「水曜どうでしょう」藤村忠寿が酒を飲みながらおじさんたちに絵本を読み聞かせるぞぉ〜

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「夜空に うかぶ ちいさな ちいさな ものがたり。──最初のところだよ。みんな、本を開いて絵を見てていいんだよ」
「トマト色の太陽が 金の魚をひきつれて 西の森に 帰るころ──金の魚ってわかるかい? 俺も意味がわかんない。トマト色の太陽なんだねぇ」

4月22日夜、「水曜どうでしょう」の”藤やん”こと、藤村忠寿ディレクターが絵本の読み聞かせを行うイベント「ヒゲと絵本」が都内で開催された。といっても、読み聞かせる相手は子どもではなく、大人。”オヤジのオヤジによるオヤジのための絵本読み聞かせ”だという。


ワイングラスを片手にガハハと笑い、グイグイ飲む藤村D。ワーワーしゃべり、またグイッとワインを飲む。豪快すぎる読み聞かせイベントが始まった。

なぜ、藤やんが絵本を読み聞かせるのか


登壇者は藤村忠寿ディレクター、絵本「ねむり妖精ウィックル」を手がけたイラストレーターユニット「r2」(下川恵・片山明子)、絵本の主人公である妖精ウィックル。藤やんと絵本、一見するとあまり関係がなさそうな両者を結びつけたのはFacebookだったとか。


藤村 「昨年12月にね、Facebookなるものを始めたんですよ。”水曜どうでしょう”のサイトのシステムがあまりに古くて、会社のパソコンでしか打ち込めないものですから。そしたらね、この下川さんからメッセ-ジが来まして。かなり早い時期でしたね。一番最初の”ご相談”だったかもしれない」
絵本なのに、読み聞かせる相手はおっさん。風変わりなコンセプトに興味を持ち、藤村Dは、R2の事務所を訪ねる。

藤村 「会ってみたら、見るからに”いい人”なんですよ。金儲けはできなさそうだけど、どう見ても悪い人ではない。だから、やってもいいかなって」
下川 「初めて会った時も、すでに藤村さんは飲んでらして」
藤村 「そうだっけ?」
下川 「緊張して、いろいろプレゼン資料も用意してたんです。でも、1時間ぐらい何もしゃべらせてもらえなくて……ずっと『いいねぇ〜!』って」
藤村 「ああ! このR2という人たちは、毎日1枚ずつFacebookにイラストをアップしてるんですよ。それがすごく良くてね。だから、それを熱心に語ったんだろうな。絵がね、すごく良いんです。『R2』で検索すると、スバルの車とか、スターウォーズのR2D2ばかり出てきちゃうんで、ぜひ『R2 絵本』で検索していただくといいですね。ちょっと暗くて、落ち着くんですよ」


”どうでしょう”史上、最凶の「眠れない夜」


絵本「ねむり妖精ウィックル」にはその名の通り、睡眠をつかさどるキャラクターが登場する。ストーリーにちなんで、”眠り”にまつわる「水曜どうでしょう」の思い出も語られた。

藤村 「ロケの最中は、あまり寝てないんです。少なくとも俺は、昼間は絶対寝ません。大泉に”マシーン”と呼ばれてたぐらい、一度運転を始めたら、何千キロでもずっと運転できる。大泉はよく寝てたけどね。嬉野さんもよく寝る。ミスターさんはね、意外と寝てない。よく腕を組んで、目をつぶってるけど、あれ暗いだけですから。俺らが『鈴井さん、寝たねぇ〜』って言ってるだけ。アレ、ホントは起きてるんですよ。でも、俺たちの会話を聞いて、ここは寝たフリをしたほうがいいんだなと思ってる。そのうち良きタイミングで起きてくる」


