世界には、まだ知らない音がある。それは過去かもしれないし、遠いアジアのどこかかもしれない。「Sound & City」会期中のインスタレーション及び、4月29日(金)12:00からは自ら登壇するサウンドデザイナー・森永泰弘は録音という手法で、そんな未知の世界をあなたに見せてくれる。【イヴェントは終了しました】

「音・旅・録音・VR:サウンドデザイナー森永泰弘と「拡張する耳」。最新インスタレーションとレクチャーで「Sound & City」に登場!」の写真・リンク付きの記事はこちら
Yasuhiro Morinaga|森永泰弘
1980年生まれ。サウンドデザイナー。東京藝術大学大学院を経て、映画理論家/ミュージック・コンクレート作曲家のミシェル・シオンに師事するため渡仏。現在は、アジアを中心にフィールドワークを実践しながら、ジャンル横断的な制作活動を展開している。フィールドレコーディング作品をリリースするレーベルConcreteを主催。the-concrete.org/project/

森永泰弘の活動を何と表現するかは、実に難しい。

まず一風変わった音楽レーベルの主催者としての彼がいる。そこでは東南アジアにおいて採集されてきた、聴いたこともない民俗音楽を彼自身による「フィールドレコーディング」によって聴くことができる。森永は、この限りにおいて、例えば、アメリカのフォークミュージックにおけるハリー・スミスのような存在であり、別の言い方をするなら、映像メディアを用いないヴィンセント・ムーンのようでもある。音楽を、その場の音=ノイズとともにに封じ込めた、これらの「作品」は、ちょっとした「耳の旅」をもたらしてくれる。ちなみに彼は、このレーベルを「Ethnographic Media Production」と呼んでいる。

その一方で、森永はコンポーザーでもある。コンテンポラリーダンス作品「To Belong」で森永は、過去にフィールドで採集してきた音楽を用いつつ、ストリングスなどを乗せて、時空間を行き来するような不可思議な音像をつくりあげている。ここでの森永は作曲家であるというよりは、サウンドを映画さながらに編集したり、デザインするような作業を行っている。

そしてアーティストとしての森永は、例えば、ユニークなサウンドインスタレーションなどを制作している。「Invisible Ensemble」と題された作品では、インドネシア、ジャワ島中部の儀礼ルワタンの一節を使用し、それを空間での自分の位置によって変化する立体音響としてつくりあげた、インタラクティヴなインスタレーションだ。ある特定の時間と空間を、録音によって封じ込め、それを遠く離れた時間と空間において再編するというわけだ。

森永の作品は、世界の知らない場所の知らない音楽を、音楽のその美しさのままにおいて味わうことをももちろん可能とするが、そこには、もうひとつメタな視点が内包されている。それは「録音」という行為がふくむ不思議さ、面白さ、だ。遠いアジアのどこかから聴こえてくる音を、彼は「遠いアジアのどこかから聴こえてくる音」として聴き手に差し出す。それは、ぼくらの現実の世界に、まったく別の空間と時間を差し込むように意図されている。それは、ある意味、「音のAR」とでも言うべき体験をもたらしてくれるものだ。「音」と「旅」と「録音」には、いまなお、開拓するに足る、未知なる領域が眠っている。

新しいタイプの複合音楽イヴェント「Sound & City」に、森永は、前述の作品「Invisible Ensemble」を、アークヒルズという舞台に適合するものにつくり替えた作品を提供する。

「Trading Garden(市場の庭)」と題された作品は、森永とHonda Uni-Cub(ユニカブ)のコラボによるもので、ヘッドセットをしてホンダのユニカブに乗ると、アークヒルズが昭和のころのかつての「麻布谷町」へとタイムスリップするというもの。かつての六本木界隈を忍ばせる昭和の生活空間のサウンドスケープを、実際の外音と共存させながら聴くことで、都市における聴覚文化を考える音のAR作品だ。作品を聴くためのヘッドホンとして、世界初のオープンイヤーヘッドホンである「VIE SHAIR」と、SENNHEISERの2種類が用意される。音を通して、同じ場所の時間を行き来する、ユニークなタイムトリップをぜひ味わってもらいたい。

また、森永は4月29日には、自身の活動を解説しながら、旅とフィールドレコーディングの面白さを語るレクチャーにも登場する。音と旅というテーマについていえば、森永は、過去に大きな影響を受けた作品として、前衛音楽の異才フレッド・フリスを主人公としたドキュメンタリー映画『Step Across The Border』を挙げている。何を隠そう、それまでスチル写真を学んでいた、かのノマド映像作家ヴィンセント・ムーンを映像に目覚めさせたとのもこの作品だったというから、ともにノマドな作家である森永とヴィンセント・ムーンは、意外なところでルーツを共有していたのである。

映像、音楽、旅、世界。森永のボーダーを超えた活動に、この機会にぜひ触れてみて欲しい。

当日のカンファレンスセッションでは、森永を始め、当日ライヴワークショップを開催する和田永、電子音楽家agraphのほか、Vestax創業者・椎野秀聰が登壇、それぞれの視点から「音」の未来を語る予定だ。

インスタレーション
「Trading Garden」森永泰弘 + Honda Uni-Cub

ヘッドセットをしてHonda Uni-Cubに乗ると、アークヒルズが昭和のころのかつての「麻布谷町」へとタイムスリップ。かつての六本木界隈を忍ばせる昭和の生活空間のサウンド、金魚売りや豆腐売りやチンドン屋の声を、実際の外音と共存させながら聴くことで、都市における聴覚文化を考える音のAR作品「Trading Garden 市場の庭」。サウンドデザイナーの森永泰弘とホンダの未来モビリティの邂逅から生み出された、体験型タイムトリップだ。

日時:4月28日(木)・29日(金)
場所:アーク・カラヤン広場内
料金:無料終了しました

レクチャー
「気鋭のサウンドデザイナーが語るフィールドレコーディングの魔法と『音の旅』」

ディープアジアを経巡り、現地に残された数多くの貴重な「サウンド遺産」をフィールドレコーディング=採集してきた森永泰弘。音を通して世界の「未知」を探求し続ける森永が明かす、旅と記憶と音楽と、記述の方法としての「フィールドレコーディング」の可能性。

スピーカー:森永泰弘
日時:4月29日 12:00〜 (50分)
場所:アークヒルズカフェ
料金:有料(1日券3,500円)終了しました

INFORMATION

2016/4/28・29開催:「SOUND & CITY」

未来のTOKYOを「音」というテーマを通して体感する複合イヴェント「SOUND & CITY」。『WIRED』日本版とRizomatiks、そしてTechShop Tokyoのプロデュースで、2016年4月28(木)〜29(金)にアークヒルズで開催。tofubeats、和田永などのアーティストとともに、BeatsのプレジデントやVESTAXの創業者らが登場する新しいタイプの複合イヴェント。イヴェントの内容および当日の盛り上がりをお伝えするレポートについては、こちらより