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◆企業研修講師・原田まりるの「エニアグラムで考える対人関係」その2

 扱いにくい部下とどう付き合えばいいのか、という悩みはどの職場にもあるようだ。

 我が強すぎる、物分りが良くない、物事を先延ばしにするなど、さまざまな形の扱いにくさがあるが、部下を指導する際に一番厄介に感じるのは「何を考えているかわからない部下」との接し方ではないだろうか。というのも以前、研修でこのような相談を受けたことがあった。

◆おとなしいが不思議ちゃんな部下

 Aさんの直属の部下に一人、何を考えているのかわからない社員Bさんがいた。そのBさんはおとなしく勤勉であったが、ミーティングではよくわからないアイデアを持ってくることがあった。Aさんは、なぜ彼がそのようなアイデアを持ってくるのかに困惑することが多かったという。

 例えば、イベントポスターを制作する際にそのBさんは一生懸命創作活動に打ち込みはする。しかし、「なぜこうなった?」という規定のイメージとはズレた奇抜なデザインで仕上げてきたり、新しいサービス内容を考えるミーティングの際も「場のウケを狙っているのか?」と思ってしまうような、天然な発言を連発したりと、本人に悪気はないのだろうが何を考えているのかわからない不思議な言動が続くのである。

 あまりにそういったことが続いたのでAさんは「現実的じゃない」とそのBさん提案する意見を却下するようになった。するとBさんは元々気分のムラは激しいほうであったらしいのだが、この一件にひどく落ち込んでしまい、次第にお互いに苦手意識をもつ関係になってしまったということだった。

◆天然だが繊細なタイプ4・芸術家タイプの部下との接し方

 天然なのかなと思える不思議な言動、すぐに傷ついてしまう繊細さ、気分のムラ、創作に対しての一生懸命さを持ったこの部下Bさんに話を伺ってみるとエニアグラムのタイプ4・芸術家タイプだということがわかった。

 芸術家タイプは、周囲の人に「何を考えているのかわからない」という心象を与えやすい。芸術家タイプは、自分は周りの人と違う特別な存在であるという“劣等感”を持っているので、他人に自分のことは理解してもらえないという思い込みがある。また、平凡な意見を避ける個性派である。その他特徴としては、物事を大袈裟に受け止めやすく、感情の起伏が激しいので些細なことで深く傷つきやすい。自己表現の手段として創作活動に打ち込むという特徴も上げられる。

 芸術家タイプは自分の気持ちに正直であることをなによりも大切にしているので、周囲からみると理解不能な言動も多い。

 例えば、最近観た映画について人に話す時「◯◯を制作した監督の最新作で、火星が舞台になっているSFで主演は……」と事実関係を並べるのではなく「観終わったあとに胸がキュっと苦しくなるような、ワインを飲みながら観たい感じの映画」といったように自分が感じたそのままのイメージを言葉にするため、周囲からすると理解しにくいことがある。

 このような芸術家タイプとのコミュニケーションを円滑にするための要点は一つ、それは「気持ちの尊重」である。これは気分ムラを肯定しろという意味ではない。

 例えばAさんの例のように意図とは違う奇抜なデザインのポスターを提出してきた場合、「なぜこうなった?」と叱るのではなく「面白いね。どういうイメージをこれに込めたの?」と制作した際の気持ちを一度汲み取り、理解を示すという姿勢をみせると芸術家タイプは安心する。

 他人は自分のことを理解してくれないという思い込みがあるため、このように一度気持ちに歩み寄る姿勢を見せると、例え案が却下されたとしても「この人は自分のことを理解してくれているんだ」という信頼が生まれるのだ。

 気持ちをなによりも大切にしている芸術家タイプと接するには、当人のように気持ちを大切にする姿勢を見せることが一番有効である。尚、自分は芸術家タイプかもしれないと思う方は、物事を大袈裟に捉えようとする傾向があることを受け止め、感情を優先してやるべきことをないがしろにしないセルフコントロールを心がけることで、よりやりやすい環境が作られていくということを理解すると良いだろう。

<文/原田まりる Twitter ID:@HaraDA_MariRU>
85年生まれ。京都市出身。作家・哲学書ナビゲーター。高校時代より哲学書からさまざまな学びを得てきた。著書は、『私の体を鞭打つ言葉』(サンマーク出版)。元レースクイーン。男装ユニット「風男塾」の元メンバー。哲学、漫画、性格類型論(エニアグラム)についての執筆・講演を行う。ホームページ(https://haradamariru.amebaownd.com/)