「(招集の)資格はある」とハリルホジッチ監督は語るが、果たして今後、大久保の代表招集はあるのだろうか。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 3年連続でJリーグ得点王を獲得し、今季も8節終了時で5ゴールとコンスタントな結果を残している。いま、日本国内で大久保嘉人を差し置いて得点を期待できる選手は他にいないだろう。しかし、現実には33歳のストライカーはいまだ日本代表のハリルホジッチ監督から招集を受けていない。ネックとなるのは年齢なのか、スタイルなのか――。
 
「大久保の代表招集は現実的ではない」と語るのはスポーツライターの加部究氏だ。そう分析する要因とはなにか。大久保ではないとすれば、誰が日本代表のアタッカーとして相応しいのか。
 
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 代表の主力クラスが欧州へ出て行くのは、極東の輸出国の宿命だ。逆にJリーグは働き盛りが空洞化するので、どうしてもいぶし銀にスポットライトが当たりやすくなる。実際に中村俊輔、中村憲剛、遠藤保仁らはピッチに立つと経験と技術に裏打ちされて、格別な自己表現を見せつけている。若くして同じようにアピールできる選手たちは海外へと飛び立っていくわけだから、ベテラン優勢は必然の流れでもある。
 
 しかしさすがに俊輔や憲剛の日本代表復帰待望論が沸き上がらないのは、同じポジションの欧州組がそれなりに元気だからだろう。一方で昨年のアジアカップからワールドカップ2次予選にかけて、矢のようにシュートを浴びせながら結実しない試合が続くと、どうしてもFWには元気なベテランを待望する声が高まって来る。プレミア制覇目前の岡崎慎司の活躍は誰もが認めるところだが、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が探し求める典型的な9番ではないし、レスターでのゴール数も少ない。せっかくJリーグに3年連続得点王がいるなら、せめてオプションとして加えておくべきだと考えても不思議はない。
 
 大久保嘉人の実力には疑いがない。現状で日本のトップストライカーである。しかも30歳を過ぎて川崎に来てからは、さらに成長曲線の右肩が上がった。だがハリルホジッチ監督は、今だけを考えてチーム作りを進めているわけではない。せめてワールドカップ本番で、前回大会のアルジェリア並みの成績を望めなければ、同監督を招聘した意味がない。つまりピークは2年後に作らなければならないわけだ。その時36歳になる大久保が、日本で最高級の活躍をできるのか。そこが代表招集の是非を決める原点になる。
 
 次に今後の日本代表がどんな試合を戦っていくかを想定する必要がある。確かに今まではメディアが近視眼的な騒ぎ方をする影響もあり、決定力不足の解消が最大のテーマに見えたかもしれない。だがこれから先は、引いた相手を崩すのは数あるテーマのひとつでしかなくなる。
 
 現在大久保は、2次予選での日本代表と同じようなテーマを抱えて戦っている。大半の試合で攻勢に出る時間が長い川崎では、確実に他チームを上回るチャンスの数を担保されているからだ。展開に応じて中盤に降りると自在に組み立てに参加して、再度ゴール前に顔を出していく。独特のリズムをチームメイトと完璧に共有し、心地良くプレーができている。
 
 しかしJリーグの中での川崎と、世界の中での日本の立ち位置は大きく異なる。むしろこれからの日本代表が重点的に進めていかなければならないのは、守備戦術になる可能性が高い。
 
 この状況で、もし大久保を日本代表に招集したとしても、トップでの起用は考え難い。前線からの守備を考えれば、岡崎のライバルは武藤嘉紀になる。つまり1トップか3トップ系のフォーメーションを選択するなら大久保は2列目に回り、チャンスメイクの役割を担う。
 
 逆にどうしても使いたければ2トップの選択肢も消えてはいないが、9番発掘が難しく2列目にタレントが豊富な現状を考えると、あまり得策ではない。要するに日本代表選出を狙うなら、大久保のライバルは岡崎ではなく、香川真司、本田圭佑、宇佐美貴史らになる。例えば、アジアカップでのUAE戦のように、どうしてもゴールだけが欲しい試合に直面した時に、ワンポイントでの招集の誘惑はあるかもしれない。しかし慎重居士の指揮官が、実験抜きでの本番起用に踏み切るとも思えない。
 
 確かに3年連続得点王で代表に招集されないのは公平性を欠く。また水泳を筆頭に他競技を見ても、トップパフォーマンスの持続性は高まっている。だが年齢とプレースタイルの両面から判断して、大久保の代表招集は現実的ではない。むしろ2列目で今欧州組を押し退けてでもチャンスを与えるべきなのは、チャンスメイクの精度や創造性、さらに運動量、フィニッシュの精度などを総合的に判断しても武藤雄樹だと思う。
 
文:加部 究(スポーツライター)