WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス

 今年8月に開催されるリオデジャネイロ五輪。同大会では、112年ぶりに正式種目に復活したゴルフも行なわれる。

 アメリカ代表に選出される可能性が高いジョーダン・スピース(22歳)やリッキー・ファウラー(27歳)、オーストラリアのジェイソン・デイ(28歳)に、アイルランド代表として出場予定のロリー・マキロイ(26歳/北アイルランド)らトップ選手の多くは、初の五輪出場に意欲を見せている。

「金メダルは、本物のアスリートの証だ」とスピースが言えば、デイは「まさか五輪選手になるなんて思ってもみなかった。開会式からすべて楽しみたい」と興奮気味に語る。

 一方で先日、ビジェイ・シン(53歳)が「リオ五輪には出場しない」と正式に表明した。シンは当初、ゴルフが五輪の競技として復活したことを歓迎し、「母国フィジーのためにも、とても楽しみしている」と話していたが、心変わりしたようだ。

「スケジュールがとても厳しい。今は、PGAツアーで自分のゴルフに集中したい。それに、ジカ熱も心配だ」

 そう語ったシンは、国際オリンピック委員会(IOC)にも不参加の旨を正式に通達。これをもって、シンの名前が「五輪ランキング」から消えた。

 五輪に出場しない意向を示しているのは、シンだけではない。スペインのミゲル・アンヘル・ヒメネス(52歳)もそのひとり。同国ではセルヒオ・ガルシア(36歳)、ラファエル・カブレラベロ(31歳)に次ぐ補欠1番目の選手だったが、五輪には出ないという。

 なぜ今、選手たちは欠場表明するのか。

 実は、五輪に出場する可能性のある選手は、5月6日以降、予備登録選手としてドーピング検査が実施され、IOCに常に居場所を報告する義務が発生する。これは、選手にとってかなりの負担だ。おそらく、それを回避したいのかもしれない。

 また、リオ五輪のゴルフ競技は、8月11日〜14日に開催される。そのため、今年は4つのメジャー大会がすべて、7月までに開催される特別なスケジュールが組まれている。シンが語るとおり、確かにとても忙しい夏になる。

 五輪とメジャータイトルを比べたら、やはり多くの選手はメジャーへの思い入れのほうが強い。五輪出場に前向きなファウラーでも、「メジャー勝利と金メダル? それは、迷わずメジャーに勝ちたい」と言う。「五輪は母国のために戦いたい」と強い決意を見せるマキロイにしても、「子どもの頃から夢見てきたのは、メジャーに勝つこと」と語る。

 そして、ついにオーストラリア代表として五輪ランキングに名を連ねていたアダム・スコット(35歳)までが、五輪に出場しない意向を発表した。

 そもそもスコットは、「五輪のために自分のスケジュール調整はしない。スケジュールが合わなければ、出場しない」と発言。その動向に注目が集まっていたが、結局、「この五輪の時期は、とても忙しくて欠場を決めた。オーストラリア代表の活躍を期待したい」とステートメントを出した。

「ゴルフは4大メジャーがあるので、五輪はエキシビションに過ぎない」と公言し、物議を醸したスコット。それでも、出場への期待がかかっていただけに、今回の決断は非常に残念に思う。このスコットの欠場を受けて、現時点ではマーク・リーシュマン(32歳)がオーストラリア代表へと繰り上がった。

 ここでもう一度考えたいのは、ゴルフが五輪競技になる意義だ。マスターズ委員会、全米ゴルフ協会、R&A(全英ゴルフ協会)、全米プロゴルフ協会、PGAツアー、そして世界中のツアーと団体が、なぜ一丸となって五輪競技復活を目指したのか。すべては、これからのゴルフの発展のためだ。

 五輪競技になれば、国から補助金が出るし、選手の育成にもつながる。さらに、ゴルフがスポーツとして知られていない国や地域でも、たくさんの人の目に触れることになるだろう。そうすれば、人口が10億人を超える中国やインドなどで、ゴルフ人口の増加につながるかもしれない。ゴルフ大国であるアメリカやイギリス、オーストラリアや日本での影響よりも、そうしたゴルフ途上国で多大な影響をもたらすことに大きな期待が寄せられている。

 現に、インド代表のアニルバン・ラヒリ(28歳)などは、母国でのゴルフ普及の起爆剤となるべく、五輪への意識が高く、そこでの活躍を誓う。

「ボクが五輪でメダルを獲れば、きっとインドですごいゴルフブームが起こると思う」

 五輪の選手出場枠は、60人。1カ国最大2名、5大陸で最低1名の出場権が保証されている。世界ランキング15位以内は、各国最大4名の選手が出場できるが、それに該当するのは現在のところ、アメリカだけ。つまり、およそ30におよぶ国と地域から選手が集まってくるので、決してメジャーのような一流プロの集まりではない。そこで華やかな戦いの舞台を作るには、トップ選手がそろって出場してこそ、だ。

 各選手には、義務とは言わないが、できる限り五輪に出場し、そこで素晴らしい戦いを見せてほしい。そう望むのは、あくまでもゴルフ界の今後の発展のため。それが、ゴルフに携わる多くの関係者の願いでもある。

 もちろんスピースやデイ、ファウラー、マキロイらは、そういう思いを持って金メダルを目指している。しかし反対に、シンの欠場によって出場国からフィジーの名前が消えてしまった。シンのプレーが見られないことよりも、フィジーでゴルフを広く知られる機会が失われてしまったことが、とても残念でならない。

武川玲子●文 text by Takekawa Reiko