連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第2週「常子、はじめて祖母と対面す」第14話 4月19日(火)放送より。 
脚本:西田征史 演出:大原拓


お世話になった浜松の人たちと別れを惜しみ、東京へ向かう常子(高畑充希)たち。
見送りに来た級友に、面白いあだ名を思いついたら手紙を書くと言う常子。彼女に面白いあだ名つける才能があったことをすっかり忘れていた。
三姉妹のライバル・玉置三兄弟も、期待感もたせていたわりに、これで出番なしなのかー。染織会社が使う物干し台もずいぶん労力使って建てたであろうに、「まれ」みたいに後半も活用されることなく、これで見納めのようだ。ドラマ開始前、浜松が舞台とけっこう煽っていた印象だが、そこに小橋家の縁者がいないから、今後の関係は希薄であろう。
なんかいろいろあっさりと終了して、次は、東京、深川。材木問屋のある木場の街並のセットがとてもよく出来ている。いよいよここからドラマが本格化するようだ。
筆頭番頭・隈井栄太郎役の片岡鶴太郎、「青柳家そのもの」と表される女将さん・滝子役の大地真央と、アクの強い俳優によって、緊張感が出る。

狡いとこは狡い


ふと思ったのは、片岡鶴太郎のほうが、ふらふらとらえどころのない鉄郎のキャラに合ってそうだなということ。年齢的にないわけだが、向井理演じる鉄郎が、「さては、居場所を知るために来たのね」「困ったらせびりに来るつもりね」などと言われる調子のいい人物にあまり見えない。絶対的に善人に見えるのが向井理の長所だよなあ。
解釈としては、人生経験の少ない常子たちが彼の表面しか見ることができていないだけで、鉄郎は、常子たち一家の東京行を心配してついて来て、でもそんな素振りは照れくさくて見せないだけというのが妥当だろう。
ただ、鉄郎はそういう“実はすごくいい人”というだけではもったいない、狡いとこは狡い、でもどこか憎めないってことになり得る、すごくいいキャラの可能性をもっていると思うのだ。今後どういうふうに関わってくるかわからないが、西田征史と向井理は、これまで多くの作品を共に歩んでいるので(「あさイチ」で、最初の出会いを振り返り、向井は泣いていたくらいだ)、この役によって、作家としても俳優としても飛躍する可能性はある。ぜひとも面白くしてほしい。

とまあ、「とと姉ちゃん」は、期待値が高いのだ。ゆくゆく出て来る、カリスマ編集者・花森安治をモチーフにした花山伊左次(唐沢寿明)がどんなふうになるかとか、女が父(男)代わりになるという生き方とか、それから発展して、常子のモチーフになっている大橋鎭子は生涯独身だったが、朝ドラでついに生涯独身女性を描くのかとか、作家としての描きどころがいっぱいありそうで、それだけに描かれる前から期待値ばかりが上ってしまう。まるで大河ドラマの人気の歴史的登場人物の描き方に視聴者が異常なまでに期待するようなものだ。果たして西田がどれくらい描いてくれるか、それとも、ことごとく期待をはぐらかしていくのか。鉄郎の存在と合わせて、真面目に注目しております。
(木俣冬)