どうやら、お口の健康を守ることは心臓を守ることにもつながるらしい。

 今年はじめ、「歯磨きと心血管疾患のリスク因子との関係」をテーマにした日本の調査研究が英国医学会誌のオープン・アクセス版に報告された。

 研究者らは、2004年1月〜10年6月の間に、聖路加国際病院予防センターで健康診断を受けた8万5866人(男性の割合は49.0%、平均年齢47歳)を対象に、自記入方式で日々の歯磨き習慣について質問。

「毎食後」「少なくとも1日1回」「1日1回未満」との回答に基づいて対象者を3群に分け、高血圧症や糖尿病、脂質異常症など心疾患リスクになる全身病との関連を調べた。解析に先立ち、BMI(体格指数)や喫煙、飲酒などの生活習慣の影響を排除している。

 その結果、歯磨きの習慣が「1日1回未満」群は、「毎食後」群よりも糖尿病の有病率が2.03倍高く、脂質異常症の有病率が1.5倍高いことが判明したのだ。その一方で、高血圧症や高尿酸血症、慢性腎臓病との関連は見いだせなかった。

 また改めて生活習慣と歯磨き習慣との関連を調べたところ、「毎食後」群に比べ、「少なくとも1日1回」「1日1回未満」群では、喫煙率や飲酒率が高く、BMIとメタボ健診で計測される腹囲径がより大きいことが判明している。

 糖尿病と歯に関しては、これまでの調査研究から、歯周病菌の毒素が歯肉から血管内に入り込むと、血糖値をコントロールするインスリンの作用を受ける分子の働きが鈍ることが分かっている。

 結果としてインスリンの効きが悪くなり、血糖値が上昇。2型糖尿病を引き起こしてしまうのだ。脂肪を分解する作用も抑えられるため、中性脂肪が増加し、脂質異常症も発症しやすくなる。

 研究者は「良い歯磨き習慣は、お口の健康だけでなく、糖尿病や脂質異常症といった全身性の疾患の予防に有用」と断言している。

 たかが歯磨き、されど歯磨き。この春は、生活習慣の是正に先行して、家族と一緒に歯磨き習慣を見直すのはどうでしょうか。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)