衆院補選の勝利について語った菅官房長官だったが、なぜかTBSのニュースではその発言のテロップが北朝鮮のニュース内容になっていた(2014年3月撮影)

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北海道5区の衆院補選で自民党公認の和田義明氏が初当選し、菅義偉官房長官が喜びの記者会見を行った映像をTBSが流した際に、発言内容を示すテロップが「南朝鮮の傀儡らをいつでも攻撃できる〜」などとなる、とんでもないミスが起こった。

これは次に報じられる北朝鮮に関するニュースのために用意されたもので、番組ではその後、「字幕スーパーが乱れました」と詫びた。しかし、TBSをめぐっては過去にも同様の間違いが起こっているため、ネット上では「実は狙ってやったのでは?」などといった不信感を表明する人も相次いでいる。

「南朝鮮の傀儡らとアメリカの後頭部をいつでも攻撃できる」

テロップの間違いがあったのは2016年4月25日放送の昼の情報番組「ひるおび!」の報道コーナーでのこと。自民党公認の和田氏が野党の推薦した池田真紀氏を接戦の末に勝利を収めた。菅官房長官の様子が放送され、官房長官は、今回の結果におごることなく、国家国民のために一層の緊張感を持って有権者の負託に応えられるよう頑張りたい、などと語った。いつもはその発言内容が画面下のテロップで流れるのだが、出たのはこんな文章だった。

「今回の結果におごることなく」

とここまでは、発言通り。その後、テロップが切り替わると、

「南朝鮮の傀儡(かいらい)らとアメリカの後頭部をいつでも攻撃できる刀を刺せるようになった」

という、菅長官発言とは何の関係もない内容が、約6秒間表示された。音声をよく聞かず、画面と字幕で内容を確認していた視聴者は、さぞかし驚いたことだろう。

この時、画面の左上には「朝鮮中央テレビ 午前」という文字があった。

実は、補選のニュース報道の後に北朝鮮人民軍創建84年に関する報道があり、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)試験発射に成功した、などと北朝鮮のテレビが報じていて、そこに官房長官の時と同じテロップが流れた。つまりテロップを出す順番を間違えてしまった、ということのようだ。本来流れるべきタイミングより、約70秒早かったことになる。

その後、ニュースコーナーの最後にアナウンサーは、

「衆議院補選のニュースで字幕スーパーが乱れました」

と詫びた。

この放送後にネットでは「本当に単純ミスなのか?」などといった疑問の声があがることになった。補選で自民党が勝ったことがよっぽど悔しかったに違いない、として、

「人間のやることだから失敗はつきものだけどさ、いつも自民の印象を悪くするようなミスなんだよな。なぜ逆はないのだろう」
「またTBSか。わざとテロップ流して国外に流通させるんだろ。菅官房長官がこんな事言ってるよって。絶対わざとだろ!」

などといった、不信感がにじみ出る書き込みまで出ることになった。

過去には石原慎太郎氏と訴訟沙汰に

こういう意見が出るのもTBSは過去に様々な事件を起こしてきたからだ。03年には元都知事の石原慎太郎氏が「救う会東京」の集会で、「私は日韓合併を100%正当化するつもりはない」などと発言したが、「サンデーモーニング」では「私は日韓合併を100%正当化するつもりだ」と全く正反対のテロップを付けたことで訴訟になった。06年は「JNNイブニング・ニュース」で細菌兵器を扱う731部隊の特集を組んだ際に、何の関係もない当時の安倍官房長官の写真を3秒間映し、顔に「ゲリラ活動!?」というテロップを重ねた。15年8月放送のドラマ「SP八剱貴志(やつるぎたかし)」では、贈収賄事件で逮捕される政治家役の胸に、北朝鮮による拉致被害者救出を祈るシンボルのブルーリボンバッジを付けて撮影した。この時TBSは、制作したのはTBSとは別の制作会社であり、

「ドラマの小道具として他意なく用いたが、配慮に欠けていた」

などとメディアの取材に答えていた。

今回のテロップの間違いについて、首相官邸はどうとらえているのだろうか。J-CASTニュースが4月26日、広報関係者に話を聞いたところ、

「本当にTBSはこういうこと多いですね」

と呆れていた。