新しい職場ですぐ“馴染む”ための話法転換術
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第三回】

 自分や相手の入社や異動などで、新しいメンバーと仕事を始めた方も多いことでしょう。ソフトランディングという言葉があるように、新しい環境やメンバーと、スムースに打ち解けた人もいれば、残念ながらギクシャクしてしまった人もいるだろう。ギクシャクしてしまった人の中には、「自分は口下手だから」とか、「こういう性格なので」とか、「相手と打ち解けるにはいつも時間がかかるので」などという理由を挙げて、諦めてしまった方もいるに違いない。

 しかし、実は、新しいメンバーと打ち解けて、周囲から共感を得られるようになることは、難しいことではなく、とても簡単なスキルと、そのスキルを発揮する少しの勇気があれば、可能なことなのだ。そして、そのスキルは、特別な人でなくとも、ほとんどの方が、わずか1分間のセルフトレーニングで身に付けることができるのだ。

◆打ち解けることができない人のコミュニケーションには癖がある

 私が開催しているセミナーでは、年間100社からご依頼をいただき、能力開発プログラムの演習を提供している。企業や団体のメンバーだけに対して実施することもあれば、さまざまな企業からの参加者が一堂に介した場で演習することもある。特に後者の場合、なかには、なかなか他の会社から参加したメンバーと打ち解けられない人もいる。

 演習を繰り返していると、他のメンバーと打ち解けられない人には、共通してコミュニケーションの癖があることがわかった。それは、自分の身の回りの出来事を聞き手に伝えようとする時に、次のような前置きをしがちなのだ。

(1)自分は経験が浅いので、たいしたことないのですが……
⇒謙虚さのせいか、ネガティブな言い方をしてしまう

(2)自分のことではなくて、単に聞いた話なのですが……
⇒自分の気持ちではなくて、客観的に話そうとするためか、伝聞として話してしまう

(3)よくわかりませんが、一般的にはこう言われているのですが……
⇒厳密に話そうとするためか聞いた話というガード文言を付してしまう

(4)いつのことだったかわかりませんが、ずいぶん前のことですが……
⇒時期を特定しないで推測で話をしてしまう

(5)どのくらい利用されているか、わかりませんが……
⇒実績の見当をつけずに、曖昧な話にしてしまう

「謙虚で、誠実で、客観視していて、何が問題なのか」という声が聞こえてきそうだ。もちろんそのことは、否定しない。しかし、このようなネガティブ、伝聞、ガード、推測、曖昧な表現は、聞き手の気持ちを萎えさせてしまい、相手の関心度合を、格段に下げてしまうのだ。

 心当たりのある人は、自分では普通に話しているにもかかわらず、ある時から、「聞き手が興味を失ったように見える」「聞き手の意識が遠くへいってしまった」と感じたことがあるに違いない。その時の会話を思い出していただきたい。多くの場合に、相手のモチベーションを下げる話し方を、他の誰でもない自分自身がしてしまっているケースが多いのだ。

◆話法転換で聞き手の関心を高め周囲を引き付ける存在になれる

 しかし、心配はいらない。どんな人でも、わずか1分間のセルフトレーニングでその癖は直すことができる。それも、口下手だと自分で思っている人ほど、上達は間違いなく早いのだ。

 その方法とは、次のように言い換える方法だ。「経験が浅いから、たいしたことない」という表現ではなくて、「経験が浅いなりにも、すばらしい取り組みだったのですが!」と言い換えるのだ。「単に聞いた話」ではなく、「聞いてとても気になった話なのですが!」と表現する。「一般的にはこうだ」と淡々と伝えるのではなく、「実際にあったことですが!」とする。「推測」する部分は、できるだけ「特定」できるようにして、「曖昧」な部分は、できるだけ「明確」に表現できるようにするのだ。