「宮藤官九郎が社会派ドラマに挑戦する!」というふれこみでスタート前から注目を集めていた「ゆとりですがなにか」(日本テレビ系、毎週日曜10:30〜)。今夜の第2話放映の前に、第1話を振り返ってみたい。


ゆとりの岡田将生、板挟みの苦悩


岡田将生演じる坂間正和は大手食品会社に勤める29歳。1987年生まれのいわゆる「ゆとり第一世代」だ。しかし学生時代は塾に通わされていたし、リーマンショックで就職は楽ではなかったし……と、ゆとりという自覚はない。ある日同じ年の小学校教諭、山路(松坂桃李)に出会って悩みを打ち明け合い、ふたりしておっぱいパブのキャッチ、道上(柳楽優弥)にぼったくられたりするうち、仲良くなっていく。

29歳の二人が知り合うきっかけとなったのは「レンタルおじさん」の麻生(吉田鋼太郎)。まもなく30歳になる彼らの悩みを1時間いくらで聴く彼は、サーフィンをやったり、喫茶店のウェイトレスにきっちり色目を使ったりするバイタリティあふれる55歳。坂間に「これだからゆとりは」と吐き捨てる上司(手塚とおる)はおそらく40代。そして坂間が手を焼く後輩・山岸(太賀)は20代前半。脱ゆとり教育に移り変わる寸前の若きゆとり世代だ。坂間は上の世代と下の世代に挟まれ、苦悩多き日々を送っている。

思うように成績を上げられず、営業から店舗(居酒屋「鳥の民」)へと飛ばされた坂間。慣れない店舗の作業ではベテランバイトたちに呆れられるが、社員だから注意されることもない。同じ会社に勤める恋人、茜(安藤サクラ)は出世頭で、坂間の店舗に指導しにくる立場だ。少し前に一方的に電話番号を変えられていて、かなり微妙な関係。得意先を引き継いだ後輩の山岸は得意先を足で回ることを「泥仕事」と呼び、営業活動はほぼメールのみ。「あえて」「逆に」という接続詞を駆使して自分のやり方を正当化し、坂間の注意もスルー。
いっぽう、山路は教育実習生の佐倉(吉岡里帆)を迎える。普通に指導していたつもりが、彼女を泣かせてしまい周りから責められる山路。しかしその後、佐倉から告白されるという急展開を迎える。

ある日、山岸が発注ミスを起こしてしまう。その連絡を受けて焦る坂間だが、山岸は自分は動かず、電話やメールでの手配だけでなんとかしようとする。それに怒りを爆発させた坂間。「泥仕事させてやるよ!」と山岸を連れ、ミスで届かなかった鶏肉のダンボールを抱えて得意先に謝りに行く。結果的に間に合わなかったが、得意先には「来てくれて嬉しいよ」と言われ、山岸も「初めて怒られた気がします」と改心した様子。すっかり気を良くしていた坂間だが、次の朝、山岸はLINEで会社を辞めると一斉連絡をしていた──。

宮藤官九郎が描くシリアス


第1話を見る限り、これまでの宮藤ドラマのように細々としたギャグが散りばめられていたり、豪快に伏線が回収されたりといったことはない。実にまっすぐに29歳男子のあがく姿を描いているのだ。
だからといってどこにでもあるようなドラマだとも思えない。たとえば、店舗での坂間の所在なさは少路勇介、矢本悠馬といった大人計画メンバーのおかげでリアリティがありながらも重くなりすぎずに観ることができる。深刻に描こうと思えばどれだけでもできる題材だろう。しかし、日曜の夜に重すぎるものは誰だって観たくない。
演出の水田伸生は『Woman』や『MOTHER』など、深刻な物語で高い評価を得ているが、一方で宮藤脚本の『舞妓Haaaan!』などの監督でもある。『ゆとりですがなにか』は宮藤脚本、水田演出でシリアスにやってみるというチャレンジだろうが、悲惨な状況でもどこかカラッとしたこの感じは、なかなか貴重なドラマなのではないだろうか。

端々に見える宮藤ドラマらしさ


とはいえ、ねぎまのネギの長さを測るバイトリーダー(少路)の「長い、短い、長い、短い、超長い!」のテンポの良さとか、坂間の亡くなったばかりの父の仏壇の前に座る母(中田嘉子)の「泣いてると思った? ……焼きそば食べてた!」の飛び方は「やっぱり宮藤ドラマだ!」とつい嬉しくなってしまう。こういったシーンも今後楽しみだ。
楽しみといえば柳楽演じる道上の存在。第1話では「おっぱい」をひたすら連呼し、「悩んでる奴は高円寺なんか来ねえんだよ!」と後輩に説教するキャッチとして登場したが、彼が今後物語にどうからんでいくのか、全く想像がつかないだけに期待も高まる。
ちなみに、坂間は実家暮らしで、父の代から続く酒屋の次男坊。店は長男夫婦が継いでいる。山田太一が手がけた社会派ドラマの代表選手『ふぞろいの林檎たち』の主人公と同じなのは単純な小ネタだろうか、それとも宮藤の決意表明だろうか。
(釣木文恵 イラスト/小西りえこ)