自分の皮膚のスペアを持てる日も近いか(画像は理化学研究所プレスリリースより「再生皮膚器官系から分離した再生毛包の皮下移植」)

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理化学研究所多細胞システム形成研究センターの辻孝氏と北里大学医学部の武田啓主任教授、佐藤明男特任教授、東北大学大学院歯学研究科の江草宏教授、株式会社オーガンテクノロジーズによる共同研究グループは、「iPS細胞(人工多能性幹細胞)」から毛が生えたり、汗をかいたりすることができる皮膚の再生に成功したと発表した。すでにマウスへ移植し、正常に機能することを確認しているという。

「iPS細胞」は、体細胞に特定の遺伝子を導入し、多様な細胞に分化できる能力と自己複製能力を持った細胞。

外傷や熱傷、先天性乏毛症皮膚といった皮膚疾患の治療法として、iPS細胞から培養した皮膚の移植が期待されているが、皮膚は、外側の「上皮層」「真皮層」「皮下脂肪層」の3層と、「毛包」「皮脂腺」「汗腺」の「皮膚付属器」からなる非常に複雑な三次元構造のため、これまで完全な再生は実現していない。

研究グループはマウスの歯肉細胞を使ってiPS細胞を培養し、「胚様体(EB)」と呼ばれる、細胞の発生初期の段階に似ている塊を作成。このEBを複数埋め込んだコラーゲンのゲルを、毛の生えないヌードマウスに移植したところ、天然の皮膚と同じ皮膚付属器を持つ皮膚が再生されていることがわかった。

さらに、別のマウスへ移植したところ、移植組織はがん化することなく生着し、周辺の組織と接続して、機能的な皮膚を再生したという。辻孝氏は、今回の成果から、これまで動物を用いていた医薬品開発の実験を、培養した皮膚で代替したり、皮膚移植をあきらめていた疾患の治療をすることができるとコメント。今後は、完全な皮膚の再生を目指していく。

発表は、2016年4月2日、米国科学振興協会のオープンアクセス誌「Science Advances」に掲載された。

参考文献
Bioengineering a 3D integumentary organ system from iPS cells using an in vivo transplantation model.
DOI: 10.1126/sciadv.1500887 PMID: 27051874

(Aging Style)