【インタビュー】大泉洋「撮影は延々苦労で、楽なシーンがなかったです(笑)」
漫画家アシスタントとして平凡な日々を過ごしていたダメ主人公に、突如突きつけられた、「日本感染パニック」。謎の感染によって人々が変貌を遂げ「ZQN(ゾキュン)」となって襲いかかる中、サバイバルの旅を続ける「鈴木英雄」を演じた大泉洋さんにインタビュー。花沢健吾氏原作の累計600万部超の人気コミック「アイアムアヒーロー」の実写化での撮影秘話、そしてご自身の「ヒーロー観」をたっぷりと伺いました。


『役作りの決め手は“眉毛”だったと思います(笑)』




――今回、英雄という、ちょっとうだつの上がらない男を演じるにあたって、役作りはどのようにされましたか。

大泉:漫画原作だったので、まずは見た目を漫画に寄せようという所から始まりました。漫画のイメージは僕よりちょっと太っている感じだったので、少し太りたいなと思いました。あとは眼鏡をかけて、帽子を被って。どうやったらビジュアルが原作のキャラクターに寄るだろうかというのをメイクさんと考えながら作っていきました。

――いろいろ食べてあえて太ったということですか。

大泉:そうですね。いつも作品に入る時ってあんまり太りたくないから食べ物に気をつけますけど、今回は食べまくってましたね(笑)。

――ちなみに何キロくらい?

大泉:何キロだったんだろう?とにかく僕の場合は、顔に肉が付きにくかった覚えがありますね。「なかなか顔に付かないな」と思いながら食べてたら、お腹が出てきました(笑)。

――(笑)。

大泉:撮影が韓国だったので肉をいっぱい食べましたね。韓国はまた肉が美味しくて。牛は日本の方が美味しいかもしれないけど、豚、鶏は韓国の方が美味かったな〜。

――実際、英雄のビジュアルが完成した時に、「近づいたな」という手応えはありましたか。

大泉:そうですね、顔を作っていきながら眼鏡をかけて帽子被った時に、「あれ?結構(英雄に)なったんじゃない?」ってみんなで笑った覚えがありますね。「あ、英雄だ!」って(笑)。決め手は眉毛だったと思います。


『海外の映画祭で観客賞を…やっぱり世界基準の映画だなと思いました』




――原作コミックを読まれた時の感想はいかがでしたか?

大泉:「これ映画化できるの?」というのが正直なところでしたね。タクシーのド派手なアクションとかアウトレットモールでの戦いとか「これ、どうするんだろう?」って思いましたもん。日本ではこういうパニックムービーは、あんまり作られていないジャンルなので、とにかく「日本が作るとこうなっちゃったか」というものにはしたくないという思いがありました。ただ出来上がりを観たら「スゴイ!」って思いましたね。

――不安は払拭された、という感じでしょうか?

大泉:はい。払拭されましたね。「佐藤(信介監督)さんスゴイ!」と思って。これは本当に日本人として世界に出したいなと思いました。「日本でもこれだけのモノが作れるんだ」というのを見せたいなと。

――実際に、海外のファンからの反応もすごかったですよね。

大泉:スペインのシッチェス・カタロニア国際映画祭と、ポルトガルのポルト国際映画祭、アメリカのサウス・バイ・サウスウエストで観客賞をいただいて、「やっぱり世界基準の映画だなこれは」と思いました。観客賞っていうのがまた嬉しいですよね。一握りの選考委員会が選ぶんじゃなくて、観た観客が、世界の映画がたくさん上映される中で「アイアムアヒーロー」を選んでくれたというのが嬉しかったですね。


『撮影は延々苦労で、楽なシーンがなかったですね(笑)』




――観た時に驚くのがアクションと群衆シーンの凄さなんですけど、あれだけのことをするとなると、撮影現場がかなり大変だったと思うのですが、苦労されたことなどありましたか?

大泉:延々苦労でしたね(笑)。「いつ終わるんだろう、この撮影は…」っていう感じでした。楽なシーンがなかったですね。売り込みに行った編集部のシーンで、英雄が編集さんに「フツーなんだよなぁ、アナタは」とか言われるのが、体力的には大変ではなかったけど、精神的に惨めな気持ちになってイヤでしたね(笑)。

――他にもありますか?

大泉:あとは何百人ものZQNが僕に向かってくる中、走り続けるのも大変でした。(比呂美役の)有村架純ちゃんとふたりで森の中を逃げるというほんの何分間かのシーンも何日間もかけて撮ったんです。しかも天気が悪くてね。だけど、撮影の日数がないもんだから誰も「撮影中止」って言わないんですよ(笑)。誰も「やめます」って言わないから「マジか…撮るんだ…」と思いながら雨の中、最後まで撮りました(笑)。韓国でのZQNと延々と戦い続けるシーンは、監督も「これはしつこいほどやるしかないって思っていた」と言ってたから、何日経っても終わらない、何人倒しても終わらないって感じでしたね(笑)。

――具体的には何日ほどかかったのでしょうか?

