「フリースタイルダンジョン」というテレビ番組をご存知でしょうか? ラッパーが即興ラップでバトルを繰り広げるこの番組を、メルマガ『お先に、青二才します。』の著者・三沢文也さんが大絶賛。三沢さん曰く「ネットオタクにこそオススメしたい番組」とのことですが、むしろ真逆にさえ思えるネットオタクとラッパー、いったいなぜオススメなんでしょうか?

むしろ、ネットオタクにこそ「フリースタイルダンジョン」をオススメしたい

ヒップホップとネット(特にテキスト文化)は、一見すると「ヤンキー」と「オタク」だから真逆じゃん? でも、両方とも「コテコテ」な人はやってることが近いから、オススメしたい。

しかも、ネットオタクがしてることを、ちゃんと表舞台に出てきても大丈夫なルックスを整えたマッチョなりイカツイやつが、「即興」でやるからかっこいいんだよな!

そもそもフリースタイルダンジョンってなんぞい?

ざっくり言うと、「即興ラップのバトルをして、審査員がどっちが勝っていたかを判定する」という深夜番組。

ラップのうまさ…と説明にはあるけど、相手とのバトルだから口喧嘩的な側面も入る。リズム感・韻を踏む上手さだけではなく、相手のミスやディスれる部分を見つけてディスったり、逆にうまい所を褒めながらも上乗せしたり…と言った駆け引きをリズムに乗せて歌い上げる。

特に、すごい回はDOTAMAさんの回と…

 般若VS焚巻の回

この2つだけでもいいので、見てみてください(2つだけみたら気になって、他も見たくなるんだけどね)。

内輪ネタの心得や最低限度の尊敬がないとできない対決文化

お互いにそれなりには活動してきたラッパー同士の対決だから、「5年来の因縁の対決」とか、「賞金を持って返って親孝行」とか、「一週間前にセッションした間柄で、相手が体が弱いのもよくしってるから一緒に座ってラップをしよう」みたいなストーリーを知った上で、ラップに持ち込んだり、上乗せして歌ったりする。

この辺が、曲の中での高度な駆け引き以外のストーリー性を出していたり、単なる罵り合い(では終わらず、お互いの理解につながっていることで)友情や愛情が感じられて感動できる。

この辺が「ライブハウスの空気」とか「ヒップホップ好きで」見たいな人から見るとそんなに新鮮じゃないのかも知れないが…ヒップホップに疎い僕にとっては新鮮に、いや親近感を持って受け入れられた部分だった。

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正直言うと「怖くてダサい」イメージのヤンキー文化としてのヒップホップ

日本語のラップ/ヒップホップって、遠目に見てると「腕組んでるラーメン屋」と似たようなカテゴリだと思ってたところがある。

最近は「ロキノン」的なものが死んじゃったから、対比するものが減っちゃったけど…00年代に話題になったヒップホップ系のアーティストはなんか意識高いんですよ。

友達とか、家族とか、ありがとうとか直に歌っちゃって、それがもう…寒イボ。

それも、比喩に包まず、イカツイ男が同じような「the・ラッパー」って格好して歌うのをみて「マッチョっすね」「ナルシっぽいっすね」という印象を受ける。

ただ、これはものすごく不敬なことでもある。

ブログの世界で置き換えれば、「はあちゅう、イケダハヤト、やまもといちろうぐらいしかブロガー知らないけど、どれもこれも胡散臭いからいいイメージない」と言ってるようなもんなわけだ…。

アレは出版社やテレビ局が好きなブロガーがこゲスで手ぬるい奴ばっかなだけで、何万人いるブロガーの中でも変わった種類の人。

はっきり言わせろ?

テレビ局も、出版社も(最近の、「ライターの個人的な人気の上であぐらをかこうとしてるWebメディアの編集」も含めて)、自分達でモノ作れないから人に頼ってるクソ野郎が選んだものなんか本家本流を勝ち抜いた人間よりも面白いわけないじゃん。

ブロガーもラッパーもそれぞれ、ネタ好きな人が練りに練りこんできた文化なんだから本家本流の人間は「放送できない」だけで、面白くないって事は断じてないのよ。

フリースタイルダンジョンという番組の良さは、「テレビ局が好きなラッパーのイメージの押し付け」をかなり削って、ライブ感や生なラッパーを映そうとしてるところ。

だから、荒削りでテレビ映えしないラッパーが出てきたり、ラッパー同士(界隈)の内輪ネタがガッツリ出てくるけど…その辺の雑味がいい。

高度なものだと双方なキャラが立つけど、うまいやつ同士・尊敬しあってる同士がやらないとテクニカルな口喧嘩/早口になっちゃうそのアバウトさが好きなんです。 

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ブログにもあるんだよ、「トラックバック」って文化が!

