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 グローバル化への対応が求められる中、マーケターにとって英語を話すシーンや機会がこれから間違いなく増えてくる。英語での対応はハードルが高いように聞こえるが、マーケティングにおいて、メールやプレゼン、交渉の際に使う英語は、実はとても限られている。シンプルな言葉の組み合わせで、おおよそのことを表現できるのだ。本コラムでは、中高英語の基礎力を持っている人を対象に、マーケティングの現場で使える英語活用のヒントを数回にわたって紹介していく。

■英語が苦手でも、最初から弱みを見せない

 “I am sorry, my English is not very good.”

 海外ゲストを前にすると、英語に不慣れな自分をかばうように、日本人が口にするお決まりのフレーズだ。ミーティング開始前やプレゼンテーションのシーンで、このセリフを耳にすることは少なくない。皆さんはこのセリフを聞いたり、使ったりした経験はないだろうか?

 自分の英語のつたなさを伝えることは(実際にそうであっても)会話においてプラスにならない。英語圏の人は、英語を話せないという感覚を持ち合わせていないため、何を期待されているのかわからないのだ。

 大卒の人であれば、中高大と合わせて平均11年ほど英語教育に触れてきている。だが、日本の英語教育には問題があるといわれ、英語に苦手意識を持っている人は少なくない。常に新しい勉強法や書籍が登場するが、この状況はあまり改善しない。日本人の英語力ランキングは、70か国中30位という結果だ(EF英語能力指数より)。

 今、マーケティングの仕事においては、どんどん海外から新しい手法や技術が入ってきている。マーケターはインバウンドへの対応を求められるし、日本でのマーケティングカンファレンスも英語で行われる状況になってきた。「英語は苦手です」など、悠長なことはもう言えない。

■英語を話せるようになる近道はあるのか?

 私は外資系企業に勤め、海外のクラウドソフトウェアを日本で展開するマーケティング責任者として仕事をしている。新しいマーケティング技術を日本へ広めるために、海外チームとの交渉、メール、会議、プレゼンテーションなどのシーンで日常的に英語を使う。

 例えば、日本で製品をローンチするためのイベントを行う際には、ゲストスピーカーの誘致を交渉する。当然、イベント予算も海外から獲得する必要があるので、予算の必要性を主張して、日本で実現したい状況を勝ち取らなければならない。

 英語は日常生活の一部となっている私だが、実はビジネスの現場で伝わる英語を駆使できるようになるまで苦労した。高校時代の留学経験もあり、もともと日常会話や読み書きはできた。しかし、なぜ英単語やリスニング、スピーキングの基礎があっても、うまくビジネスの会話を推進できないのかと、悩んだ時期があった。

 ところが、あるルールを理解したところから、劇的に生きた英語を扱えるようになった。今ではその基本的なルールに則り、日々海外チームとのやりとりをしている。こちらの意図した通りに海外チームからのサポートを取りつけて、日本でより良い状況をつくれるようになっている。

 では、英語を話す際のルールや重要なポイントは何なのだろう?

■言葉に主張という「力」を持たせよう

 ビジネスで英語を使うルールを、一言で表現してみよう。

 ビジネスで英語を話すルールは、“主張”を伝え、それを通すことにある。その結果、今の状態“A”を、望ましい“B”の状態にする。とてもシンプルだ。主張というのは、例えば、先に述べた「予算が欲しい」という訴えや、「このキャンペーンをいつやります」という状況を正しく伝える力だ。

 会話では、結論となる主張から入り、主張をサポートするためのいつかの事実や理由、アイディアを伝えていく。以下に会話の流れのイメージを紹介しよう。

あなた:「 製品のローンチイベントを4月に実施するために、5万ドルの追加予算が欲しいんです」
─ We are requesting an additional $50K budget to run the product launch event in this April.

相手:「なぜそのイベントを行う必要があって、予算の根拠はなんですか?」
─ What is that event for and why is that much needed?

あなた:「4月は日本の会社における年度の始まりなので、タイミングがいいのです。また、予算に対する10倍の成果を出せる見込みです」
─ This is the best timing to have the event since most domestic companies' new FY will be starting in April. With this budget, we expect to generate 10 x return on the budget amount.

相手:「なるほど、必要性はわかりました。それでは検討してみましょう」
─ OK, it sounds reasonable. We will get back to you with the answer.

あなた: 「 ありがとうございます」
─ Thank you so much.

 もちろん前提として、会話の相手が予算を提供してくれる立場にあることはいうまでもない。

 会話には、まず〇〇したい、〇〇して欲しい、〇〇をやる必要がある等の「主張」が存在する。さらに、その主張をサポートする理由やアイディアがあり、こちらの意図を体系的に伝えていく。

 英語を話す意味は、予算が必要であればそれを勝ち取ること。製品に関する詳しい情報が必要なら、相手に情報を提供してもらう。つまり、今の状況を望ましい状態に変えるために、英語は手段としてその橋渡しをしてくれる道具となる。

 このように、ビジネスにおける英語は「こうして欲しい」という要望を相手にダイレクトに伝えて、望ましい状況を形作っていくために使う。日本語でもビジネスにおいて求められることは同じだが、英語でのアプローチを学校では教えてくれないので、いざそれを英語で表現するとなると、とまどってしまうのである。

加藤 希尊[著]