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長崎大学はこのほど、体外受精の受精様式を持つ海産小型魚類「ロウソクギンポ」のオスがメスに配偶を強制する現象を発見し、実験的な検証に成功したと発表した。

同成果は、長崎大学大学院 水産・環境科学総合研究科 松本有記雄 産学官連携研究員(研究当時、現:水産研究・教育機構)と竹垣毅 准教授らの研究グループによるもので、4月18日付けの英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

メスが好ましくないオスに配偶を強制される強制配偶現象は、多くの動物で報告されているが、そのほとんどは体内受精の種に限られていた。これは、体内受精種のオスは強制的に交尾して一方的にメスに精子を渡せるのに対して、体外受精種ではメスが卵を産まなければ受精が完了しないため、オスの都合だけでは強制配偶が構造的に起こりにくいことが原因だと考えられる。

今回の研究では、ロウソクギンポという体外受精の受精様式を持つ体長6cmほどの小型海産魚を対象とし、観察を行った。同種のオスはメスが巣に産み付けた卵を孵化まで約1週間保護する。オスは複数のメスが産んだ多くの卵を一度に保護した方が効率的なため、保護卵が少ないと保護を途中で放棄してしまう。そのためメスは、すでにほかのメスが産卵した卵のある巣に産卵して巣内の卵数を増やすことで、自分の卵が放棄されるリスクを回避する。しかし、巣は閉鎖的な構造となっており、巣の外からは卵の有無が判別できないため、卵のない巣に入ったメスは産卵することなく、すぐに巣から出ようとする。その一方で、オスは巣から出ようとするメスを巣の奥に押し込み、体を折り曲げて巣の入り口を塞ぐような行動を示した。

オスは自身の体サイズにフィットしたタイトな入口の巣を好んで利用することから、同研究グループは、オスはタイトな巣を使用することでメスを効率的に巣に閉じ込めて産卵を強制していると考え、巣のサイズを操作する野外実験を行った。この結果、タイトな巣を使用したオスはメスの閉じ込めに成功して卵を獲得したのに対し、ルーズな大型巣を利用させたオスは、巣に入ったメスがオスの体と巣の隙間から産卵せずに逃げ出すため、ほとんど卵を獲得できなかった。ただし、巣内に卵があれば、いずれの条件でもメスは産卵したという。以上の結果から、オスがメスに産卵を強制していること、メスが空の巣への産卵を回避しようとしていることが明らかになったといえる。

また、体内受精種と異なり、体外受精種のメスは卵を産まなければ強制配偶を回避できるため、なぜメスがオスの強制配偶を受け入れるのかという点が最大の謎となっていたが、オスの閉じ込めから逃げ出すことに成功したメスは、そのオスから追いかけられて噛み付かれ、ひどく傷付くことがあることから、同研究グループは、これを避けるためにメスが強制配偶を受け入れていると考察している。また野外観察から、メスは自身の産卵後にほかのメスによる追加産卵が期待できる産卵時間帯初期と、ほかのオスを探索する時間が残り少なくなる終期に強制配偶を受け入れやすくなることが示されている。

これまで研究されてきた体内受精種の場合、オスが一方的に精子を渡すことで強制配偶が成立するため、オスが力づくで配偶を完了させたのか、それともメスが強制配偶を甘んじて受け入れたのかを区別することができなかったが、今回の研究で明らかとなった体外受精種における強制配偶では、"産卵"という形でメスの強制配偶の受け入れを明確に示すことができるため、同研究グループは、これまで難しかった強制配偶の進化メカニズムの解明に大きく貢献できるとしている。

(周藤瞳美)