ラッパー同士がディスや対決やお互いのことを歌にする文化を見てて感じたのは

「これ、はてなブロガーで言えば、トラックバックによるプロレスだよね?」

と親近感を感じた。

ラップと違って面と向かって即興をするわけではないが、ブログにも「俺はこう思う」という記事に対して「いやいや、そうじゃないでしょ」と他人のネタから手紙を受け取っては繋いでいく文化がある。

そして、ラッパーほど明確ではないが、それをオーディエンスが投票して勝ち負けをつける「はてなブックマーク」というサイトがある。

この辺のやり取りをはてな内では感情を相手にぶつけてくことを「くねくね」、特定の相手とやり取りが続くと「プロレス」オンライン上で「ディスる」ことを「手斧を投げる」と言って、1つの文化を形成している(それも最近とかじゃなくて、10年ぐらい前からある、ブロガー文化の伝統的な内輪揉めの様式だ)。

最近、僕が絡んだ奴だと「メディアクリエイター論争」というのがある。

まず、僕が昔のことを全然知らないまま「ブロガーつまんね」とかリアルの場で言った人に、「お前らは何もわかっちゃいねー」みたいな記事を書き、

それを見た、「ブロガーつまんねー」って言った人が「お前なんか相手にしてねーぜ」としかサラッと俺に触れないようにしながらも、「これからの時代メディアクリエイターッスよ」と書くと、後はもみくちゃ。

若者はメディアクリエイターに反対な人をオッサン呼ばわりで自分の立場を主張。

年配のブロガー達は若者をスパーンとひっぱたくような記事を返す。

さらには、この揉め事に乗じてネタを披露するものまで出てくる。

例: 銭湯で自分のメディアクリエイターを隠すのか隠さないのか

ブロガーってむしろ、お金儲けとか、テレビに出るとか、新しいライフスタイルを提示するとかそんなもんじゃないんですよ。
こういうくだらない内輪揉めのために凝った文章が書けるのがブロガーなんです。

くだらないことを書いているから「どうせごく一部だろ」と思われるかもしれませんが、おっさん二人に関してはブログで本も出してます。

この中の登場人物はほぼ全員10万PV以上、ブログの購読者で言っても1000人超えてる奴が半数以上です。(僕も本以外は該当します)

この辺の内輪揉めだけならどの界隈もやってること。

しかし、ラッパーとブロガーが近いと思ったのは「自分のリズム・文体で返事を返すため、人々のやり取りを見てるだけで、違うリズムを行き来する」というものだ。

ラッパーにも、

「リズム通り歌えてる人」

「早口でまくし立てる人」

「リズム自体が外れててそんなにうまくない人」

がいる。あとは韻を踏めてるかどうかとかね。

これはブログも同じで、

「感情がしっかり乗ってる文章を読み物として書ける人」

「他の書類を書くような感覚でしか書けぬ人」

「学者っぽく正確だけど、固くて読みにくい文章」

を書くやつがいる。

ラップバトルの勝敗にリズムが影響するように、ブログバトルでは文体が影響してくる。粗雑な口喧嘩のようでいて、高度なブログバトルはタイトル釣りによるキャッチコピーバトルであり、文体バトルであり、キュレーションバトルでもある。

下調べして知識や相手の過去の失態で攻める「キュレーションバトル」なところはどちらかと言うと学者文化、オタク文化、モヒカン族の文化の影響が強い。

しかし、ブログ独自のバトルであるタイトルで指示を集めていくキャッチコピーバトルや、中身の文章で飲み込んでいく文体のバトルの方は、ヒップホップの文化圏に近いものを感じた。

「ブログの中にあるものをもっとスピード感や芸術性重視でやるとこうなるのか」

というある種の進化形を見せていただいた気がした。

…というわけで、後半のようなトラックバック文化とか、インターネット上のコンテクスト文化が大好きなヤツは、フリースタイルダンジョンを見ましょう♪

「ここまで、俺達と似てることをやってるのにかっこ良くできるのか!」と感動もするし、新しい可能性を感じますから!

image by: Shutterstock.com

 

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著者/三沢文也
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出典元:まぐまぐニュース!