26日、平井久志・立命館大学客員教授が講演。北朝鮮の金正恩第1書記は「協調」と「挑発」を繰り返している、と指摘。国民の求心力を高めるために核開発攻勢が目立つが、5月の朝鮮労働党大会後には「再び平和攻勢に転じる可能性がある」との見通しを示した。

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2016年4月26日、朝鮮半島情勢に詳しい平井久志・立命館大学客員教授が「金正恩体制をどうみるか−労働党大会を前に」と題して日本記者クラブで講演した。北朝鮮の金正恩第1書記は「協調」と「挑発」を繰り返している、と指摘。最近、国民の求心力を高めるために核開発攻勢が目立つが、5月の朝鮮労働党大会後には「再び平和攻勢に転じる可能性がある」との見通しを示した。

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平井氏は共同通信出身。ソウル支局長、北京特派員などを務め、2002年に「瀋陽事件」報道で新聞協会賞、「朝鮮問題」報道などでボーン・上田賞を受賞している。発言要旨は次の通り。

金正恩第1書記は「協調」と「挑発」を繰り返している。15年8月15日の「南北合意」以降から同年末までは協調路線だった。「権力の掌握」から「権力の安定」時期に移行し、挑発より対話・調整型に姿勢が転換したと見られた。中朝間の関係修復、南北対話姿勢、米国への平和協定提案などが目立った。

内政では、軍部隊や軍事演習の視察が減少し、民生部門の現地指導が増加した。金氏は平和的な環境の必要性を訪朝した劉雲山中国常務委員に対し「今、経済発展、国民生活の改善に努めており、それには平和で安定した外部環境が必要だ。朝鮮は引き続き南北関係の改善と朝鮮半島の安定した情勢の維持に努力していく」と説明している。

しかし、今年になって新年の辞で「大勢統一の否定」と「国際協調」の中断を打ち出し、核開発をアピールした。対中関係を犠牲にしてでも、挑発路線に変更した背景には、最高指導者の社会的求心力の低下がある。

もともと経済開発と核開発を同時に進める「並進路線」は不変だった。所有権は認めないが使用権を認める市場経済化の進展によりプラスの経済成長が続いている。市場経済化によって、政府の威光が国民に届かなくなっており、求心力を高めるためにも、核開発の推進を誇示している面がある。

37年ぶりの5月の朝鮮労働党大会では、米国に対する「勝利宣言」をアピールし、対米平和協定締結の提案をする可能性もある。党大会後に再び平和攻勢に転じ、6カ国協議再開や米朝対話を志向することも十分考えられる。

◆米バスケット選手と藤本氏しかいない!

金正恩氏にとって不幸は、西側に本当の意味で理解してもらえる人が、米バスケット選手(デニス・ロッドマン氏)と金正日総書記の専属料理人を務めた藤本健二氏(仮名)しかいないことだ。以前は金日成氏とカーター元大統領、宇都宮徳馬氏は信頼関係があった。クリントン大統領がピンポイント攻撃しようとした際に、カーター氏が動いて戦争を防いだこともあった。今、外部ににカーター氏の役割を果たせる人がおらず、北朝鮮内部に金日成氏のような人がいないのは気がかりだ。

藤本氏は金正恩氏が幼少のころからの知り合いで、ノスタルジアから北朝鮮に招かれたようだ。帰国後の藤本氏の談話で、金氏が戦争はしたくないこと、日本の世論を気にしていること、が伝えられたのは意味のあることだ。(八牧浩行)