『ヒラリー・クリントンの言葉』かんき出版

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 日本でも連日報道されているアメリカ大統領選挙。とりわけ、ドナルド・トランプ共和党候補の過激な発言が目立ちますが、その矛先は当然ライバル候補にも向けられています。

 たとえば、こんな発言。

「夫を満足させられないヒラリーが、アメリカを満足させられると思うか?」

 これは、民主党候補者指名争いでトップを走るヒラリー・クリントン候補への口撃。かつて大統領在職中に不倫をした夫のビル・クリントン氏をやり玉に上げ、ヒラリー候補を揶揄しているわけですが、たった一言で相手を打ちのめすトランプ候補らしい発言といえます(「品位に欠けたコメント」ではありますが、それが多くの支持者を熱狂させているのは事実です)。

 ヒラリー候補にとっては、非常に"痛い"ところを突かれているわけですが、彼女は2009年に挙行された国務長官就任式で、そんな夫について次のようにコメントしています。

「長年にわたってありとあらゆる経験をさせてくれた夫には、それはもう感謝していますよ」

"ありとあらゆる経験"という非常に含みのある表現で、このようにウィットに富んだ発言を、国務長官就任式でやってのけたヒラリー候補。さすが米国初の女性大統領にもっとも近い人物と称されるだけのことはあります。

 本書『ヒラリー・クリントンの言葉』は、こうしたヒラリー候補の"名言"を収録。たとえば「保守かリベラルか」について、彼女は過去にこう言及しています。

「わたしを含め、安易な二分法から抜け出したいと思っている人は少なくありません。『保守かリベラルか』という分類は、まともに考えることを回避するための言い訳だと思います。わたしはある問題については保守的ですし、別の問題についてはリベラルです。でもたいていの場合、両者の中間のどこかにいて、どちらでもない答えを探しています」(本書より)

 奇しくも現在、大統領選を賑わしているのは、共和党のトランプ候補やテッド・クルーズ候補、さらに民主党のバーニー・サンダース候補といった人たち。ヒラリー候補の言葉を借りるなら「安易な二分法」に則った候補者たちと言えるかもしれません。

 本書に収められたヒラリー候補の金言の数々。その言葉のひとつひとつに、彼女の政治に対するスタンス、哲学が込められています。

 共和党、民主党ともに混迷を深める候補者選びはいよいよ佳境に入り、7月には両党の党大会で候補者が決まります。今後、さらなる盛り上がりを見せる大統領選をより楽しむために、本書を読んで彼女の政治哲学に触れてみるのもいいかもしれません。