ファンからも選手仲間からも愛されるホフマンが悲願の4勝目(撮影:GettyImages)

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 最近のゴルフ界には、さまざまな種類のデータがあるのだが、そのおかげというか、そのせいというか、データが示す傾向に翻弄され続ける羽目になる選手もいる。
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 今季のチャーリー・ホフマンがそうだった。初日に好発進を切ったり、2日目、3日目にスコアを伸ばしたりというケースは何度もあり、そのたびに米ツアー4勝目が彼の頭をかすめた。だが、肝心の最終日に必ず崩れ、勝利を逃し続けてきた。
 米ツアーのデータによれば、ホフマンの最終日の平均スコアは初日より5.02打も悪い74.75で、この数字は2日目、3日目と比べても3打以上悪く、最終日の平均スコアランキングでは、驚くなかれ200位という低迷ぶりだった。
 これでは勝てるはずがない――。ホフマン自身、そう痛感させられ、なんとか最終日に崩れないようにしようと必死になった。だが、そう思えば思うほど、セルフプレッシャーでさらに崩れることの繰り返し。
「この1か月半ぐらいの間は、勝利へのドアをノックし続けてきた…」
 いくらノックしても、勝利への扉は開かない。そんな悔しい日々を繰り返してきた。
 しかし、テキサスオープン最終日のホフマンは、これまでのホフマンとは違っていた。首位から2打差の3位から最終ラウンドをスタートし、逆転して首位へ浮上。2位のパトリック・リードに1打差の単独首位で上がり3ホールを迎え、3ホールすべてでリードからプレッシャーをかけられながら、それを跳ね返した。
 16番、17番は、どちらもリードがバーディパットを外したおかげで、なんとかパーを拾ったホフマンが「助かった」という見方もある。だが、最終日に崩れるという有難くないデータとリードからかけられていた追撃のプレッシャー、その両方を感じながら、それでもパーセーブしたのは、ここ最近の最終日のホフマンには見られなかった執拗な粘りだった。
 そして18番のパー5が圧巻だった。ほぼ2オンに成功したリードがグリーンカラーの第3打を50センチに寄せてイージーバーディを奪い、とうとう首位に並んだ直後。ホフマンはバンカーからの第3打を寄せ切れず3メートルを残しながら、それを捻じ込み、力強いガッツポーズ。
「サンデーにいつも崩れて負けるのは、いい話ではなかったから…。今日は勝てて本当にうれしい。とうとうドアを開き、そして閉じることができた」
 39歳。米ツアー4勝目は、かくして達成された。
 同組だったビリー・ホーシェルがホフマンの勝利を我が事のように喜び、何度も肩を抱いて讃えていた。ツイッター上でもデービス・ラブなどツアー仲間たちが次々に「おめでとう」とツイートしていた。だが、思わず涙ぐんだホフマンに祝福を送っていたのはツアー仲間だけではなかった。
 カリフォルニア州サンディエゴ出身、UNLV(ネバダ・ラスベガス大学)卒業、現在もラスベガス在住のホフマンは、2000年にプロ転向後、自身の所縁の地、サンディエゴとラスベガスでジュニアを対象としたチャリティ活動を、高校時代のクラスメートだった妻と2人で開始した。夫婦でホフマン財団を創設し、地域のため、子供たちのために、精力的、献身的に活動を続けてきた。
 そんなホフマンには、根強いファンが大勢いる。ホフマンの顔のイラストを付したお揃いのTシャツ姿でホフマンのファン一行が試合会場に大挙してやってきたこともあった。もちろん、そのTシャツは現地でチャリティ販売され、収益は財団を通して寄付された。
 ゴミ処理と資源化を訴えかけるWM(ウエイストマネジメント)と契約していることもあり、大会初日にはグローブもシャツもシューズも全部、緑色で装おうなど、ホフマン自身、独自で環境保護活動も「微力だけど」と言いながらコツコツ行なってきた。
 決して派手ではないし、イケメンでもない。特筆されるほどのパワーヒッターでも小技の名手でもないけれど、地道な努力を積み上げてきた心優しい選手。そんなホフマンが最終日に崩れる負の連鎖をついに断ち切り、勝利をつかんだことを一緒に喜んでいる人は、想像以上にたくさんいる。
 そんな選手のそんな勝ち方に、米ゴルフ界の良さ、深さを感じさせられた。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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