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本稿は前編に続き、今年3月に米国サンフランシスコで開催されたカンファレンス「MarTech USA 2016」で発表されたMarketing Technology Landscapeや講演内容を基に、以前執筆した2016年のテクノロジートレンドを予測した記事で取り上げたアドテクノロジー(以降、アドテク)とマーケティングテクノロジー(以降、マーテク)の融合に関して、アップデートを行う。

○アドテクとマーテクの融合

融合(Convergence)という言葉には、ある領域を接点としてそこから徐々に一体化が進んでいく意味が含まれている。では、どこから融合が進んでいくのだろうか。

最新版のMarketing Technology Landscapeを見ると、アドテクは「Advertising & Promotion」に分類され、1つのクラスタとして独立している。そして、このクラスタに隣接しているのが「Content & Experience」である。

これまでのマーケティング部門が、ブランド価値を高めるために最も投資してきたのは広告だが、マーケティングテクノロジーの発展に伴い、適切な顧客エクスペリエンスの提供に寄与するテクノロジーへの投資増加が進んでいる。まさにその顧客エクスペリエンス関係のテクノロジー群が分類されているのが「Content & Experience」である。

「Content & Experience」が「Advertising & Promotion」の隣に配置されていることから見ても、このクラスタが2つのテクノロジーの融合の鍵になりそうだ。ただし、前編でも述べたとおり、このクラスタは100以上のソリューションを抱える分野が「Marketing Automation & Campaign/Lead Management(161)」「Content Marketing(160)」をはじめ、5つもある大激戦区である。

さらに絞り込んだ場合、どのテクノロジー領域が鍵となるかについて、カンファレンス主催者のScott Brinker氏は、融合の焦点となっている分野は「Optimization, Personalization & Testing(135)」だと述べていた(図1)。

○マーテクへのシフトを牽引する変化

Brinker氏と共通する意見をもう1つ紹介しよう。「アドテクとマーテクの衝突」をテーマとするセッションに登壇したSimulmediaの創業者兼CEOのDave Morgan氏は、自身のセッションの中で「マーテクはアドテクを飲み込もうとしている。アドテクからマーテクへのシフトは徐々に起こり、ある日を境に急激に進行する」と過激な見解を述べた(図2)。

Morgan氏は図2のスライドについて、「まず、施策の可視化、分析、実行、評価はオーディエンス単位ではなく、個人単位で可能になる。次に、施策の評価測定は売上金額など、よりビジネス成果に直結した指標を基に行うことが可能になる。さらにテクノロジーを用いれば、データ分析の外部委託は必要なくなる。最後に、テクノロジーがチャネル間、企業同士のデジタルインテグレーションを加速化する」と説明していた。

最初のドライバーとして挙げられた「People-Based」は、Brinker氏が融合が始まる領域として指摘した「Optimization, Personalization & Testing」分野のテクノロジーと対応しており、「Content & Experience」クラスタにおけるテクノロジーソリューションの多さを踏まえると興味深い一致である。

ちなみに、Morgan氏の経営するSimulmediaは、データやソフトウェアを活用し、伝統的なTVマーケティングの領域に成果保証の考え方を取り入れたマーケティング・テクノロジー・ベンダーである。

アドテクの第1人者としても知られるMorgan氏は、4つのドライバーがもたらす変革の結果、企業のマーケティング部門を取り巻く環境がどのように変わるかを予測した。

その予測の中で注目するべきは、第3のドライバーとして挙げられている「Directly-Measured」に関連した「中間事業者同士の取引が減少し、直接取引が増加することで、企業のマーケティングサプライチェーンが単純化される」であろう。一貫性のある顧客エクスペリエンスに注力した投資は、全マーケターがその場の意思決定で直接データを使えるようになる「民主化」をマーケティング部門にもたらす。そして、データやデータに基づくインサイトは、マーケターが売上を増やすための意思決定の材料になる。

○マーテクシフトで進むアウトソーシングからの転換

マーケティングは今やビジネス業績に直結する業務機能として、CEOを始めとする経営層に重要視されるようになってきた。先進的企業のマーケティング部門がデータやソフトウェアを業務に積極的に活用していけば、その企業はマーケティングを企業のコアコンピタンスに昇華させることができる。コアコンピタンスは、アウトソースできない企業の競争優位の源泉である。そうなると、これまでアウトソースしていたデータ分析のような業務はどんどん社内で行うようになるだろう。企業の外部への業務委託が減る反面、企業のマーケティング部門によるテクノロジーとデータへの直接的な投資が増えていくだろう。

マーケティング(広告・コミュニケーションを含む)が新しい顧客を創出する戦略的機能として経営層から期待されるならば、CMO以下マーケティング部門には、「共通言語」で施策の成果を測定し、経営層に理解してもらうアカウンタビリティ(説明責任)の遂行が求められる。そのためには、GRP(Gross Rating Point:延べ視聴率)、CPM(Cost Per Mille:インプレッション単価)、インプレッション数といった中間的な評価指標ではなく、売上、市場シェアのような評価指標で説明していくことになると、Morgan氏は予測していた。

(冨永裕子)