大泉:最後のクライマックスの戦いだけで1週間以上やってるんじゃないですかね?僕がいない日も吉沢(悠)君だったり(長澤)まさみちゃん達のアクションシーンも撮ったりしていたし、僕がクランクアップしたあとも役者が誰もいないところで延々と撮ってたと監督が言っていましたね。


『僕の強みは「喋り」。だから外国行くと喋れないからイヤ(笑)』




――散弾銃の打ち方がすごく様になっていましたが習得するのは大変じゃなかったですか。

大泉:難しいんですよね。常に先生が付きっきりで僕のフォームを見てくださっていました。覗くために首が斜めになったらもうダメで、それは当たらないって言われました。英雄は射撃が趣味の人だから、薬莢がパーンと出た時もカッコ良く取って捨てるんですよ。散らばしたくないから(笑)。そういうちょっとした面も多少慣れが必要でしたね。韓国だと免許がなくても本物の銃を持てるので射撃場で練習したり、アウトレットモールで撃っているシーンは本物の銃を使用しました。もちろん弾は違いますけど(笑)。

――英雄には散弾銃が心の支えという部分がありますけど、大泉さん的には「これがあるから強くなれる」というような武器はありますか。

大泉:英雄にとっての散弾銃。僕にとっては…やっぱり「喋り」じゃないですかね。喋らせてくれれば何とかなる(笑)。だから外国行くとまったく喋れないから物凄く嫌なんですよ(笑)。

――喋ることで自分を鼓舞したり、逆に自分を隠したりすることとかもあるんでしょうか。

大泉:そうかもしれないですね。ベラベラベラ〜っと喋って、なんとなく煙に巻いて逃げてしまうことも時によってあるかもしれないですね。外国行くと通訳されてる最中に相手がその国の言葉でちょっと面白そうなことを言ってきたりするんですけど、それに対してちっとも返せないのが悔しいんですよね。「こんなこと言ってやりたいのに!」とか「こんなこと言ったら絶対面白いのに」って思うんだけど…何ひとつ言葉が浮かばない(笑)。「お、おぉ…おぅ…」みたいな。外国行くとなんかそこが悔しいですね。


『飲み会や打ち上げのときに華がある人はヒーローだと思います』




――大泉さんにとって「ヒーロー」ってどういうイメージがありますか。

大泉:やっぱりみんなが困った時に助けてくれる人がヒーローだと思いますね。なかなかこういう映画みたいな状況っていうのはないわけだけど、でも映画みたいなヒーローはいなくても、僕なんか飲み会とかで華があるタイプでもないから、打ち上げとかでやたら華がある、聴衆を沸かせる芸とかを見ると、僕の中ではその人はヒーローだなって思いますね。

――例えばどんな方ですか?

大泉:うちの安田(TEAM NACS安田顕)が打ち上げの時に脱ぎ芸とかをやると僕にとってはヒーローだなと思いますね。毎回やってくれるわけじゃないんですけど、彼が「今日は乗ってるな」って思ってワッって脱いだ時の、参加者たちが熱狂する姿を見た時なんかは「安田、ヒーローだな」って思います(笑)。

――周りにヒーローがいるんですね(笑)。

大泉:そうですね。TEAM NACSで言うとリーダーの森崎博之もやっぱり飲み会で華がある。僕らってよくわかんないけど飲み会で乗ってくると、「割り箸をパンツに挟んで折る」っていう芸をやるんですよ(笑)。なかなかみんな折れないのに、一番最後にリーダーが折るっていう(笑)。毎回それが決まりになってまして。リーダーがボキッ!って折った瞬間っていうのは“ヒーロー”って感じがするんですよね。折れた割り箸が尻に刺さって毎回血出してるんですけど(笑)。流血させてもやっぱりNACSとしての責任を取る…彼はヒーローですよね(笑)。

――英雄は一見、弱々しいキャラクターではあるんですが、最後まで比呂美を助けたり、実は内面的には強い人なんじゃないかなと思ったのですが、大泉さんは英雄をどういうふうに捉えていましたか。

大泉:「アイアムアヒーロー」っていうタイトルの映画ではあるんですけど、英雄はヒーローにならざるを得なかった人なのかなっていう気がします。彼は決して強い人間じゃないし、世の中に出て行くタイプの人間じゃない。でも極限の状態が起きて、比呂美ちゃんという守りたい人間が現れた時、彼女を守るために自分がヒーローになるしかなかった。「怖いけどやるっきゃない」っていうね。

――もし大泉さんご自身が、英雄のような立場に置かれたらどうしていると思いますか?

大泉:「自分の命を投げ出しても誰かを守るか?」っていったらちょっと自信がないですよ。でもそこに家族がいたらやっぱり「やるっきゃない」って思いますよね。例えば僕の娘が自分と一緒にいたってなったら、そこはたぶん躊躇はないかなと思うんですよね。自分が盾になって娘を守って逃がすだろうなって。そういう状況で英雄はヒーローになるしかなかったのかなって思いますね。


『娘と遊んでいる時間がハッピー。撮影などで会えなくなると寂しい』



――最後にPeachyとはハッピーとかゴキゲンという意味なのですが、大泉さんにとってのハッピーになれる瞬間や、癒しを教えて下さい。

大泉:娘と遊んでいる時間はハッピーですよね。今4歳でいちばん可愛いさかりで、「パパ、パパ」と言ってくれる時なので、それがハッピーな時間ですね。撮影などで会えなくなると寂しいです。

――癒される時は?

大泉:癒されるな〜と思えるのは…お昼から美味しいお酒を飲んでいる時かな(笑)。

――ご自宅で飲まれるんですか?

大泉:どこでもですね。自宅でもいいし旅先とかでもいいし。昼からお酒を飲んでいる時のあの背徳感と贅沢感って…あれなんなんでしょうね(笑)。みんなが働いている昼間に「カ〜ッ」とお酒を飲めるっていうのは休日感があって幸せですね。

――撮影場所だった韓国もお酒の席が盛んですよね。韓国で印象に残っていることはありますか。

大泉:カンジャンケジャンが美味しかったですね。日本食が恋しくなるかな?って思っていたけどそんなことなくて。韓国料理がとにかく美味しかった。毎日食べても飽きることがなかったですね。

「アイアムアヒーロー」は4月23日(土)よりロードショー。
公式サイト:http://www.iamahero-movie.com/

撮影:鈴木愛子
取材・文:木村友美
制作・編集:iD inc.