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日本小児科学会や日本産科婦人科学会らでつくる予防接種推進専門協議会などはこのほど、「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)接種推進に向けた関連学術団体の見解」を発表。「ワクチンの積極的な接種を推奨します」と呼びかけた。

○子宮頸がんの発症率は増加傾向

子宮頸がん予防ワクチンは2013年4月から法律に基づいて定期接種化されたが、有害事象の発生により厚生労働省が接種勧奨を一時中止としているもの(2013年6月)。協議会は、接種勧奨が中止されている2年半の間に「ワクチン接種による有害事象の実態把握と解析」「ワクチン接種後に生じた症状に対する報告体制と診療・相談体制の確立」「健康被害を受けた接種者に対する救済」などの対策が講じられたとして、「専門的な見地から、ワクチンの積極的な接種を勧奨する」と決定した。

学会はその根拠として3つの理由をあげている。1つは、同ワクチンにがん予防に対する「確固たる有効性」が示されていることだ。2016年1月現在、WHO加盟国の33.5%にあたる65カ国が同ワクチンを国の予防接種プログラムとして実施。導入された2007年からの3〜4年間で子宮頸がんの前がん病変の発生率が約50%減少していることが複数の国(オーストラリア、アメリカ、デンマーク、スコットランド)から報告されているという。一方、国内では、子宮頸がんによる死亡率が1995〜2005年で3.4%増、2005年〜2015年では5.9%増加すると予想されていて、増加傾向が加速しているとのことだ。

○副反応の発生率「接種者と一般集団で差がない」

2つ目の根拠としたのは、国内外で行われたワクチン接種による副反応に関しての再調査結果。国内の調査では、約890万回の接種のうち副反応の疑い報告が2,584人(のべ回数の0.03%)、そのうちの約90%が回復または軽快し通院不要になっている(未回復の人はのべ接種回数の約0.002%)。さらに欧州の健康当局、フランスなどの大規模な安全性プロファイルの再調査によれば、報道などで問題になっていた「CRPS: 複合性局所疼痛症候群」(外傷をきっかけとして慢性の痛みを生ずる原因不明の病気)や「POTS: 体位性規律性頻拍症候群」(寝た状態から起き上がった時などに立ちくらみや目まいが起きる)、自己免疫疾患の発生率は、ワクチン接種者と一般集団で差がないということがわかったという。

また、ワクチン接種後に生じた症状に対する診療体制・相談体制、専門機関が全国的に整備されたことも3つ目の理由としてあげている。診療の手引きも医療機関に配布され、「健康被害にあった人への救済も開始された」としている。

○接種勧奨の中止は「きわめて憂慮すべき事態」

最後に協議会は、「これ以上の本ワクチンの積極的接種勧奨の中止は、国内の女性が実質的にワクチンによるがん予防という恩恵をうけられないことになり、きわめて憂慮すべき事態と考えます。がん予防のために本ワクチンの接種を希望する方たちに対して、体制が整ったことを周知し、接種が受けやすい環境を整えるべきと考えます」とコメントしている。

協議会によれば、WHOもワクチン接種の積極的勧奨が差し控えられている日本の現状を憂慮しているという。一方で、たとえわずかであっても、接種者の中にはなんらかの健康被害で苦しんでいる人がいることも事実だ。今回、専門団体が発表した同見解について、国や社会全体はどのように考えるべきなのか。

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(横山茉紀)