不倫は悪か?乙武さん騒動を「障がい者と性」の専門家がふりかえる
 今年に入って、有名人の不倫騒動が頻発しています。特に乙武洋匡さんの不倫旅行報道は、彼がさわやか前向き青年だと思われていたことも相まって、大きな議論を呼びました。

 これだけ不倫ネタが尽きないのだから、なにか根本的な問題があるのでは……? そろそろ「不倫バッシング」をするだけではなく、不倫とはなんなのか、どうして不倫が起こるのかを考えてみようと思います。

◆乙武さんの不倫騒動は「ある意味で健全」

 今回はまず、乙武さんの不倫騒動について、『セックスと障害者』『はじめての不倫学』の著者である坂爪真吾さんにお話を聞いてみました。

 坂爪さんは、重度身体障がい者に対する射精介助サービス「一般社団法人ホワイトハンズ」の代表理事で、障がい者の性に現場で取り組んできました。

――乙武さん不倫騒動に、世間の反応は「不倫なんてひどい!」と叩く人と、少数ですが「障がいがあるのにモテてすごい」と感心する人もいました。坂爪さんはどう感じましたか?

坂爪:まず思ったのは、『どこにでもある話だな』と。乙武さんは不倫をした理由を『妻が母になり、夫婦らしさみたいなものが次第に失われていった』と言っていました。これって不倫の理由として、どこにでもある話ですよね。

――確かに、不倫をする男性のお決まりの文句です。

坂爪:乙武さんが障がい者だから、不倫することに特別な事情があったのではないかと考えがちですが、実はその理由は健常者となんら変わらないんです。

――障がい者だろうが健常者だろうが、不倫するヤツはする、ということですか。

坂爪:人間ですから、とうぜん健常者が抱く欲求は障がい者だって持っています。

 そうした性がタブー視される社会ではなくて、こういう事件がどんどん起こって『障がい者も健常者も同じじゃん』『普通のことじゃん』と捉えられるのは、ある意味、健全な社会になってきたということですよね。

 障がいのある人が性的に自立した社会になると、こういう事件が起こるようになるわけです。

――不倫問題が起きて「健全」というのも複雑な気持ちです。

坂爪:障がい者も失恋や不倫など、健常者と同じような悩みを味わう社会は、これこそ平等な社会です。本人にとっては大変かもしれませんが……。

 統計によると、身体障がい者のうち約60%は結婚しているんですよ。どんな人でも人間的魅力があればモテるし、結婚して子どもも持てるんです。

◆「障がい者がバッシングされた」ことの意味

――じゃあ、乙武さんが健常者の不倫と同じように叩かれたのも、「健全」なことかもしれないですね。

坂爪:ある意味で健全とも言えますね。

 でも、批判の方向がずれている気がするんです。

 たとえば『乙武さんの奥さんが謝るのはおかしい!』という意見が多くありましたが、奥さんが謝りたくて謝っているなら問題ないですよね。夫婦間のことは他人にはわからないですから。

 誰かに強制されたのなら問題ですが、自発的に謝っていたらしいので。

――奥さんの謝罪文が出た直後に、友人からブリブリ怒ってLINEメッセが届きました。週刊誌によると、謝罪は奥さんの意思でも、その文面は自民党が修正したということですが。

坂爪:まあ『夫の不倫は妻のせい』っていうのは保守的な発想ですよね。そこがツッコまれた理由でしょう。

 でも一方で、『障がい者を叩いちゃダメ』という雰囲気はなかったですね。そういう意味では健全とも言えますね。

――そうですね、「そんなに叩いちゃかわいそうだよ、障がい者なのに!」みたいな声はなかった。そもそも一般における障がい者のイメージを大きく変えたのが乙武さんだったわけですが。

◆不倫をなくすことは不可能

坂爪:だけど、乙武さんに限らず、不倫した個人をバッシングしても意味がないと思うんですよ。

――えっどうしてですか? 不倫する人は悪い人ですよ!

坂爪:確かに不倫はしないですめばベターですけど、そんなに特別なことではありませんよね。一夫一婦制が始まって以来、人類は不倫の問題と戦い続けてきていますが、いまだに解決法が発見されていません。おそらく不倫を根絶することは不可能なんですよ。

――それは衝撃です。でも坂爪さんの『はじめての不倫学』を拝読すると、データや論文から「不倫は誰でもしうる、よくあることだ」とわかります。よくあるからこそ、これだけ不倫騒動が続くんでしょうけど。

坂爪:だから僕は、不倫を『個人の問題』として叩くだけじゃなく、『社会の問題』として議論すべき』だと思うんです」

――どのような議論が必要なのでしょうか、それは次回詳しくお聴きしたいと思います。

<TEXT/和久井香菜子>