開幕まで約4カ月となったリオパラリンピックの代表切符は誰が手にするのか。その行方を占う大会のひとつが今週末(4月30日〜5月1日)、鳥取市で開催される、「第27回日本パラ陸上競技選手権大会」だ。男子148人、女子57人の全205選手がエントリーしており、トラック・跳躍10種目、投てき4種目でそれぞれ頂点を目指す。

 今大会はIPC(国際パラリンピック委員会)公認大会で、リオ大会の代表候補推薦選手を決める選考大会のひとつでもある。パラ陸上のリオ代表は、6月5日以降に開かれる選考委員会によって選ばれた代表候補選手が日本パラリンピック委員会(JPC)に推薦され、JPCが最終選考の上、後日正式に決定、発表されることになっている。候補選手として推薦されるためには、期限内(6月5日)にIPCが定めた参加標準記録Aの突破や、日本パラ陸上競技連盟が設けた選考基準を満たさねばならず、リオ出場を目指す選手にとって今大会は選考レースを有利にする残り少ないチャンスでもあるのだ。

 注目選手のひとりは、T44クラス(片膝下切断など)の高桑早生(エイベックス・ホールディングス)だ。短距離種目を専門とし、100mは日本記録(13秒69)を持つ。パラリンピック初出場となった2012年ロンドン大会では100m、200mでともに7位入賞。14年アジアパラ競技大会では追い風参考記録ながら、13秒38と自己記録を大きく更新して銅メダルを獲得。狙っていた金を逃した悔しさの一方で、ロンドン大会優勝タイム(13秒26)にも近づき、世界でメダルを狙える手応えも得た。

 昨年は慶応大学を卒業し、社会人1年目となり、練習環境や意識も変化するなか、ドーハ世界選手権に出場。100mでは惜しくも入賞を逃したが、「競技歴実質1年」という走り幅跳びで自己新の5m09をマークして銅メダルに輝いた。リオ代表に選ばれれば、3種目で勝負したいと話す高桑。今大会で自己記録をさらに伸ばし、大舞台への自信を高めておきたいところだろう。

◆切磋琢磨する、二人のスプリンターに期待

 女子の短距離種目では、T47クラス(上肢機能障害など)も見逃せない。昨年、彗星のように現れた2人の若きスプリンターの競り合いに注目だ。1人は昨春、ハンドボールから陸上に転向し、伸び盛りのスプリント力が魅力の辻沙絵(日本体育大学)。昨年は、200mで日本新記録(27秒48)を樹立し、秋には初出場のドーハ世界選手権で100mに出場すると、6位入賞。準決勝で13秒17の自己新もマークするなど大舞台での度胸のよさも見せた。今年になって先天的に欠損している右前腕部に競技用義手を付けるようになり、スタート時や走行時の安定感が増した。現在は、同大が昨年末、陸上部内に発足させた、「障がい者アスリート部」に所属し、さらなる飛躍を目指している。

 そんな辻の好敵手がこの春、日体大に入学し、後輩となった三須穂乃香だ。辻と同様、先天的に右腕の肘から先がないものの、小学校から陸上を始め、ずっと健常者の大会に出場していた三須。2020年東京大会の決定を機に、「パラリンピックを意識した」といい、パラ陸上の大会にも出場するようになった。高校3年生だった昨年7月の日本選手権で、100mの日本記録(13秒11)を樹立し、「2015毎日スポーツ人賞」の新人賞も受賞した。ドーハ世界選手権では惜しくも決勝進出を逃したが、「筋力アップなど自分の弱いところをもっと強化したい」と前向きに話していた。日体大生となり、辻と直接的に切磋琢磨する環境が整ったなか、どれだけの成長がここから見られるか注目したい。

◆群雄割拠のT54 を制すのは?

 T54クラス(車いす)の男子中長距離陣は群雄割拠の状況で、激戦が予想されるが、絶対的エース、樋口政幸(プーマジャパン)が一歩リードする。ロンドンパラリンピック出場後に、トラック種目専念を決め、練習や体づくりを見直し、着実に力をつけた。国際大会でのメダル獲得も多く、経験豊富だ。昨年は、10年以上も破られていなかった800m、1500mの日本記録を塗り替えた。欧州勢に加え、タイや中国選手も台頭するなか、IPC陸上競技グランプリファイナルへの出場を果たし、1500mで銅メダルを手にした。さらに、代表主将も務めたドーハ世界選手権でも1500mと5000mで入賞を果たすなど、強さを見せている。リオ代表に決まれば2度目となるパラリンピックに向け、日本一の称号をいい弾みにしたいところだ。

 そんな樋口の背を追う選手のなかでは、成長株の鈴木朋樹(関東パラ陸上競技協会)に注目したい。現在大学4年生の鈴木は小学校時代から車いす陸上を始め、体の成長とともに実力も伸ばしてきた。昨年は初の世界選手権代表となり、800m、1500mに出場。入賞は逃したものの、トップ選手に果敢に食らいついた積極性が高く評価された。同年、2月の東京マラソンにも出場し、初マラソンながら2位に入って注目され、今年も5位と健闘したが、本人は、「コースの起伏などに左右されず、常に全力でアタックできるトラック種目にこだわりたい」と話す。トラック種目で必要な瞬発力をつけるため筋力アップにも熱心に取り組む、次世代のエース候補の勢いに期待が高まる。

 なお、今年で27回目を数える日本選手権は大会史上初めて、大阪市以外での開催となる。パラリンピックイヤーに伝統ある大会を誘致した鳥取市では、会場となるコカ・コーラウエストスポーツパーク(鳥取県立布勢総合運動公園陸上競技場)のバリアフリー化に着手。車いす選手のための国内初の投てき種目用固定具の設置や段差の解消、トラックの補修など2億円以上をかけて改修したという。好パフォーマンスへの後押しを受けての記録ラッシュにも期待したい。

星野恭子●文 text by Hoshino Kyoko