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 アタラ合同会社が運営するメディア「Unyoo.jp」から、コラムやキーパーソンへのインタビュー記事をピックアップして紹介する本連載。今回は、アタラ 取締役 COOの有園氏による、大型案件獲得のコツを紹介するコラムの要約版です。

■サムラゴウチマモルに学ぶ大型案件獲得のコツ

 「有園さん、大型案件獲得の方法とかコツとか、そういうお題で勉強会をしていただけないでしょうか?」

 2年半ほど前に、ある広告代理店の人から依頼された。いわゆる、競合とかコンペとかいわれる提案やプレゼンで勝利する方法についての勉強会ということだった。「そんな方法があるなら、自分が教えて欲しい」と内心では思いつつも、せっかくの依頼なので引き受けることにした。

 そして、しばらく考えて思いついたタイトルが「サムラゴウチマモルに学ぶ大型案件獲得のコツ」だった。サムラゴウチマモルが当時はまだ話題になっていたので、良い題材になると思ったのだ。今回は、その勉強会で話した内容について、その骨子を紹介したい。

 ところで「大型案件」の規模だが、デジタルマーケティング業界だと、自分の経験では年間10億円以上であれば大型案件だと感じている。もちろん、年間で100億円以上のデジタル広告やデジタルマーケティング関連の費用を使っている企業があるのは知っているが、そういう場合は、おおむね、複数のブランドを持っている企業なので、個別ブランドごとの年間予算はデジタル広告だけで10億円規模以上であれば大型という感じではないだろうか。

 ちなみに、大型案件だろうと小さな仕事だろうと、仕事としては重要度は変わらない。どの仕事も同様に重要なのだが、勉強会のタイトルとして聴衆の興味を引くために、「大型案件」という言葉を使った。

■デジタルマーケティングコンサルタントの仕事

 詳細に入る前に、私が思うところを、簡単に説明しておきたい。私自身はデジタルマーケティングコンサルタントとして仕事をしている。仕事の中で多くの時間を割いているのは、直接契約しているクライアントへの提案業務や定例会関連業務、それから新規クライアントへの提案業務などだ。その他、自分自身の勉強のためにセミナーに参加したり、資料を調べたり、業務関連の書籍を読んだりするのが自分の仕事になっている。

 そのような仕事の中で、最も大事にしているのが新規クライアントへの提案業務だ。新規のクライアントへ提案をして仕事を獲得してこなければ、そもそも、自分の仕事がない。そのため、新規クライアントへの提案業務には、通常、最も時間と神経を割くことになる。この新規クライアントへの提案業務は、一人で行うこともあるし、広告代理店の人たちやパートナー企業の人たちから依頼を受けて共同提案を行うことも多い。

 私はデジタルマーケティングコンサルタントと名乗っている以上、デジタルマーケティング関連の提案業務やコンペで他の人たちと組んで仕事をするときには、負ける訳にはいかない、と意気込むことが多い。その理由は、仮にコンペで勝てなかったとしても、「良い提案だったので、機会があればまたご一緒したい」と言ってもらいたいからだ。この業界で仕事をしていく以上、最低でも次の仕事につながる種を蒔いておきたい。そういう気持ちと姿勢がおそらく影響して「大型案件獲得のコツ」というテーマでの勉強会依頼につながったのだと思う。

■ストーリーが人を惹きつける

 「サムラゴウチマモル」という単語をタイトルに入れた理由は何か?これも、もちろん、聴衆の興味を引くだろうという意図はある。が、しかし、それ以上に、あのサムラゴウチマモル現象で、自分自身が「あ、なんか、自分の仕事も似たようなことをやっているな」と感じて学んだことがあるからだ。

 私自身は、NHKスペシャル「魂の旋律〜音を失った作曲家〜」(2013年3月31日放送)を偶然見て、「なんかスゴイ人が出てきたなぁ」と感心していた。CDこそ買わなかったものの、新垣さんが登場してきて、なんとなく残念な感じは否めなかった。そして同時に、このサムラゴウチマモルは「CDを、あるいは、曲を売ってた訳ではないんだ!」と気付かされた。

 どのくらい意図があったかは知らないが、「耳がぜんぜん聞こえない作曲家が被爆地・広島県出身で《HIROSHIMA》という曲を作ったとしたら、そういう話なら、売れるんじゃないか?」というアイデアが浮かんだに違いない。そして、そのストーリーで売り込んでいったら、期待通りに売れて、NHKスペシャルにまでなってしまった。そして多くの人がそのアイデアとストーリーに感銘してCDを買い、曲を聴いた。曲そのものも、きっと良い曲だったのだとは思う。でも、このようなストーリー性がなかったら、あの曲は売れたのだろうか。

 このサムラゴウチマモル現象には、ちょっと騙されたと感じてしまう自分がいて、その自分自身がちょっと滑稽だったりする。つまり、自分に対しての、文字どおり、自虐的な笑いの種がある。同時に、世の中を欺いていた彼も滑稽だ。それぞれの現象の当事者が、滑稽、あるいは、ちょっと嘲笑の対象になる。「バレると思わなかったのかなぁ。バカだなー」と。つまり、我々から見て、他者に対しての、嘲笑い、軽い侮蔑的な笑いの種がある。そして、「やっぱり、人間、正直が一番だなぁ」といった教訓めいたものを我々は受け取ることになる。

 この「自分に対しての笑い」「他人に対しての笑い」、そして「教訓を得る」という構造があって、話題になりやすいのだと思う。話として面白いのだ。ストーリー性があると言っていい。このストーリー性があるということが、人を引き付ける。

有園 雄一[著]