆる視点からの映像を瞬時に切り替えて観られるというもの。

JackIn Spaceを開発したきっかけは、そもそもスポーツを練習する際に、自分のフォームなどが確認できず、不格好なフォームのままマスターしてしまうのを防ぎたいため。この「JackIn Space」を使えば、様々な方向から自分のフォームがチェックでき、技術の向上に役立てられるという。

さらに、瞬時に視点を切り替えられるので映画の「攻殻機動隊」のような、SFライクな映像体験も可能。次世代の映像技術としても期待できる作品だ。

3チーム目は筑波大学の「Bionic Scope」。HMD(ヘッドマウントディスプレー)と光学式カメラを組み合わせた視覚拡張デバイスを発表。

デバイスの前面に取り付けたデジタルカメラの映像をHMDへと映し出せる、いわゆるデジタル望遠鏡といったところ。特徴的なのは、ズームなどの操作に生体電位信号を採用していること。本体にはこめかみに当たる部分に電極が取り付けられており、ここから生体電位信号をキャッチできる。

これにより、「奥歯をかみしめるとズームイン」、「強くまばたきするとズームアウト」といった具合に、手を使わずにコントロール可能。両手を使わないでコントロールできるので、災害救助や医療、実験などにも活用できるとのこと。

現状ではHMDにはOculus Riftを利用し、デジカメも市販のものを使っている、もし本格的にビジネス化する場合は、改めて独自のデバイスを開発していきたいのこと。
●ワールドシチズンシップ部門
ワールドシチズンシップ部門は「病気や自然災害、人権、貧困、情報へのアクセス、男女の平等といった社会問題を IT で解決するアプリ、サービス」がテーマとなっている。

1チーム目は鳥羽商船高等専門学校の「素敵な劇しまSHOW」。Kinectを使ってコンサートや演劇などの背景をインタラクティブに操作する作品。

システムとしてはPowerPointのアドインとして開発されており、Kinectで検知した動きに対応させて、演者の動きに合わせてイラストを動かしたり、演者にスポットライトを当てたりといった機能が利用できる。また、スマホとも連携していて、スマホを振ったりタップすることで背景を変えることができるので、観客も参加できるイベントに活用可能。

すでに同ソリューションを使って、小学校の学芸会からOSK日本歌劇団など本格的な舞台までテスト運用済み。大がかりな舞台装置を用意しなくても、手軽にインタラクティブな演出ができ好評とのこと。

2チーム目は同じく鳥羽商船高等専門学校の「SaNaVi」。鳥羽商船高等専門学校はImagine Cupの常連校であり、こういったコンテストへの参加が奨励されているようだ。

発表した作品は、小型船舶衝突回避のためのサービス。大型船に事故防止システムとしてAIS(船舶自動識別装置)があるが、小型船への搭載義務はないため、日本での船舶の事故は小型船が多いという。

そこでスマホアプリを使って、その船の位置や進行方向、スピードをアップロードしデータを共有。船舶同士が近づくと、警告音やメッセージで注意をうながしてくれる。

今回はマイクロソフトのコンテストということもあり、使用するスマホはWindows 10 mobileだったが、「ウェブアプリとして開発しているので、AndroidやiOSへの移植もハードルは低い」とのこと。また、常時通信機能を使う必要があるが、対象とする小型船舶の航行可能海域はほとんどモバイル通信のエリア内であり、通信に関して問題はない。また、バッテリー消費は1時間ほどで10%になるとのこと。

3チーム目は東京電機大学の「乳幼児睡眠時呼吸チェッカー」。赤ちゃんの動きをKinectで検知して、異常がないか遠隔でも確認できるシステムだ。

元気だった乳幼児が寝ている間に突然死亡してしまう「乳幼児突然死症候群(SIDS」が世界的にも問題になっており、日本でも年間148人の発症頻度となっている。この乳幼児突然死症候群を防ぐために開発したのが今回の作品。

「乳幼児睡眠時呼吸チェッカー」はKinectを使って、乳幼児の呼吸動態をチェック。呼吸しているかどうかは、呼吸時の胸の位置の変化などを元に判定しているという。

このシステムを使うことで、別の部屋など離れた場所でも確認可能。さらに保育所などでは複数の乳幼児をチェックすることができ、保育士の負担を減らすこともできる。
●受賞3チームから本大会出場チームが選ばれる
全チームのプレゼン終了ののち、審査委員の採点により各部門の優勝チームが発表された。

各部門の優勝チームは下記のとおり。

■ゲーム部門

トライデントコンピュータ/SenRaku

■イノベーション部門

筑波大学/Bionic Scope

■ワールドシチズンシップ部門

鳥羽商船高等専門学校/SaNaVi

またSenRakuのトライデントコンピュータチームは、会場内での投票で決められたオーディエンス賞も受賞している。

イベントを統括している日本マイクロソフト執行役デベロッパー エバンジェリズム統括本部長の伊藤かつら氏は、「非常にレベルの高い大会だった。アイディアも素晴らしいし、それぞれ完成度が高く優勝チームを選ぶのが難しかった」と総評している。

7月下旬にシアトルで本大会が開催されるが、ひとまずこの3チームが推薦され、本大会の運営が選んだチームが出場することになる。日本チームの世界での活躍に期待したい。