京都市営のキャラなのに、なぜクラウドファンディング?



クラウドファンディング募集開始2時間で、最初の目標金額の100万円達成、現在、700万円以上集まっている成功企画が「【地下鉄に乗るっ】京都市営地下鉄の萌えキャラ「太秦萌」の、アニメを作るっ」だ。
かわいい、と人気の京都市営地下鉄のイメージキャラたちは、ライトノベルにもなっていて、京都のみならず全国区に人気がじわじわ拡大している。


「地下鉄に乗るっ」の活動の主たるものは、京都市営地下鉄のホームにキャラクターがデザインされたポスターを貼ることで地下鉄乗車促進に寄与することだ。
以前、地下鉄の職員が描いた素朴な絵柄の「太秦萌」というキャラクターを、京都のデザイン会社(株)GK京都のディレクションのもと、京都出身のプロのイラストレーター賀茂川がリファインして洗練させ、新たなキャンペーンがはじまったのが、2013年。
ポスターの絵柄がかわいいので目を引いたのはもちろんだが、人気に拍車をかけたのは、2014年に放送された2本のアニメCM。YouTubeで京都に住んでいる人以外も見ることができて一気にメジャー感が出た。1年間で再生回数はのべ15万回を超え、海外からも注目されるほどに(萌えキャラ@京都 って外国人に受けそう)。
このキャラが登場してから地下鉄利用者も増えているという。

そしてこのたび、短編アニメ-ションを作る企画が立ち上がった。
だが、京都市のイメージキャラがなぜクラウドファンディング? といぶかしく思うではないか。
そこで、アニメCMを制作し、今回の企画もプロデュースしているプロダクション「魚雷映蔵」 
の代表取締役の佐野リヨウタ(ヨが大文字なのはご本人のこだわり)さんに、話を聞いてみた。

「行政がクラウドファンディングを実施するのは難しいのですが、今回のアニメは、行政の手を離れ、民間の僕らが主体となって製作しています。というのは、最初に市営地下鉄の『地下鉄に乗るっ』のアニメCMは2本までと決まっていました。それが、思いがけず人気が出てきたので、このまま終了するのは惜しいと僕らは思いましたが、残念ながら次年度の予算にアニメCM制作を含む予定はありませんでした。そもそも京都市営地下鉄の赤字経営を少しでも黒字に近づけようとしたのが『地下鉄に乗るっ』企画ですから、新たなアニメを作る余裕はないんです。とはいえ、応援してくださるファンの方々に応えるためにもこのまま諦めたくなかった。それで僕らが製作を引き継ぐことにして、京都市交通局さんに特別に許可を頂き、クラウドファンディングを行うことになりました」

佐野さんは、アニメCMを作った時も率先してSNSを使って宣伝し、さらには、アニメCMの声優や主題歌の歌手によるイベントの司会を引き受けるなど積極的に企画にコミット。ファンと直に接することで、「地下鉄に乗るっ」のニーズの強さを実感したそうだ。
「200人キャパのステージに500人くらいのファンがつめかけたんですよ。声優さんが、オーディションの時は女子高生で初々しくて、彼女たちの成長を見守る楽しみも『地下鉄に乗るっ』ファンにはあると思います」(佐野さん)
だからこそクラウドファンディングにも700万円以上集まったわけだ。
締め切りは4月26日。最終的にどこまで資金が集まるか、気になる。


「地下鉄に乗るっ」アニメCM制作秘話


では、ここで既に発表されているアニメCM「地下鉄に乗るっ」のことを佐野さんに振り返ってもらおう。

「GK京都さんと賀茂川さんのコラボによって作り上げられた清潔で洗練されたハイグレードなイメージをそのままアニメCMに落とし込みたいと思いました。イメージは、テレビアニメの新番組予告編で、これから物語がはじまるのかな? という期待感を煽るものにしています」
苦労したのは、賀茂川の絵の再現。
「線や色遣いの繊細さをどう再現するか試行錯誤した結果、あまり立体的にしないで、あえて平面的にすることを選択しました。1枚絵の雰囲気を生かしながら、時々髪の毛などをふわりとさせることでアニメならではの動きの面白さを出しています」
ちなみに、同じく、賀茂川が描いている京都学園大学のイメージキャラ・太秦そのが出演するCMは3Dで、制作プロダクションによって表現の違いがあって面白い。

京都市営地下鉄のCMだから、 キャラの背景は地下鉄の駅がある場所というこだわりがある。とくに、第2弾は、四季の京都が背景。当然ながら実際に現地に行って写真を撮り、基本、忠実に背景画に起こしているが、「写真の画像は、アニメの背景としてそのまま起こすと意外と情報量が少なく感じるので、できるだけ情報量が多いアングルを探して撮影しています」と苦労を振り返る佐野さん。ちょうど桜満開の時期に撮影が間に合わず、木の背景に花を描いているそうだ。
次に制作される短編アニメはどんな風景でどんなふうにキャラが動くだろうか。気になる新作は、当初、5月29日「地下鉄の日」にお披露目の予定だったが、クラウドファンディングの予想以上の反響の高さに、予定よりも長い尺に変更し、発表も9月に開催される京まふ(京都国際まんが・アニメフェア)で行うと変更になった。集めた金額も目標の7倍を超えているだけに、最初の立ち上げから比べてけっこうハードルが高くなっていると思うが、果たしてどうなる?




なぜ、短編にこだわるのか?


これだけ注目されているのだから、ゆくゆくは長編アニメを作ってもいいのでは? と佐野さんに向けると、
「長編にしてしまうと、一気に消費されて、寿命が短くなってしまいます。長く続けることにこだわりたいんです」と言う。
ただ、今回の短編は、確固たる世界観を構築するため2時間もののプロットを想定し、そのストーリーに沿った内容になるようだ。「長編があるという前提のものにするつもりです」とのこと。
目標は「いつか全国放送のCMも作りたい」と、あくまで短編ベースを貫こうと考える佐野さん。
この手作り感覚が「地下鉄に乗るっ」の魅力のひとつかもしれない。
まずは、新作。
クラウドファンディングの締め切りは4月26日!


(木俣冬)