”眠れない夜といえば……”と、藤村Dが挙げたのは「マレーシアジャングル探検」(1998年放送)。ジャングル内にある”ブンブン”と呼ばれる動物観察小屋に宿泊。あまりに過酷な環境に「拷問だ。これは拷問だ」「これはなんだ……観察の刑か」と、大泉洋がひたすら嘆く。深夜、暗闇の中に”光る目”を見つけ、「トラだ!」と大騒ぎになった後、「シカでした」(嬉野D)の名言を生んだあの旅だ。

藤村 「”一番頼りになる男は誰なのか”が問われる場面でしたね。女性に聞いてみたい。嬉野さんなんて一番頼りにならないでしょう。てめぇでカメラ回しながら、てめぇで騒いでるわけです。で、『シカでした』ですからねぇ。女性からすると鈴井貴之ってことになるのかもしれませんけど、バリケードって言っても、あのペラペラの布団ですよ(※)。俺から言わせると、俺か大泉がいいと思いますよ。ただ、アイツは面白みがない。俺には『火だ!』とライターを取り出す遊び心がある。大泉は『だから! トラ、どこよ!!』って言ってるだけですからね。危機感はあるけど、それはお前の役割じゃないだろうと」

※「小屋のすぐ近くにトラがいるかもしれない(でも、真っ暗闇で周囲の状況は確認できない)」と緊迫感が高まる中、ミスターこと鈴井貴之は「沈着冷静に!」と繰り返しながら、ふにゃふにゃのマットでバリケードを作っていた。

藤村 「あの夜はホント眠れなかった。大興奮ですよ。俺の場合は『いいものが撮れた! マレーシア企画大成功!!』って興奮ですけど」
下川 「嬉野さんも寝てなかった?」
藤村 「あの人は寝てたんじゃない。嬉野さんが寝られないってほとんどない。これまで数え切れないぐらい、同じ部屋で寝泊まりしてるけど、7:3であの人が先に寝てますよ!」


藤やんの”絵本読み聞かせ”は解説ナレーション付き


そして始まった、読み聞かせ。藤村Dが情感たっぷりに読みあげていく。さらに、一節ごとに解説をはさみ、盛り上げる。

「”すみ色”っていうのは、黒っぽいんだろうね」
「”しみだしていきました”なんてのはさ、大人の表現だぜ」
「”太陽をねぎらう”なんて言葉知らないだろう? 大人はよくねぎらうんだよ」
「こいつらが、何か仕事をするんだね。何するんだろう?」
「ヘンな鳥みたいなやつが出てきたぞ!」


藤村D曰く、自分の子ども相手でも、同じスタイル。「ずっと説明しちゃうんだよね」と語る。絵本の読み聞かせもやっぱり藤やん節は健在で、参加者は大喜び。藤村Dはワインをグイッと飲み干すと、トーク再開した

「読み聞かせっていっても、絵本は短いよね。やっぱ、真田丸だな。それなら2〜3時間いけるだろう」
「『下町ロケット』もありだな。安田さんの役も全部俺がやるんだよ。『部長ー!!!!』とかね。おっさんが本だけで熱くなる。いいねぇ〜!」

しゃべり出したら止まらない。ポンポン話題が飛びすぎて、どこからどう見ても”酔っ払って楽しくなっちゃったおじさん”だが、実は「読み聞かせ」「眠り」といったキーワードはしっかり押さえられている。ガハハと笑い、くだらない話をしながら、”いい話”もサラリと混ぜこむ。匠の技、プロの犯行なんである。


藤村Dの独特な抑揚と絶妙な間は、どうにもクセになる。原稿を書くために「マレーシアジャングル探検」を見返したら、これがまた面白くてどうしようもない。ゲラゲラ笑っているうちに、朝。大変マズい。連休直前のこの時期に、”どうでしょう”熱が再燃してどうするのか。次は「ジャングル・リベンジ」か、ミスターが寝たフリをしていたらしい「アメリカ合衆国横断」か。いずれにしても、眠れぬ夜を過ごすことになりそうです。
(島影真奈美)