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京都大学(京大)は4月22日、神経保護効果をもつ化合物「KUS(Kyoto University Substance)剤」が緑内障の進行を抑制することを、3種類のモデルマウスを用いて明らかにしたと発表した。

同成果は、京都大学大学院 医学研究科 池田華子准教授、吉村長久特命教授、生命科学研究科 垣塚彰教授、ダイトーケミックスらの研究グループによるもので、4月19日付けの英国科学誌「HELIYON」に掲載された。

緑内障は、網膜の神経節細胞と神経線維が変性・脱落することにより、視野障害・視力障害が進行する病気で、現状では、薬剤や手術治療によって眼圧を下げることが唯一の治療法となっている。しかし、眼圧を十分に下げるのが難しい例や、眼圧を十分に下げてもなお視野障害が進行する場合が少なくない。

同研究グループはこれまでに、VCPタンパク質のATP消費(ATPase活性)を抑制する化合物の探索を行い、KUS剤を新規合成してきた。また同時に、KUS剤がストレス下にある細胞を細胞死から守る効果を持つことを示している。今回の研究では、同化合物に緑内障の進行抑制効果があるかどうかを、3種のモデルマウスで検証した。

緑内障の発症要因のひとつは、興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸による神経の過剰興奮が網膜神経の細胞死を招くためだと考えられている。そこで、マウスの眼内にグルタミン酸と同じ神経興奮をもたらすNMDA4という物質を注射し、緑内障で観察される網膜神経節細胞障害を起こしたうえで、KUS剤を投与した。この結果、KUS剤を投与したマウスでは投与しなかった個体に比べ、網膜神経節細胞の減少が抑制されることがわかった。

続いて、内在性のグルタミン酸によって緑内障を発症するGLAST遺伝子のノックアウトマウスでKUS剤の効果を検証した。GLASTは、シナプス間隙のグルタミン酸を神経細胞に取り込む輸送体のことで、GLASTが減りシナプスでのグルタミン酸濃度が上がったままのノックアウトマウスでは神経興奮が過剰に起こる。KUS剤の投与がないマウスでは、網膜の神経節細胞の数や網膜の神経線維の数が減少し緑内障兆候が見られたが、KUS121を10カ月間投与したマウスでは、その減少が抑制されていた。

また、典型的なヒトの緑内障では、眼圧が高くなることで神経節細胞が障害を受けるため、眼圧が高くなるタイプの緑内障モデルマウス(DBA/2Jマウス)でも検証を行ったところ、KUS剤を投与していないマウスでは、眼圧上昇後しばらくすると、緑内障患者に特徴的な所見である視神経乳頭の陥凹の拡大が見られるが、KUS剤を投与したマウスにおいては、陥凹拡大が抑制されていることが確認できたという。

同研究グループは今後、治療法の存在しない急性の眼疾患に対して、KUS剤を眼内に注射し、安全性や神経保護効果を検討する医師主導治験を年内に開始できるように準備を進めていくとしている。

(周藤瞳美)